賢いか?定年ガイドブック

同じく旅行中に読んでいたもう一冊、週刊新潮のGW合併号の記事から“賢い定年ガイドブック”というコラムについて。そこでは、とある方が「賢い定年」を送っている例としてとりあげられていた。

その人は大手一流金融機関の広報部門に17年間在籍した人で、定年後にNPO法人を設立し、いろんな会社の若手広報マンに自分のノウハウを伝える仕事(半分ボランティア)をしているとのこと。


で、その人の言葉として掲載されているのが下記。

「新聞記者とのつきあいも、夜な夜な記者クラブに押しかけ“飲みにケーション”で信頼関係を築いていった。そんなゼロからの経験から、若い広報マンの悩みに応えたいと思っていたのです。」

・・・この人が若い人にどんなアドバイスをするのかが手に取るように分かる一文ですね・・・


他の箇所では

「まだまだ働ける。とにかく働けるだけ、働きたい。家内には、俺は死ぬまで働くと宣言した。自分には忙しいのがリズムになっている。回遊魚のマグロと同じで、泳ぎ続けないと逆に死んでしまう。」

とおっしゃっているので、そういう方なんでしょう。きっと子育ても親の介護も、そして自分の介護も全部“家内”がやってくれるんだろうな。



前にも書いたように、ちきりんは“ばりばり働く”ということ自体を否定するものではありません。

なんだけど、この人みたいに「働き続けないと死んでしまう」という人が、若い人もそういう働き方をすることを前提としてアドバイスしても、「私たちには同じことはできないっす。」という人も増えているんじゃないかなとも思う。

彼が「教えたい」という若手広報マンには「女性」も含まれているのだろうか?もしくは「共働きの妻を持ち、子育てや家事を分担している」という男性の若手広報マンは含まれているのだろうか?


いや、たとえ彼と同じような「家内」をもつ人であったとしても、「夜な夜な記者クラブに押しかけ“飲みにケーション”で信頼関係を築いていった。そんなゼロからの経験から」なにかを教えてもらって、それを実践することができるのだろうか?

別に彼が「毎日飲みに行け!」と文字通り若手に教えているとはもちろん思わない。記事を読むかぎり非常に盛況だ(相談が多い)そうなので、いろいろ役に立つ、より実践的な広報ノウハウも教えていただけるのだろう。

しかし、この記事全体から伝わってくる“この人が学んだコト”“自分の経験に基づいて教えてくれそうなこと”は、「まさしく定年した世代の人」のにおいがすることだよなあ、と感じてしまう。



こうもおっしゃってますよ。

「定年後、休暇をとったのは十五日だけ。「充電」なんてしてたらダメ。今の時代、三ヶ月も半年も休んでいたら、社会の動きから置いて行かれる。」

きっと働いていていた間も、休暇なんか全然とらなかったんだろうな。



充電ばっかりしているちきりんには、ちょっと遠い世界の人のようでした。そして同時に、こういう事例を「賢い定年ハンドブック」というコラムに掲載する週刊新潮も、ちきりんからは遠いところにある雑誌なのねと思いました。



そんじゃーね。