<これまでのあらすじ>
第1話 ウォールストリートから八日市へ
第2話 価値を伝える
第3話 「市場の選択」という幸運
第4話 「買うと決める」と「買う」の分離
第5話 「パジャマを生地で選ぶ」という新しい市場
第6話 グローバル人材の意味、わかってる?
滋賀県のパジャマメーカー、株式会社ラブリー社の訪問記は、今回をもって終了となります。
3年前 2012年の終わり頃、私は楽天市場で偶然に見つけたオーガニックコットンのパジャマを購入しました。
着てみると肌触りがすばらしかったので、翌年早々、そのパジャマが政府専用機用に選ばれたのを機に、 ブログで紹介したんです。
その翌日、滋賀県の小さなパジャマメーカーは、ちょっとした驚きに包まれていました。同社が運営するオンライン販売サイト、「パジャマ工房」へのアクセス数が、通常の数倍にも急増したからです。
増えたアクセス元のドメインは " hatena " 、さらに検索を進めると、ちきりんというブロガーが取り上げたからだと判明します。
その数週間後、今度は私がびっくりさせられました。ちきりんとしてではなく、本名で使っているアカウントに、こんなメールが届いたからです。
↓
号外!?
メールを開けてみると・・・
・・・ビビりました。
結局その後に買い増した真冬用のパジャマも非常に気持ちがよかったので、「いつか、この会社の取材をしたい」と思っていたのです。
こちらは、今回のインタビューに応じてくださった北川恭司社長。『マーケット感覚を身につけよう』も、ご購入いただいていました。
お気づきのように、この連載は、新刊『マーケット感覚を身につけよう』のケーススタディとなっています。
リーマンショックの時はもちろんですが、日本のアパレルメーカーは過去何十年にもわたり、縫製工程の海外シフトを進めてきました。
その過程で、廃業を余儀なくされた国内の縫製工場の数は数万に上ります。1985年、7万ヵ所近かった繊維産業の事業所は、2013年には 2万ヵ所まで減少。実に 7割もの工場が消えてしまったのです。
大手アパレルの下請けをしている時には、生地や型紙、そして詳細な縫製指示が発注元から与えられます。工場は指示通りに製品を縫い上げ、一着いくらの縫製工賃を受け取るだけです。
でも自ら商品を売ろうと思えば、商品の企画、デザインの他、生地の調達、型紙作成(パターン起こし)、そして販売まで、すべてを自社で行わねばなりません。
「そんなこと、できるわけがない」「たとえいい物を作っても、ノーブランドでは売れない」・・・過去 30年の間に廃業した 数万ヵ所の縫製工場の大半が、そう考えたことでしょう。
でもインターネットの普及により市場化が進んだことで、「ダメ元でとりあえずやってみる」企業には、生き残るチャンスが与えられるようになりました。
こうして株式会社ラブリーも、“大手の下請け工場”から、“自ら市場に向き合う独立パジャマメーカー”へと脱皮したのです。
他にも最近は、仕事を求める縫製工場と、極小ロットのオリジナル商品を縫ってくれる工場を探すセレクトショップを結びつけ、生地の調達や型紙作成を支援するベンチャー企業も出てきました。
これも社会の市場化に伴って生まれた、新たな市場(市場創造)です。
下記の本にも書いたように、これからはアパレル分野だけではなく、あらゆる分野で同じようなことが起こります。だからみんな、マーケット感覚を身につけることが重要となるのです。
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法posted with amazlet at 15.02.25ちきりん
ダイヤモンド社
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読者の皆様。ここまでの連載のご愛読、ありがとうございました。
インタビューを受けてくださった北川社長にも心より感謝しています。
そんじゃーね!
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