ありゃりゃ、どんどん貧乏に

国民生活基礎調査*1を見てたら、「日本人がどんどん貧乏になってまっせ」というデータが載ってたのでグラフにしてみました。

下記は世帯主年齢別の平均所得です。単位は万円。赤い線は平成6年の所得(7年の調査)で、青い線は平成19年の所得(20年の調査)です。間隔は13年ですね。*2過去13年で年代別の所得がどう変わったか。

うーん、ずいぶん下がってるんですね、私たちの所得・・



思ったことはふたつ。ひとつは「全年代で下がってるんだな〜」ってこと。

ふたつめは「やっぱりちゃんと、中高年の所得が“より”下がってんじゃん」ってこと。

世の中ではよく「中高年もらいすぎ論」が言われてますが、ちゃんとその修正が進みつつあるのね。てか20代とかそもそも貧乏すぎて、これ以上は下げられなかったのかもしれませんが。


50代なんて平成6年には世帯収入平均で900万円近かったのに、150万も下がってます。50代と言えば子供は20歳そこそこ。一番学費がかかる時だし、ローンも終わってないだろうし、加えて親は80歳に突入するし・・・大変です。

あと、そもそも平均900万って高すぎないか?と思いますが、これ世帯収入なので奥さんの(パート)収入も含めてそういう額なのでしょう。そして平成6年よりは今の方が働く奥さんも(共働きにせよパートにせよ)多くなってるだろうと考えると、世帯主の給与は、上記グラフ以上に下がっているのかもしれません。


それと、平成6年の赤い線をもう一度見てみてください。以前は「40代から50代にかけて、ぐぐいと所得が伸びていた」のがわかりますよね。ところが平成19年の青い線では、40代から50代にかけてほとんど所得が伸びなくなっています。

これは過去10数年の間に企業が「年功序列から成果主義」という人事政策の大転換を行ったことの帰結ではないかと思われます。企業も、“定年前10年間”(=50代)の給与が高すぎる、ということは、よくよくわかってたということかと。



次に、同じペースで所得が落ちるとしたら、ということで書いてみました。緑のラインが平成32年の予測値です。



同じペースで給与調整が行われれば、そのうち「所得のピークは50代ではなく40代」になってしまいそう。でもそれも自然な話かもしれませんよね。実質的な仕事の価値って、40代(40才から49才)の方が50代(50才〜59才)より高そうな気がするもん。


ちなみに実際に起こることとしては「40代から50代にかけて所得がぐぐいと伸びる人はこれからも存在するが、そういう人は選ばれたごく一部の人であって、他の大半の人は40代から50代にかけて一切所得が伸びなくなる」ということでしょう。

40代でも50代でも大半の人は中間管理職です。役員になる、社長になる、というように、「仕事が明らかに変わった」というごく一部の人以外の所得は伸びなくなる、と思われます。


しかもこれって、平成6年に20代だった人は平成32年には40代後半、同じく平成6年に30代だった人は50代後半になるわけだよね。個人で見るなら、平成6年には赤い線の20代にいた人が、平成19年には青い線の上の“30代と40代の中間”に移動し、平成32年には緑の線の上の“40代と50代の間”に移動します。

つまり、平成6年頃に20代とか30代で、その頃“赤い線”の資料だけを見せられて「今はお前は安月給だけど、年功序列給与だから将来はどんどん所得が上がるよ。この赤い線のようにな。」と言われていたのに、実際に自分がその年代になった時にはすっかり昔のような高給保証は消えていて赤い線なんてもう幻じゃん・・・ってことです。まさに「騙された!」って感じではないでしょうか。


大変



今30代の人ってあと10年くらいかけて年間所得が100万円くらいは増えるんだけど、その後はもう落ち始めるかもしれない。人生80年時代だっつーのにどーすんでしょう。しかもこの人達ロスジェネ世代で、まともな仕事についていない人も多いし、非婚率もあがっててその観点からも世帯年収が増える見込みがない。

今40代の人に至っては「もう所得は伸びない」と考えておいた方がいいんじゃないかな。今もらってる給与がピークだと。えっ家はもう買っちゃったって?だったら子供の学校くらいは今からでも間に合うからよく考えた方がいいかもね。

こうなってくるときっと社会全体で、“贅沢のコンセプト”が変わるんでしょう。たとえば「子供を私立にやる」とか「妻は家で子育て」とかって、昔で言えば「ベンツに乗る」とか「首周りやら指にでかいダイヤがじゃらじゃら」と言うのと同じくらいの「贅沢」になるんじゃないかと。「子供を私立に」なんて一部の高給エリート社員にしか望めない“夢”になる。

「○○さんのお宅って、奥様パートしかしてらっしゃらないのよ。知ってた?」
「ま〜あのお宅、そんな贅沢を?」とか言われたり。



いったいどうすればいいのか、って?


ん〜、基本は「自分は親より貧乏になる」「子供は俺より貧乏な人生を送る」ってことを想定して生きればいーんじゃないでしょうか。たとえば、


・親の家は一戸建て→自分の家はマンションで我慢→自分の子供は一生賃貸
・自分の親は自分を中高一貫校に入れてくれた→自分の子供は高校までは公立に行かせる。
・母は専業主婦→妻はパート勤務→子供の嫁はフルタイムの共働き
・親の趣味は旅行→自分の趣味は漫画→子供の趣味はエコと節約

とかね。


あと、40代で所得が最大化するってことは、子供が10代の頃にピークアウトするってことでしょ。大学に行く費用は親が出すんじゃなくて子供が“自分で借りる”“自分で稼ぐ”“自分でもらう(奨学金)”のどれか、という世の中になっていくんじゃないかしら。


そんなどんどん所得が落ちるってことはないだろう、とか思う人がいたりするかな。

でもさ、将来のどこかでまた日本が成長し始めるってどんな感じなのか想像つきますか? また経済成長するかしら。もしくは企業が(日本人への)労働分配率を増やしてくれるかしら。



うーぬ。



そんじゃーね。*3



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35歳辺りが昔に比べてすごく貧乏になってる・・という本が続々と
  

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*1:データ:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-20.html 20代のところは正確には“29歳以下”

*2:ネットに掲載されているうちの一番古いデータと一番新しいデータを使ったので、13年なんてちょっと中途半端な間隔です。

*3:天下の三菱総研様も同じようなこと書いてる。http://www.mri.co.jp/NEWS/column/thinking/2009/2009015_1801.html