ダムタイプ 古橋悌二氏  

“六本木クロッシング2010展”に行ってきた。最近、美術館観賞の記録などは別サイト(“ちきりんパーソナル”)に書いているので興味のある方はそちらをどうぞ。

ここに書いくのは、その中で観たダム・タイプ(dumb type)が 1995年に上映した舞台の記録映像(80分)「S/N」について。

ダムタイプは 1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成されたパフォーマンス集団で、中心メンバーだった古橋悌二氏はホモセクシャルでHIV+

映像作品は彼の感染告白を中心に構成されてます。

古橋氏は 1960年生まれ、最初のボーイフレンドとの性交渉でHIVに感染、1992年に感染を公表し、1995年、海外公演中に敗血症で他界されてます。享年 35才。

今回見た映像は 1995年に上映されたもので、古橋氏はかなり痩せてる。当時はまだ効果的な治療方法が確立されていなかった。

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この舞台の記録映像がすごいインパクトでちょっと圧倒されたので書き留めておきたい。ちきりんが感じたのは一言でいえば、“マイノリティであることの意識の先鋭化”。

私は“女““日本人”で(一応)マイノリティであることを自身でも体験している。というのも、“女”として日本企業の世界で働いたり、“日本人”として西欧国に住んだりすると、ものすごい意識の先鋭化を体験する。

それは“五体満足な日本人の男”で日本にしか住んだことない人には想像もつかない世界だと思う。(女でも今 20代だとあんまり感じないとか、そういう時代性もあるでしょう)

この作品の中には“ホモセクシュアル”、“HIV+”“黒人”“日本人”“障害者”(作品の中ではDeaf)“セックスワーカー”という“マイノリティ・ラベル”を体に貼った(貼られた)人達が、それらの「ラベルから解放されたい」「解放されて愛の世界に生きよう」という強烈な思いを表現します。

てかそういう舞台(映像)です。

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↑ 残念ながら「S/N」はDVD化されておらず、観られる機会が極めて限られてます・・これはダムタイプの他の作品のDVD


HIVについては一応“特効薬“と言えるレベルの薬剤治療法がでてきて先進国の国民にとっては死病ではなくなったし、人種問題にしても障害者への差別とか、職業の貴賎とか、差別をやめようよ、ということで、それなりに世の中は“多様な人の共存”にむけて進んでいる。

それでも「自分は何者なのか」ということを問われるのは常にマイノリティ側にいる人達だけである、という事実は何もかわっていない。


たとえば日本人ばかりの会社にひとりだけタイ人がいれば、「あの人誰?」と問われた時に、みな「タイの人だよ」って言うでしょ。

男だけの会社にひとりだけ女の役員がいれば、「この人誰?」と役員一覧を指さされた時、人は「その人、女性役員なんだ」って説明するでしょ。

クラス写真の友人を指さしながら「この子はだれ?」と問うていけば、障害のある人に関しては「この子、耳が聞こえないんだ」って言うでしょ。


私たちは誰かを語る時、“わざわざ、その人がマイノリティであることを示すラベル“を探して説明するんだよね。だってそれが、それこそが「その人が他者とどう違うか」を表す最も効率的な方法だから。

それは「表現することの効率や効果」という意味では正しい方法なのかもしれないけれども、マイノリティ側に在る人達が、(常にそのラベルで呼ばれる人達が)、どう感じているのか、そう呼ばれることによってどう生きることを余儀なくされているのか、規定されているのか、という点については全くもって無頓着。

しかも。私たちはそういったラベルなしに自分を(他者を)語る言葉を見つけてもいない。

マジョリティからマイノリティを分けるラベルではなく、ひとりひとりを表す言葉があるのか?というと、実はない・・・んだよね。少なくともそれは、「表現することの効率や効果」を追求する世界では成り立ち得ない。

たとえば、「あいつがどんな人間かってことは、あいつが踊るのを見れば分かる」とかいう話になれば、それを見るのに一定の時間やコストが必要になる。

なんだけど、実際の話、人を語る、というのはそういうことなんだという(そんな簡単なことじゃないのよという)ことなのだ。


「あなたは何?」と言われた時に私たちが使う“ラベル”は何?


私は、
・日本人で、
・女で、
・こういう仕事をしていて、(もしくは “何もしていなくて”)
・家族構成はどうで・・
・・・・


仕事辞めたり、離婚したりしたら、「あなた」が変わるわけ?


自分をどう表現するのか、
どういう“ラベル”で私たちは自分を語るのか、
表現するのか。


私?

私は・・・

おちゃらけた社会派ブロガーです。


っていうかね。この日記(ブログ)を全部読んでよ、と。それが私だからと。ラベルではなくて。

そういうやたらと時間とエネルギーのかかる大変な方法しか、この“ラベルの世界”から解放される方法は(人を語る方法は)ないってこと。

他者を理解する、自分を表現する、そこにはそんな容易い方法はないってこと。



そんじゃーね。


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