昨日は政府のあり方について、(1)政府サイズと(2)税金の優先分配先という基準軸があると書きました。この2軸でわけると“政府のあり方”には4パターン存在します。今日はそれを図に表して、実際の例を入れてみました。
縦軸が「政府の大きさ」で、上部が大きな政府、下段が小さな政府です。下に入るのは先進国ではアメリカのみですが、中進国や途上国ではそもそも“小さな政府”しか選べない国もたくさんあります。
横軸は「政府資金の分配先」で、左側が「先端分野」、右側が「底辺分野」を優先する場合です。
産業政策、国土開発、研究・教育、外交・軍事分野などに優先的に税金を配分し、経済大国、軍事大国、政治大国を目指す国は、左側の赤とピンクのボックスに入ります。これらは「大国思考の国」であり、「世界のトップを目指す国」です。
右側の水色、青に入る国は、弱者(高齢者、貧困者、失業者、障害・疾病者)の生活保障や支援に、より優先的に税金を配分する「高福祉国」です。なお、右下は、国民総幸福度を掲げるブータンのような国でしょうか。
国の横の矢印は最近の傾向を示します。中国やロシアは開放経済、資本主義化により小さな政府側に向かっています。一方でアメリカはシティやGMを実質国有化するなど大きな政府側に少し動いています。ただし、彼らは右側に動いていません。アメリカはあくまで「リーダー国」でいられる左側(赤とピンク)にしか関心はありません。この点、“一カ国での経済大国化”をあきらめて自国通貨まで捨ててしまったドイツやフランスとは全然違います。
さて次に、日本の政党を各ボックスに入れてみました。自民党は「大きな政府」で「経済大国を目指せ!」の政党です。今まで一度も福祉を成長より優先したことはないでしょう。共産党や社民党は明確に右上です。「大きな政府で、成長より弱者優先」です。
民主党は一時期、左下のピンクにいた気がしますが、今は右上にいるようです。彼らのマニュフェストには「日本経済が今後どう成長していくのか?」という視点はありません。優先順位は明確に「福祉大国」にあるようです。
上表では自民党に矢印を着けましたが、彼らも(元々若干右よりの公明党と共に)一段と右に移動しようとしています。このため現在は「自民党と民主党の言ってることが同じに聞こえる」わけです。
今の世論では、右上の民主党が政権をとる可能性が高そうなのですが、でも国民の多くが本当に「高福祉大国を目指すべき」と考えているのかどうか、ちょっと疑問のちきりんです。
高福祉大国を目指すなら、日本もフランスやドイツがフランやマルクを捨てたように、「アジア統一通貨は円でなくてもよい」と覚悟する必要があります。国連の常任理事国になる“夢”も捨てれば、世界にばらまいているODAもやめて、その分を国内の貧困問題に充てられます。
先端技術は日本以外のアジアから生まれ、アジアのノーベル賞は中国からしかでない、という時代になるかもしれませんが、「それでもいい。我が国のお金の優先的な使い道は底辺層の支援なのだから」というのが、高福祉国を目指すという意思決定です。
そういう決断を国民がして、そして右上の民主党を選ぶのかどうか。この辺が微妙なところですね。
本来は、「二大政党」にするには、対立ボックス、つまり、右上と左下に一つずつ政党が必要です。そしたら国民は「日本はこういう国であるべき」という政党を選べるはずなのです。(下記)
今の自民党(大きな政府で成長を優先)はもう終わり、ってことで×をつけときました。ここの箱は「途上国の発展モデル政府」なんです。高度成長の時代には、国家が中央集権的に強い力と予算を独占し、国家的視点で産業、経済を発展させるのがいい方法でした。今の中国も同じです。
でも、成熟時代の日本に必要なのは、右上と左下の対立軸なんです。ところが、左下のボックスには政党がない・・・だから二大政党にならないんですよね。
なかなかむつかしいです。
そんじゃーね。