本を買う

今週は、読書週間だそうです。「バレンタインはチョコレート」という信仰をお菓子メーカーが確立して大成功して以来、どの業界もこんなんばっかりですね。○○週間、○○の日が乱立しております。それでも「そうか読書週間か、じゃあ、本読もう」という人がちょっとでも増えればいいのでしょう。頑張ってください。


「出版不況」も言われ始めてから10年以上。それってもはや不況じゃなくて“衰退”というべきなんでしょう。メディアはよく「本離れ」「活字離れ」っていうけど、客側が悪いようにいうこの言葉はちきりん的には余り好きでないです。

じゃあなんで?って話ですが、本が売れなくなった理由ってすごく複合的ですよね。


(1)調べモノがネットに移った。
昔だと、なんか調べたい、知りたいと思うと、本しかなかった。今は、ちょっとしたことならネットで答えが見つかります。ちきりんブログも、世界の人口だの生活保護受給率だのといろんなデータをひっぱってきて文章を書いていますが、全く本を必要としないですね、ネットで数分探せば大抵は元データが見つかります。単純なデータサイトの他に、哲学とか歴史でも、充実した解説サイトがたくさんありますからね。変な本買うより、早くて内容もすばらしかったりする。


(2)図書館が超充実し始めた。
昔の図書館は「ベストセラーを発売直後に大量仕入れ」なんかしなかった。名著とか古い本とかは保存するけど、「流行モン」は自分で買え、という感じだった。でも今は「リクエストカード」とかおいて、利用者が読みたい本をわざわざ買ってくれる。話題の本がもうすぐ出る!というタイミングで、本屋に行くか図書館に行くか、というチョイスができたのも大きい。あと、もちろん「ブックオフ」も影響が大きいよね。


(3)図書館を利用できる人が増えた。
基本的に、若い働き盛りの人って図書館に行きにくい。でも、定年して家の周りの探索を始めると、実は近くに図書館がある。お金の節約にもなる。


(4)子供が減った。
なんだかんだ言っても子供は本を読みます。てか強制的に読まされる。夏休み毎に、小中学生は全員「読書感想文」を書かせられるし、年に1回は「読書感想文コンクール」がありますからね。子供の数は200万人から120万人に減っており、これだけでも、本の売り上げ数は4割減です。


(5)エンタメ娯楽が本から他に移った。
前は電車の中で本を読んでた人の中で、今は携帯をいじってたりゲーム機を楽しんでる人も多いと思う。エンタメツールとしての競争に負けているってことでしょう。時間の他、お金も有限だから、ゲームか本か、というようになるしね。


こうみると「本を読む」機会より、「本を(定価で)買う」機会の方が圧倒的に減ってるかもね。ブックオフや図書館で手に入れた本を読む人は、今までよりお金もかからないしたくさん読むようになっていてもおかしくない。

ただ出版業界は「本を読んでほしい」のではなく、「本を(定価で)買ってほしい」ので、それじゃあだめなんでしょうが。彼らが高いマーケティングコストをかけて「読書週間」などというものを作っている理由は、「本を読んでほしい」からではなく「本を買ってほしい」からですよ、みなさん。

100歩譲って「成長したければ、学びたければ本を読め」という宗教を認めるとしても、「読む本は、定価で手に入れなければならない」という論理を成立させるのはもう誰にもできないだよね。そこがつらいところです。仕組みが変わるってのはそういうことだ。


ではまた明日!