個人情報“開示提供”サイト

下記のページでは、「たらこさん」という匿名の学生さんが、自分のプロファイルと就職活動の内容を開示しています。
http://www.action-net.com/lipple_hottea/pe_2.html


オリジナルページは長くは残らないと思うので、ポイントだけ書きだしておくと、この方は、

(1)現在、東京大学で、行動文化学科社会心理学専攻の3年生で、
(2)アカペラとTNKというサークルで活動していて、
(3)体力があまり無い人なのですが
(4)めでたく伊藤忠商事に内定し、来年の4月から働き始めるらしい。
(5)1年前には「うつ病」を煩いつらい日々を送っていたが、
(6)今はひとつ年下の彼氏に支えてもらって、とってもハッピーです、と。

もちろん、本当のことを書いているかどうかは不明ですけど。


ちきりんはこの「たらこさん」が誰か特定できませんが、以下の方であればこの人の氏名を特定できるでしょう。


(a)東大の行動文化学科社会心理学専攻の方 (上下の学年の方を含む)
(b)伊藤忠商事の人事部の方
(c)同年の伊藤忠商事の内定者(他大学の学生さんなど)
(d)アカペラとTNKのサークルのメンバー
(e)東大の当学部の教授等講師側の人と、事務職員の方
(f)親兄弟


この方が、(a)〜(f)の人達に、(1)〜(6)のことを、すべて開示しているのか、
開示はしていないが、伝わっても問題はないと考えているのか、
伝わると問題ではあるが、まさか伝わらないと思っているのか、
はよくわかりませんが、勇気のある人だな〜とは思います。


★★★


先日ある動画サイトを見ていたら、いきなりちきりんの知っている人が画面に登場してびっくりしました。名前や所属はでていませんが、その人の知り合いであれば、それが誰か明確にわかるレベルで顔が写っています。カメラに向けて話しているので、本人も「自分が撮影されていること」は理解をしているし、了承をしているようです。

でも本人が、その映像がこうやって万人に公開されていることを知っているかどうか、そこまで理解して録画を了承したかどうかはかなり疑問です。分かっていたらOKしていないのでは?と思えるような内容の動画だったからです。


考えてみれば「撮影されること」に関しては、比較的気安く了承してしまう場合もありそうです。今は携帯電話などでも簡単に撮影ができるので、飲み会やクラブで騒ぎながら撮影したり、旅行先で友人からいきなり携帯を向けられ、ムービー録画されてしまうこともあるでしょう。

けれど多くの場合、その動画がいったん撮影された後にどう扱われるか、本人には全くコントロールできません。撮影する際からデジタルだし、ファイルの転送も非常に簡単です。いったんネットに公開されれば、厳密にはすべてを削除することは不可能であり、長期にわたって無防備な状態に放置されてしまいます。前の彼女との飲み会で撮った動画などが、他の人と結婚して子供が出来てからも、実はずうっとネットに残っている、などというのもでてきそうですよね。

動画サイトに見つけたちきりんの知り合いも夢が大きな人なのですが、その人が将来公人になった時(選挙にでるとか、社長になるなどの場合)、こういう映像がパブリックに出回っていることをどう思うかなと想像すると、ちょっと複雑です。

過去にキャバクラで働いていた経歴が問題視された女性議員がいましたが、今後は“キャバクラで遊んでいるところが映った動画が見つかって問題視される議員”だって現れるかもしれません。政治家が大臣になる時にスキャンダルの素がないか確認することを“身体検査”と呼ぶようですが、今後は「変な動画が出回っていないか」なども含めた身体検査が必要になるかもしれません。

★★★

また、今は誰かが犯罪で逮捕されるとすぐに「中学校の卒業アルバム写真」などがマスコミに流れます。同級生がマスコミに見せているのでしょうが、最近増えてきたのは、「本人のブログ」が見つけ出されて報道されるケースです。

ブログ自体は匿名でも、本人が犯罪に巻き込まれた場合には(必ずしも犯人側ではなく、被害者側であったとしても)、事実上、個人名が特定されて報道されることになります。

犯罪捜査手法としては、たとえばブログ上の記載により「殺意があったと認められる」とか「周到な準備をしていたことが証明される」ようなことも今後は起こってくるでしょう。また、アリバイ工作に使われ始める可能性もあります。そうなれば警察がブログサービスの会社に更新時刻記録などの提出を求めるのでしょう。

最近は監視社会とも呼ばれ、繁華街のあちこちに監視カメラが設置され、犯罪の時にはそれらの映像がチェックされているようですが、今後は「事件の様子を撮した映像がYou Tubeにアップされてるらしい。すぐにチェックしろ!」みたいな刑事ドラマもありえますよね。

また、裁判の際に被告人の“人となり”を証明する材料として、ブログや動画が提示され「こんな人だった」などと使われることも予想できます。ブログはもちろんですが、動画の場合、よりビビッドにその人の“人となり”を表現してしまいますから、そういったものが裁判での心証に影響を与えることも考えられます。

技術と端末の進化で、誰でもどこでも気軽に発信できるすばらしい時代になりつつありますが、同時に、今はまだ考えられないような問題や事態もこれからたくさん発生するかもしれません。

★★★

そういえば昔はテレビ番組の最後に「このドラマのオリジナル音楽CDを抽選で5名の方に差し上げます。お申し込みは・・」みたいなのがありました。あれは、「特定セグメントの氏名・住所を収集する」のが目的で、葉書に書いてある名前や年齢、住所はすべてDB化されます。そしていわゆる名簿屋や、ドラマのスポンサー企業のマーケティング部門に渡されるわけですね。

昼のメロドラマをみているなら「専業主婦名簿」ができあがるし、キムタクのドラマなら「キムタクファン層名簿」ができあがります。個人情報が多ければ多いほど、名簿として高く取引されます。(現在はこういう情報流用は違法でしょうし、行われていないと信じましょう。)

昔の名簿屋さんって、薄暗い雑居ビルの一室とかにあり、「こわーい」感じでした。そこでは“霊感商法に騙された人の名簿”なども売っており、そういうのはデータ一人分○○円などととても高いです。お金持ち幼稚園の父母名簿なども高額です。

でも今後、“動画の検索”が出来るようになれば、「特定の人をネット上から調べて集めてくれる」ような新手の名簿屋さん(個人情報の収集販売ビジネス)も出来てくるかもしれません。


なんだかちょっと気をつけなくちゃねと自戒を込めて思いました。

そんじゃあね。