未来の働き方について、もっとずっと考えたい

先日、『ワークシフト』という本を題材に、ツイッター上でSocial book reading with CHIKIRIN というイベントを開催しました。

事前アンケートには781名が回答、2時間で3000ものツイートがなされ、ツイートせず読んでいただけ、という人も含めると相当数の方が参加されたと思います。

多くの書店さんが告知に協力してくださり、著者のリンダ・グラットン教授からはビデオメッセージも頂きました。そしてなによりも、参加してくださった皆様に心から感謝しています。


さて、この件について、ちきりんが思ったことを備忘録的にメモっておきましょう。


<議論用プラットフォームが必要>

私も含め、多くの人が開始直後に「これをリアルタイムで追いかけるのは無理!」と気がつきました。

開始と同時にハッシュタグをつけたツイートが集中し、どんなツイッターソフトを使っている人でも、それらを追いながらインタラクティブに議論することは不可能だったと思います。

ちょっと目を離すとすぐに「新しいツイートが107件あります」と表示されるような状態でした。私自身、始まってスグ「いったいどうすればいいんだろう??」と戸惑いました。

ツイートは後からすべて読んだので、それぞれに参考になりました。でも、勢いに驚いてツイートできないままの人も多かっただろうし、途中でついていけなくなった人もいたでしょう。

このことから私が考えたのは、「この分野って大きなチャンスがあるよね」ということでした。


ここ数年ネットの普及と共に、「わざわざ有権者の代表者である議員なんて選ばなくても、有権者が直接ネットで議論をすればいい」という意見を聞くことがありました。

いわゆる“直接民主主義”が可能になるのではないか、という議論です。でも今回やってみて、そういうことを実現するには、相当に洗練された、高度なテクノロジーが必要なんだとわかりました。

たかだか匿名ブロガーが呼びかけただけで、ツイッターでは収拾が付かないほどの意見が寄せられるのです。経済政策などの複雑な案件につき、国民全体で話し合おうとNHKが呼びかけたりしたら、それこそ大変なことになるでしょう。

直接民主主義的なことを実現するには、単に「みんなネットにつながる」ということだけではなく、「議論プラットフォーム」として必要な機能を備え、AI的(人工知能的)な判断機能を持った超高速・超高効率のインフラが必要不可欠だと思います。


ちなみに、ニコニコ動画の画面に流れるコメント文字は、“いい線”行っているとは思います。でもあれも“議論”には不十分ですよね。「どんな意見が多いのか」をざっくり見ることしかできない。それなら今回のツイッターと、そんなに変わりません。

こういったインフラシステムに対するニーズは、あらゆる分野に存在するでしょう。使えるものが出てくれば、仕事や研究上の議論にも役立ちます。そして遠からず、そういったものを提供してくれる企業が現われるでしょう。

ちきりんがアンケートでいとも簡単に781名から回答を得られたのも、Google documentというインフラがあったおかげです。『ワークシフト』の中で描かれていた「ビッグアイデアクラウド」は、そういった技術革新を前提として成り立つ「未来の知のネットワーク」であり、まさに「新しい働き方」なのです。

議論のプラットフォームを提供してくれるのが、グーグルなのか、フェイスブックなのか、はたまた今は無名の(設立さえされていない)新しいベンチャー企業なのかは、わかりません。でも、それは確実に「グローバルな議論プラットフォーム」として現われることでしょう。

とても楽しみです。



<発信することには大きな意義がある>

今回、発信してくださった方と、読むだけに集中された方があると思います。ちきりんは前々から書いているように「アウトプット型」の人なので、「発信すること」を多くの方に勧めています。

今回、ひとつでもふたつでも自分で発信した方は、これから生活していく中で、いろんなことに気がつきやすくなると思います。

新しいビジネスについてのニュースを聞いたり、新しい働き方をしている人に出会ったり、取引先が今までとは異なることを始めた場合、「あっ、これってもしかして・・・!」と思うことがたくさんでてくるだろうと思うのです。

『自分のアタマで考えよう』に書きましたが、何かについて意見を言うと、アタマの中に「思考の棚」ができ、情報感度が高まります。他の人が見ても気がつかないことでも、「あっ、これは!」とピンとくるようになります。


ソーシャルブックリーディングは終わりましたが、議論を終える必要はありません。未来の働き方について、これから日常生活の中で気がついたことについて、皆さんも是非、継続的につぶやいてみて下さい。新しい働き方、5つの要因が自分の生活にどう影響を与えるのか・・・

#sbrc1 のタグは今でももちろん使えます。ひとりでつぶやくも良し、友人やフォロアーの人達とつぶやくもよしです。これから私たちの働き方はどう変わるのか、多くの人が継続的に考えていける、大事なトピックだと思います。

みんなどんどん発信しましょう!



<未来の働き方について、もっと考えたい!>

私自身、「これからの働き方がどうなるのか。私たちは何を心がけていけばいいのか」、これからも継続的に考えていきたいと思いました。

2011年1月に『ゆるく考えよう』 → 9ヶ月後の10月に『自分のアタマで考えよう』 → 7ヶ月後の今年5月に『世界を旅して考えよう!』と、やや急ぎ足で本を書いてきたため、ここ半年くらいは執筆は休んでいたのですが、今回のソーシャルブックリーディングをきっかけに、「来年は、未来の働き方について考える本を書こう!」と決意しました。(出版社は確定しております)

そしてその本が出る頃には、もう少しこなれたやり方で、いろんな人と「これからの働き方」についてオープンに議論できる機会を設計してみたいとも思っています。


今回の試みで私が理解したのは、こういったテーマについて、400ページもの本を読み、一定の時間を投資し、議論をしてみたい!と思う方が、相当な数、存在する、ということです。このみなさんの意欲と関心をどう深めていけるのか。どう、つなげていけるのか。

それが私に与えられた宿題です。


そのことを、これからじっくりと考えていきたいと思います。


そんじゃーね!


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう