麻雀放浪記

機内で見た映画 「麻雀放浪記」

麻雀放浪記 [DVD]
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パイオニアLDC (2001-04-25)
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1984年だから 23年前に作られた邦画ですね。

終戦直後のバラックと焼け野原の東京で「プロの博徒」というか、“いかさま麻雀”で生きる人たちの生きざまを描いた映画です。

わざと白黒で撮ってあります。主演は真田広之(若いなあ)。それとこの人、演技がほんとーに上手だよね、すんごい女たらしらしーですが、芸はさすがです。


他には男性で、鹿賀丈史さん、高品格さん、名古屋章さん。女性で大竹しのぶさん、加賀まりこさん。特に女優さんはちきりんの大好きな二人。彼らもみんなスゴイ演技巧いです。

カメラワークもテンポ良く最初から引き込まれるし、ストーリーも説教くさくなくていい。時代感もちゃんとでてるし。(って、その時代見たことないけど)大変おもしろかったです。


ちきりんは、こういう時代の悲壮感が大好き。

なぜかわかりませんが、「人間ごときが努力したくらいではどうにもならない状況」というのにすごく心惹かれるんです。

「努力したら何でもできる」とか「やってできないことはない」的な言葉は、嘘だと思うし傲慢だと思う。もしくは“無知”から来ているのかもしれない。

「どうしたって、どうにもならないことがある」・・・この価値観を共有できない人とは友達になれないです。

「やればできるはずだ!」とか言う人に会うと、「勝手にやってれば」って思っちゃう。


自由のすばらしさをたたえている点も素晴らしい。

前にも書いたと思うけど、ちきりんは説教臭い人や映画、それに本が大嫌い。

反対に、自由に生きる人の強さ、割り切りのよさ、自然なかっこよさに、すごく憧れるし、惹かれる。

高品格演じる賭博師(←なんで“師”なんだろう?)が、突然死する前に腕になにか注射するシーンがある。薬かな? 

鹿賀丈史が演じるケンは、自分の女を女郎屋に売って賭の金を払う。

大竹しのぶは、そんなにされてもケンの元を離れない“女”の役。この人も、ホント演技巧い。

加賀まりこさんは違法賭場を開くバーのママで、オーナーの愛人。

米兵から麻雀で大金を巻き上げるけど、結局その金は奪われてしまう。

ケバい厚化粧で、悲しい時代の波間を巧く巧く渡り歩くしかない哀しみを表現する。

墜ちた女性を演じさせたら、この人より巧い人いないよね。なんたって顔がいい。覚悟がある顔だ。


真田広之が演じる主人公は 17歳でこの世界に入っていく。

加賀まりこに向かって「あんたを女房にしたいんだ」と叫ぶ。

“未熟であることを表現するために、何をさせればよいか”、監督と脚本家はよくわかっている。未熟であることが、とても素敵なことだと言うことも。


★★★


この映画の中では、誰も彼もが“自由”なんです。

誰一人として“こうあるべき”という道に沿って生きていない。そうすることに“あきらめ”を感じているから。


だって、そういう時代、だから。


今の日本がこういう国なのは、そのころから、“きちんと”“こうあるべき”という道に沿って生きた人のおかげだと思う。そういう人たちの努力の賜が今の日本になっている。

なんだけど、そうは生きられない人もいる。いつの時代でもね。


それを格差などという下品な言葉で表すのはやめよう。

私たちには、自分がおかれている状況を、精神的に正当化する権利がある。

そうすることが自由に生きることなのだ、と思うです。


最後のシーンを見ていて、こんなふうに生きられたら(死ねたら)いいよね、と思えた。

自由であるという錯覚に包まれて死にたい。そして、生きたい。


★★★


時代感が重要な映画で、主役が若手で、周りをベテラン俳優が固めていて、という意味では、今テレビで放映中の「華麗なる一族」との共通点も多いのだけど、


・主役俳優の力量があまりに違う。
・時代感の出し方が圧倒的に巧み。


というわけで、全くレベルが違ってました。

すんごくおもしろかったです。



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