頭脳流入

最近テレビを見ていて、「この人、いいこと言うなあ」とか「鋭いなあ」と思える人の中に、外国人が多いんだよね。というわけで、ちきりんが感心している方々をリストしておくです。


まずはロバート・フェルドマンさん。アメリカの名門大学で経済学の博士号をとり、専門はマクロ経済と金融。日銀やIMFで働いたり、日米の調査機関でのアナリストなどの経歴があります。現職は外資系投資銀行のエコノミストかな。テレビ東京のニュース番組、日経ビジネスサテライトにローテーションのコメンテーターとして出演されてます。

おっしゃっていることがいつでも余りにポイントを突いていて関心させられます。この人、無駄な発言がないんですよね。話す言葉すべてに意味がある。“普通に鋭い人”っていいことも言うけど、“言っても言わなくてもいい”こともたくさん話すんです。でもこの人の言葉には無駄がない。

それに学者なのに、現実社会に則した提言をされます。組織や人心、社会のダイナミクスもよく理解されてる感じ。過激すぎず、常識的すぎず、どうやって“動かすか”ということを十分に意識されてる。外国語でこれだけのニュアンスが伝えられるのはすごいです。

しかも謙虚そうなんですよね。尊敬します。



二番目は金慶珠(キム・キョンジュ)さん。こちらも“切れ者”です。韓国で名門女子大学卒業後、日本で勉強され、今は大学の先生です。言語学がご専門だったようですが、今はメディア論とかを教えていらっしゃるみたいです。この人の講義が聴ける学生って、すごくうらやましい。ちきりんも大学に戻りたいくらい。

とにかく“切り返しが早い”、早いのにきちんと“急所を突く”んです。つまり“めっちゃ頭いいんだな〜”って感じがします。余りに鋭いので、時々テレビのこちら側で「うーん」とうなってしまうちきりんです。ロバートさんは“理知的、論理的”って感じですが、金慶珠さんは“先鋭”って感じです。論理じゃなくて直感で本質をビシッと突く。

この方、議論に負けないタイプのしゃべり方です。韓国の女性らしく身だしなみにすごく気を遣っていてとても女性らしいですが、でもたぶん、この頭の切れ具合とアグレッシブさでは、韓国社会ではつらいかもしれません。これからも日本でキャリアを積まれたほうが得かもですね。



中国の人は何人かいらっしゃいます。起業家として活躍されながら、様々な社会課題についても発言される宋文洲さんは、経営者としてすばらしい。まさにリーダ−、まさに起業家って感じ。中国の人って“おおらかに明るい“人が多いですよね。日本の社会問題についても鋭い視点があります。

学者というか、テレビコメンテーター(?)の葉千栄さん。穏やかな語り口で中立的にわかりやすい解説。ご自身が上海で文化大革命の洗礼を受けたこともあり、中国政府にたいしてかなり厳しい視点をおもちです。既に日本に帰化されています。中国語ができて現地とのネットワークがあるから、現地関連のタイムリーな情報が豊かで勉強になります。若者文化から中国共産党のことまでカバー範囲も広い。

アジア政治や経済についてよくコメントされている朱建栄さんも、アジアの視点から時に“はっ”とするような視点を提供してくださいます。(ただし朱建栄さんは時に中国政府寄りすぎるコメントもあります。)アジア経済、華僑ってどう動いているのか、中国政府や北朝鮮との関係、台湾はどういうことなのか、アメリカと中国の関係は?など、ちきりんが関心の高い話についてコメントされることが多く、大変参考になります。



最後に、日本政治研究の第一人者、ジェラルド・カーチスさんは、コロンビア大学の政治学教授で1940年生まれです。「1964年から日本に暮らしている」ということですから、多くの日本人より長くこの国に住んでらっしゃいます。

いやそれにしても、この人の日本の政治や社会にたいする理解と見識の深いこと、豊かなこと。話を聞いてると「そうそう、日本ってほんとにそうだよね」と思うことが山ほどあります。

日本政治の裏側、地方と都市との関係、官僚の問題、など「日本固有の問題」にたいして、これだけ深い理解があるって、(長く住んでいるとはいえ)アウトサイダーなのに、なんなわけ?って感じです。「日本人より日本に詳しい」タイプの人、というか、詳しいだけではなく“インサイト”があり、日本人としても日本の勉強になります。


というわけで、他にもたくさんいらっしゃるのだと思うけど、「他人の国にきて、ここまでの才能を(しかも日本語で)開示できるってすごいよなあ」と思います。

世の中、すごい人がいるもんです。


“頭脳流出”という言葉はよく聞くけど、“頭脳流入”だってあるよなあ、と。



そんじゃーね。



★★★

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自分の国に住まない人達