大半の保険は不要

最近、保険のテレビ広告があまりにもひどい。

まず最初から「いくら払えますか?」「毎月お手軽な負担で!」「これなら毎月○万円だけ」というタイプの営業トーク。これ、変でしょ。

たとえば車を買いに行って、「ローンはおいくら払えますか?毎月○万円ですか。だったらランドクルーザーですね」っていう展開にはなりませんよね。払えるからといって要らないもの、無用に高級なものを買うのは単なる無駄です。


また、高齢化社会につけこんで「60才からでも入れます。」「持病があっても入れます。」という言葉も意味不明です。

保険に「入れる」のと、「イザというときに保険金が払ってもらえる」というのは別の話です。たとえば「持病があっても入れる保険」の意味は、「その持病の悪化による入院や手術の費用にたいして保険金が払われる」という意味ではありません。

これまで病歴がある人は保険に加入できない場合が多かったので、その弱みにつけこんで「入れる!入れる!」と連呼するのはいかがなものかと思います。


「入院一日5000円保障」などという場合も、「ただし○○の場合のみ」という支払い条件が山ほどついていて、実際に払ってもらえるケースが非常に限定的な場合もあります。

しかもそれらの条件は、ものすごく小さな字で「約款」に書いてあり、その「約款」は加入前には客に渡さない、という保険会社さえあるのです。支払い条件も知らせずに「入院1日5000円」というのは、おかしくないですか?


最近、週刊誌等の「家計防衛記事」の多くが「保険を見直そう」と書いています。もちろんそうなのですが、ちきりんにいわせれば、そもそも大半の保険は「不要」です。

★★★

ちきりんが思う保険の必要性は下記の通り。
なお、自動車保険と火災保険は別です。また事業上の保険はカバーしていません。個人の保険の話です。


(1)単身者、ディンクス夫婦、引退後で勤労収入のない人、子供は保険に入る必要はありません。

また、子供のいる働き手の人でも、公務員や大企業のサラリーマンについては、おそらく個人で民間の保険に入る必要はないです。会社が掛けている団体保険でかなりの保障があるし、病欠中の所得保障制度がある場合も多いです。加えて遺族年金など公的な保険も手厚いです。

なので民間の保険に入る必要があるのは、
・扶養家族がいる自営業、中小企業勤務等の人と
・ 育児・介護の主担当の人
だけです


(2)必要な保険は、「定期保険」だけです。

定期保険とは、掛け捨ての保険料を払って、死亡保障を、一定期間(5年とか10年など)つける保険です。これだけで十分です。

必要額は、「毎年の必要額×扶養必要期間」ですから、年300万円の生活費で子供が成人するまで20年なら、合計で6000万円の保障が必要です。加入時年齢によりますが、月の保険料は2万円弱くらいです。

年300万円の生活費は少なく見えるかもしれませんが、遺族年金が年に100〜200万円あり、住宅ローンは別の保険がかけてあって、働き手が死亡した場合ローンを返す必要はなくなるのが通常です。

また、子供が成長したらどんどん必要額が小さくなるので、5年ごとくらいに保険の一部解約を行い、保障額を切り下げていくべきです。(当然保険料も下がります。)


必要な保険については以上です。

★★★

終身保険なんて今から入るのは無意味です。(ただし、かなり前に入った終身保険は解約しないほうがいい場合があります。)

入院保険も不要でしょう。保険より万が一のための貯金を一定額しておいた方がよいです。

例えば、妻の入院保険は夫が入院しても払われないし、夫の入院保険は妻が入院してもでません。しかし貯金で備えておけば一人分の入院費だけ貯めておけばいいです。ふたりとも同時に入院する可能性は低いでしょ。

それに入院期間はどんどん短くなってます。“入院日数”に支払い額が比例する保険は必ずしも加入者に有利ではありません。

ガン保険、婦人病保険等、病気を限定する保険もばかげています。お金で貯金しておけば、どんな病気の場合でも使うことができます。使途を限定すればするほど保険金は支払われにくくなります。ガンは“有名”ですが、他の病気で治療費が高額になる疾病はいくらでもあります。

また貯金なら治療費以外にも流用できます。たとえばうつ病で働けなくなった場合、ガン保険はもちろん、うつ病では入院より“投薬・カウンセリング“治療が中心なので、入院保険も全く役に立ちませんが、保険料分を貯金しておいたら治療中の生活費に充当できます。

一生懸命保険料を払って、ほんとうにお金が必要な時に手元にお金がなく「あの保険料を残して貯めていたら・・」と思うのは全くばからしいものです。


保険は統計的に計算された商品です。また、加入者が払う保険料には、保険会社の経費(人件費、CM代その他の経費)がきちんと上乗せされています。その部分も実はバカにならないほど高いです。高給とりの社員が山ほどいる大手有名保険会社の保険を購入することは、「ブランドもの」を買うのと同じような「プレミアム」を払うことを意味しています。


また、保険料を払ってもらう時の申請というのは、本当に面倒でしかもお金が手に入るまでかなりのタイムラグがあります。

入院施設のある複数の医師のいる中堅以上の病院の場合、保険金請求に必要な「治療記録」を書いてもらうのに 3千円から 5千円の手数料がかかる場合が多く、しかも依頼してから書いてもらえるまでに 2週間以上かかったりします。(当然です。医者はこんな書類を作成することを、患者の治療より優先したりはしませんから)

書類を受け取りに行くための交通費や時間だって馬鹿になりません。そんな額の手数料を払って「入院一日目から支払われる保険」を受け取るとか、コスパ意識なさすぎです。

加えて保険金不払いやら、極めつけは保険会社の“破綻”の可能性まである・・・こうなってくると、そこまでして保険に入る意味があるの?って感じになります。すべてにおいて「万能」のキャッシュを手元に残す方が賢いのです。


傷害保険もばかげた商品です。治療期間が短いケガには支払われる保険金は多額にはなりえません。また、ケガで料理ができなくなって外食が増えるとか、自転車に乗れなくなってタクシーを使うことになっても、そんな(治療に無関係な)負担増をカバーしてくれる保険はほとんどありません。ケガに備えるなら、普通に貯金をしておくほうが使いやすいのです。

加えて、大けがをして障害が残る可能性を考えた時にもっとも意味があるのは民間保険ではなく、公的な健康保険と公的年金にきちんと入っておくことです。そうすれば一生続く障害者年金がもらえます。

あと、ほぼすべての貯蓄抱き合わせ保険(年金払い積み立てなんとか等)はこの低金利時代にはとても無駄です。


んじゃね