お年寄り天国

ちきりんは、これからの日本はどんどん「お年寄り天国」になると思っています。

皮肉ではありません。ちきりんも将来の年寄りであり、“年寄り天国”に期待しています。医療費もあがるし、年金は切り下げられる、なんで年寄り天国なんだ?と思われるかもしれませんが、今後の日本は高齢者にとって今より圧倒的に住みやすい国になるでしょう。


理由は「これから急速に年寄りが増えるから」です。

現在、65才以上の人口は、すでに人口の2割。2200万人を超えています。国立社会保障・人口問題研究所によると、10年以内に人口の25%が65才以上になると予測されています。60才以上でみればもっと多いし、消費人口に占める割合では30%を超えてきます。

これからは「すべての企業にとって、最も重要な顧客は高齢者」という時代がやってきます。企業は“高齢者が気に入るもの”を競って開発し、“高齢者に気に入ってもらうためのマーケティング”を開始するでしょう。ここのところ新聞の活字が大きくなっているのはそういう流れのひとつです。


独身女性のマンション購入理由として、「年を取って独りだと、賃貸の部屋が借りにくい。」とよく聞きますが、これも今後は変化するのではないでしょうか。若者人口が減って空き室が増えれば、「独居高齢者の方に、こーんなに便利なアパートです!」「高齢者の方に入居の特典付き!」みたいな物件がでてきてもおかしくありません。

総人口の4分の1が老人になるうえ、若い人よりお金を持っている人も多いのです。若者にはニートや低所得のワーキングプアが増える傾向にあり、所得は減少傾向です。これからの日本では高齢者を無視した商売は成り立たなくなると思われます。


DVDやパソコンの使い方が難しすぎる!とお悩みの方も安心してください。今後はきっと“楽々操作”の製品が増えてきますよ。より性能の高いパソコンより、トラブルが少なくシンプルでわかりやすいパソコンの開発の方が、企業にとって重要な商品になるかもしれません。携帯電話市場ではすでにそういう商品が売れ筋のひとつとなっています。

年をとって独りだったら買い物にも困る、夫に先立たれたら海外旅行もできない、なんて心配する必要もないです。個人への配送を行う店や、一人暮らしの高齢者のための趣味ビジネスも増えると思います。あまり考えたくもないけど、「独居高齢者、日々生存確認サービス」みたいなものもでてくるかもしれません。コンサートでも「スタンディングオベーション禁止エリア」ができたりね。


今は企業のウエブサイトの文字も小さいですが、市役所サイトの福祉関連ページは文字が大きいところも多いです。これからは企業サイトもそうなるでしょう。株式投資する人もネットで商品を買う人も「半分は老眼」になるんだから。

資本主義って偉大です。規制やお役所が邪魔さえしなければ、ニーズのあるところに新事業は生まれます。

また、今後の高齢者ビジネスは“大金持ちの高齢者“向けではなく、より数の多い“一般のお高齢者”をターゲットにして開発されるでしょう。

どうやって低価格化するのかって?

日本はなんでも高スペックで高価格すぎるんです。アメリカのDVDプレーヤーの売れ筋の価格は2万円以下と日本の半分です。日本人は「いいもの」を欲しがりすぎる。でも、年をとったら、そんな複雑な商品は要らないでしょ。簡単操作でシンプルで安いモノ、そして大きな文字で説明書がついている。すべてに“ほどほどの品質でほどほどの値段”という市場が現われると思います。


そういえば最近は、駅などにエレベーターの設置が進んでいます。バリアフリー新法が予定されており(追記:2007年に施行済み)、公共交通機関は足腰の弱いお年寄りがスムーズに電車やバスを利用できるよう整えることが求められました。

これは国とっても大事なこと。公共交通機関が利用できれば自分で出かけるし、働いたり、消費しようという気になる。バスや電車に乗るのが難しくなると引きこもりがちな高齢者も増え、ひいては医療費や介護保険の増大にもつながりますから。


あと、そのうち「電動アシスト自転車」の進化版のような乗り物ができても不思議じゃないですよね。電気自動車と電動車いすと電動アシスト自転車をまぜて3で割ったみたいな商品。そして歩道の横に「高齢者用電動車いす専用道路」ができるとか。

町を出歩く人の半分が「足がヨタってる人」になるかもしれないのだから、“歩道橋”みたいな(シニアな人に厳しい)ものは消えゆく運命にあるでしょう。


飛行機も今は「小さなお子様づれのお客様」も優先搭乗できますが、「70才以上の方の優先搭乗」が始まるのも、そう遠くないんじゃないの?

実際、日本は今どんどんシニアな人にやさしい街になろうとしています。それは、インドや中国にいくとよくわかります。ああいう国は今はまだバリアフリーにお金を使うよりは、新しいビルや大型施設を建てるのにお金を使いたいという経済ステージにいます。

若い人は気がつきにくいかもしれませんが、エレベーターやスロープが増え、宅配をするスーパーも増えている。日本の街作り、ビジネスの作法は大きく視点が変わりつつある、と最近よく感じるちきりんでした。



というわけで、これからの高齢者の方は安心して老後を迎えてください。


そして既に高齢者の方は?・・・長生きしてください!


ではまた明日!





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追記)2011年11月に発売された書籍紹介

高齢者向け賃貸住宅経営で成功する法

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