悔しい気持ちが大好きです

梅原大吾さんの本を読んだとき、思わず固まってしまうくらい衝撃を受けた箇所があるので、少し長いのですが引用しましょう。

なお冒頭の“当時”とは、彼が中学・高校の頃のことです。

当時は、職業としてプロがあるわけでもなかったし、僕がどれだけ大会で優勝したところで人助けができるわけでもない。


だから、特に目標をもつことなく、毎日毎日、目の前の相手を倒すことだけに集中していた。


だけどやっぱり、勝負事でこれだけ頑張っていれば何かあるかもしれない---。
もうひとりの自分が、そう囁き続ける。


そんなはずはないのだけれど、ある日、誰かが僕のことを認めてくれるかもしれない。


ゲームが上手いということだけでは認めてもらえないかもしれないが、僕がやっていることは“人を理解する”ことが欠かせないし、表面的な戦略だけでは勝ち続けられない高尚な世界だ。


そこを追求して勝ち続けているのだから、いつか誰かが評価してくれる。


その評価によって、僕の人生は変わる。
そう願っていたのだろう。


ゲームに対する周囲の評価も変えたかった。


僕のように真剣に考えている人間、とことん追求している人間を見ることで、「もう少しゲームに注目していいんじゃないか」と考えてほしかった。


もちろん、野球やサッカーと肩を並べるほどとまでは思ってなかったが、ゲームがメジャーな存在に近づいてもいいだろうと思っていた。


だから、いつかゲームが認められる、その日のために僕は成長し続ける必要がある。


人を唸らせるような考えを持っておく必要がある。そう感じていた。


よくひとりで、インタビューのシミュレーションをやっていた。
「梅原さんは、どんな思いでゲームをしているんですか?」
「(待ってました!) 僕は・・・」


こんな質問をされたら、こう答えよう。

どのような覚悟でゲームと向き合ってきたか、誰にも負けることのない僕の熱い気持ちをこたえられるようにしておこう。

頭の中で、そんなことを考えていた。


これを読んだとき、しばし茫然としてしまいました。

いつか誰かが自分のことを理解してくれる。そう信じたいけど本当にそんな日が来るのか、もしかしたら一生来ないかもしれない。

でも、自分は準備しておかなくちゃいけない。誰かがマイクを向けてくれたその時に、最高の答えをするために。


自分の進む道を周囲がどうしても認めてくれない。

そんな環境の中で自分を鼓舞し続ける中学生の切ない思いが溢れてるでしょ。


★★★


また梅原さんは何度も、「考えることなく、どんなに長い時間やっていても、まったく巧くならない」と繰り返しています。

これ、トップアスリートの方で同じように言われる方が多いです。

いわゆる根性論の否定ですね。もちろんビジネスでも同じです。


思考せず、夜中までひたすら作業に没頭しているような人が「仕事がデキる」ようになったりはしません。

デキるようになる=生産性が高くなる=巧くなる、のは、「考えて、新しい方法でやってみる」という仮説検証のプロセスを常に回している人だけです。


このように、他分野のトップクラスの人とまったく同じことを言っているのに、ゲームの世界にいる梅原さんの言葉が注目を集めることはありませんでした。

彼は「小さい頃から、テレビでいろんな人が話してることについて、それってオレが言ってることと全く同じだよ、ってよく思ってた」そうです。


自分と同じことを言っている人の言葉が、テレビで注目されて賞賛されてるのに、自分がやっていることは「なんでいつまでもゲームばっかりやってるんだ?」という目で見られる。

そういう中で彼は、ひとり脳内インタビューを繰り返していたんです。


よくひとりで、インタビューのシミュレーションをやっていた。
「梅原さんは、どんな思いでゲームをしているんですか?」
「(待ってました!) 僕は・・・」


★★★


前にこんなツイートをしたことがあります。

「誰かに憧れてるようではお話しにならない。スゴイ人にあったら悔しいと思わないとダメ。そうじゃないと超えられない」


私はこの「悔しがる」という気持ちが大好きです。すごく大事だとも思ってる。

なぜならこの気持ちこそが、飛躍へのエネルギーになるからです。

私のところにビジネスプランを見せに来たり、イベントの企画を持ってくる学生や若手社会人がいます。

彼らにたいして、私はけっこう厳しく対応してます。たとえばこんな感じ↓

学生 「こういうことやりたいんですけど」

ちきりん 「それって、やったらできると思う?」

学生 「はい思います」

ちきりん 「ふーん。やったらできるとわかってることを何故やりたいの? やればできることに人生の貴重な時間を使うのって無駄じゃない? 誰かに褒められたいから、できるとわかってることをやるの?」


みんな、とても悔しそうな表情をします。


私は彼らを、悔しがらせたいんです。
「くそー!!!」って思わせたい。
それが、ひとつ上のステージに上がるための原動力になるから。


テレビの中で自分と同じことを言って賞賛されている人がいるとき、
「いいなあ、あの人」って憧れたらダメなんです。
「なんでこんなに違うんだよ!」って、悔しがらないと。


上に引用した箇所が好きな理由も同じです。すごく悔しい思いが伝わってきたから心に刺さった。


子供も大人も、たくさん悔しい思いをしたらいいと思います。

自分自身が感じる悔しい思いを大事にするべき。
噛みしめて、味わって、自覚するんです。
「自分は今、すごく悔しい」って。


そして考えるんです。
「何がこんなに悔しいんだろう?」って。

そしたら、
何をやるべきかが見えてきます。


子供たちにも強烈に悔しい思いをさせてあげましょう。
その気持ちが無いと、けっして山が越えられないから。



そんじゃーね。

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