大半の保険は不要

最近、保険のテレビ広告があまりにもひどい。

そもそも「毎月お手軽な負担で!」「これなら毎月○万円だけ」というタイプの営業トーク。

これ、変でしょ?

たとえば車を買いに行って、「ローンはおいくら払えますか? 毎月○万円ですか。だったらランドクルーザーですね!」って展開にはなりませんよね。

「払える」からといって不要なものや、無用に高級なものを買う必要はありません。

買うべき商品は「買える商品」でも「払える商品」でもなく、「欲しい商品」や「必要な商品」のはずです。

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また、高齢化社会につけこんで「60才からでも入れます。」「持病があっても入れます。」といった宣伝文句も意味不明です。

保険に「入れる」のと、「イザというときに保険金が払ってもらえる」というのは別の話です。

たとえば「持病があっても入れる保険」の意味は、「その持病の悪化による入院や手術の費用にたいして保険金が払われる」という意味ではありません。

これまで病歴がある人は保険に加入できない場合が多かったので、その弱みにつけこんで「入れる!入れる!」と連呼するのはいかがなものかと思います。

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「入院一日 5000円保障」などという場合も、「ただし○○の場合のみ」という支払い条件が山ほどついていて、実際に払ってもらえるケースが非常に限定的な保険もあります。

しかもそれらの条件は、ものすごく小さな字で「約款」に書いてあり、その「約款」は加入前には客に渡さない、という保険会社さえあるのです。

支払い条件も知らせずに「保険料は月々たった1980円!」とかいう売り方、おかしくないですか?


最近、週刊誌等の「家計防衛記事」の多くが「保険を見直そう」と書いています。

もちろんそうなのですが、私にいわせれば、そもそも大半の保険は「不要」です。

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私が考える「個人がはいる意義のある保険」は、その大半が「損害保険」です。

たとえば、
・自動車保険やバイク、自転車保険
・個人賠償保険
・火災保険(マンション総合保険、的なもの含む)
には、みんな入ったほうがいいと思います。

でも、いわゆる「生命保険」や「貯蓄系の保険」には、ほとんどの人が入る必要がありません。

以下、具体的にみていきましょう。

民間の生命保険に入る必要がない人

・単身者
・子供がいない夫婦
・子供がすでに独立している夫婦
・引退後で勤労収入のない人
・収入のない子供
・公務員や大企業の正社員(子育て中の人を含む)

つまり「自分の収入で、誰かを養っている」という状況でないなら、保険なんて不要なんです。

妻子を養っている場合でも、大企業社員については会社が掛けている団体保険でかなりの保障があるし、病欠中の所得保障制度がある場合も多いです。遺族年金など公的な保険も手厚い。

反対に、個人で民間の保険に入ったほうがいいのは、下記の人です。

生命保険に入る必要がある人
・扶養家族がいる自営業、中小企業勤務等の人
・ 育児・介護の主担当の人

育児や介護を主に担当している人は、たとえ外で働いていなくても=収入がなくても、生命保険に入ったほうがいいです。

そういう人が亡くなると、残された家族には、多大な負担(経済的な負担を含め)生じるからです。

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では、それらの人に必要な保険は?

実は必要な保険は、「定期保険」だけです。

定期保険とは、掛け捨ての保険料を払って、死亡保障を、一定期間(5年とか10年など)つける保険です。

これだけで十分。

必要額は、「毎年の必要額×扶養必要期間」ですから、年 300万円の生活費で子供が成人するまで 20年なら、合計で6000万円の保障が必要です。加入時年齢によりますが、月の保険料は 2万円弱くらいです。

年 300万円の生活費は少なく見えるかもしれませんが、遺族年金が年に100〜200万円あり、住宅ローンは別の保険がかけてあって、働き手が死亡した場合ローンを返す必要はなくなるのが通常です。

また、子供が成長したらどんどん必要額が小さくなるので、5年ごとくらいに保険の一部解約を行い、保障額を切り下げていくべきです。(当然保険料も下がります。)

必要な保険については以上です。

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終身保険なんて今から入るのは無意味です。
(ただし、バブル期など、ずっと前に入った終身保険は解約しないほうがいい場合があります)

入院保険も不要でしょう。

保険より、万が一のための貯金を一定額しておいた方がよいです。

例えば、妻の入院保険は夫が入院しても払われないし、夫の入院保険は妻が入院してもでません。

しかし貯金で備えておけば一人分の入院費だけ貯めておけばいいです。ふたりとも同時に入院する可能性は高くないでしょ。

それに入院期間はどんどん短くなってます。

“入院日数”に支払い額が比例する保険は必ずしも加入者に有利ではありません。

ガン保険、婦人病保険等、病気を限定する保険もばかげています。

お金で貯金しておけば、どんな病気の場合でも使うことができます。使途を限定すればするほど保険金は支払われにくくなります。

また貯金なら治療費以外にも流用できます。

たとえばうつ病で働けなくなった場合、ガン保険はもちろん、うつ病では入院保険も支払われないことが多いでしょう。

でも、保険料分を貯金しておいたら治療中の生活費に充当できます。

一生懸命保険料を払って、ほんとうにお金が必要な時に手元にお金がなく「あの保険料を残して貯めていたら・・」と思うのは全くばからしいです。

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保険は統計的に計算された商品です。保険会社はぜったいに損をしないように、統計的に保険料を計算し、設定しています。

また、加入者が払う保険料には、保険会社の経費(人件費、CM代その他の経費)がきちんと上乗せされています。その部分も実はバカにならないほど高いです。

高給取りの社員が山ほどいる大手有名保険会社の保険を購入することは、「ブランドもの商品」を買うのと同じ「プレミアム」を払うことを意味しています。

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また、保険料を払ってもらう時の申請というのは、本当に面倒で、しかもお金が手に入るまでかなりのタイムラグがあります。

急性期を扱う中堅以上の病院の場合、保険金請求に必要な「治療記録」を医師に書いてもらうのに 3千円から 5千円の手数料がかかる場合も多く、

しかも依頼してから書いてもらえるまでに 2週間以上かかったりします。(当然です。医者はこんな書類を作成することを、目の前の患者の治療より優先したりはしませんから)

書類を受け取りに行くための交通費や時間だって馬鹿になりません。

そんな額の手間と手数料を払って「入院一日目から支払われる保険」を数日分、受け取るとか、コスパ意識がなさすぎです。

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怪我に備える保険もどうかと思えます。

ケガで料理ができなくなって外食が増えるとか、自転車に乗れなくなってタクシーを使うことになっても、そんな(治療に無関係な)負担増をカバーしてくれる保険はほとんどありません。

ケガに備えるなら、普通に貯金をしておくほうが使いやすい。すべてにおいて「万能」のキャッシュを手元に残す方がよほど賢いのです。

実は大けがをして障害が残る可能性を考えた時、もっとも意味があるのは民間保険ではなく、公的な健康保険と公的年金にきちんと入っておくことです。

そうすれば一生続く障害者年金がもらえます。(年金をはらっていないと、交通事故にあって大きな障害が残っても、一生つづくはずの障害者年金がもらえません。これはとても重要なので、しっかり理解しておいてください)

あと、ほぼすべての貯蓄系保険(年金払い積み立てなんとか等)も、この低金利時代にはとても無駄です。

変額保険にいたっては、投資信託か仕組み金融商品であって、そもそも保険じゃありません。

テレビで「家計が苦しい」といって取材されている家庭の家計簿をみると、多くの人がやたらと保険に入っています。

ガン保険なんて入ってたら、そりゃあ家計は苦しくなるだろうと思います。

最後に、「マンションの地震保険」もまったく意味ないです、という話も書いてますので、マンション住まいの方はぜひどうぞ。

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