メディアと市場とイノベーションとロジック

新刊 『 マーケット感覚を身につけよう 』 の出版記念対談として、お二人のすばらしいビジネスクリエーターと対談しました。

とてもおもしろい内容となったので、対談記事へのリンクをまとめておきます。


第一弾は、LINE株式会社 上級執行役員 田端信太郎さんとの対談でした。


(写真は疋田千里さん撮影)


テーマは「メディアと市場」です。インターネットメディアと雑誌という新旧ふたつのメディア分野で活躍された田端さんは、小さな頃からマーケット(市場)が大好き。

「メディアと市場」というと多くの人が、「市場にメッセージを届けるためにメディアを利用する」というマーケティングや広告手段としてのメディアばかりを想像しますが、

田端さんが魅せられたのは「新たな市場を創りだせるメディアの力」だと思います。


ビジネス分野でよく言われる「差別化」というのは、「市場の中でいかに選ばれるか」という方法論です。

でもそれよりも、市場を創る人(胴元!)になるほうが、よほど世の中に提供できる価値は大きくなる。

田端さんは、このことを心底よく理解されており、かつ、それをお仕事でも、また個人生活でも実践されています。

そういえば田端さんは ツイッターでも大活躍ですけれど、これも、ツイッターが「メディアであり、かつ、極めて市場的である」からこそ、ものすごくフィットしたってことなんでしょう。


★★★

もうひとつは、monogoto 代表、ビジネス・デザイナーの濱口秀司さんとの対談です。

濱口さんてよく、「日本初のイントラネット構築、USBメモリの発明など、幅広い業種のイノベーションに携わってきた」などと紹介されるのですが、

私はまさか自分が、“ USBメモリの生みの親" と対談する日がくるとは思ってませんでした。( USB メモリを持参して、サインしてもらうべきでしたね!)



といっても、こちらは対談というよりは、私から濱口さんへのインタビューといった趣です。

だって話している最中に、「こんな人の前であたしのつまらない意見なんて言ってる場合じゃないよね。濱口さんからできるだけ面白い話を引き出して、可能な限りいろいろ聞き出しちゃった方がトクざんす」と思えたもので。


で、こちらのテーマは、「イノベーションとロジック」

対談を読んでもらえればわかりますが、濱口さんは個別の突発的なイノベーターというより、イノベーションの研究者なんです。 天才発明家ではなく、“イノベーションのプロフェッショナル”と言ってもいい。

だから、話のテーマは確かにイノベーションだけど、その話は「これでもかっ!」ってくらいロジカルなんだよね。


「確実にイノベーションが興せるプロセスを設計する」などというと、その言葉自体に矛盾が含まれてるようにも思えるし、設計しすぎると画期的なイノベーションなんて出てくるはずがない、というジレンマもあるなかで、

そういう矛盾に満ちたイノベーションという現象(?)&、そこに至る道筋を、非常に高度な、メタレベルのコンセプトで“ロジカルに”説明することにチャレンジされてる。


しかも(これがスゴイところなんだけど)それを自ら実践し、リアルな商品やサービスにつなげてる。

・・・すごすぎでしょ・・・


★★★


まとめると、

田端さんのテーマが「メディアと市場」
濱口さんのテーマが「イノベーションとロジック」なんです。


そして私のテーマが、「市場とロジック」
だからそのふたつについて、本を書いてきた。
↓ 

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今回の対談は、全部読むと本一冊分くらいの内容となっており、しっかり読み込もうとすると、けっこうな時間がかかります。

それでも、ビジネス企画、マーケティング、メディア、イノベーション、商品開発、そして、組織経営などに携わる方には、極めて得るところの多い内容になってるはず。

私自身もとても勉強になりました。


それと、田端さんとの対談で「なぜシャープの亀山モデルはブランド化に失敗したか」という話がでてるのですが、濱口さんとの対談では、「テレビのように画面の面積が大きく、デザインの自由度が低くて難しい商品もある」という話がでてきており、私の中ではすごく“つながってる”感のある対談でした。

時間のあるときに、ぜひ皆さん、お楽しみください。


そんじゃーね!

<田端さんとの対談>
第一回 マーケットで負けるのは、「求めるもの」を決めない人
第二回 就活で成功するのは、就活の前にマーケットにさらされていた人
第三回 マーケットの面白さを味わえる情報の「価値」分析とプライシング
第四回 なぜ、亀山ブランドは失敗し、ヨガは大きな市場になったのか?
第五回 マーケット感覚とは、他者への想像力をどれだけ持てるかということ

<濱口さんとの対談>
第一回 最も創造性が高い思考のモードは、論理と直感の間にある
第二回 世界的イノベーターの人生を方向づけた仮説とは
第三回 「ストーリー価値」の台頭が経営に与える革命的なインパクト
第四回 なぜ、人間はストーリーを重視してしまうのか?
第五回 イノベーションを生むための「ブレイク・ザ・バイアス」

おふたりともスピーチ&プレゼンテーションが非常にお上手なので、機会があればみなさんも是非、聞きにいかれるとよいかと思います。


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