「学校にお金払う=教育投資」とは言えない時代

先日、女性の貧困に関する番組を見ていて感じた違和感のひとつが、みんな「学校にさえ行けばいい仕事が見つかる」とでも考えてるのかなってことでした。

大学(か専門学校か忘れたけど)に行くために借りた奨学金が 500万円を超えてるという 20代の女性が紹介されてましたが、奨学金とはいえ返済義務があるので、事実上の学生ローン=借金です。


本人は、「卒業して正社員として就職すれば、500万円くらいすぐに返せると思っていた」けれど、卒業後も非正規のバイトっぽい仕事にしか就けず、借金返済に追われているとのこと。

つまり番組が提示する問題設定は、「正規雇用に就けないので、奨学金が返せない問題」なわけですが、私が感じたのは、、

「それ、正社員として就職してたらホントに返せるの?」ってことでした。


あたしも大学卒業後すぐに大企業の正社員になったけど、それでも 500万円を超える(元本?)の借金を返すなんて相当に大変だろうと思います。

当時はバブル時代だったからボーナスもソコソコでたけど、いまどき、正社員になってもそんなに景気よくボーナスがでるわけでもな

そうなると次は「返済義務のない奨学金を増やすべき」と言い出す人もいるんだけど、

返済義務のない奨学金って基本は「優れた学業成績の学生」から優先的に与えられるので、結局は「就職するのに苦労しないレベルの学生から順にお金がもらえるだけ」なんじゃないかと思います。(それはそれでいいと思いますが)


さらに戻れば、「大学って 500万円も借金していく価値のあるとこなの?」って気もします。

番組ではほかにも、専門学校にいくのに毎月 8万円とか、保育士になるための学校に 300万円とか、みんな学校にものすごい気前よくお金を払おうとししててびっくりしました。

見ていて、「教育投資が報われる」とは(私も)思うけど、もしかして「学校にお金払えば報われる、と誤解してるのでは?」と思えるほどだったのです。


確かに高度成長の時代なら、「学校にお金払う=教育投資」だったんだろうと思います。てか、今の親の世代が大学を卒業した 30年前くらいまでは、それが成り立ってたのかもしれない。

でも今はもう「学校にお金払えば、それなりの給与がもらえる仕事に就けるはず」なんて成立してない、です。

つまり最初の女性の例に戻れば、「正社員として就職できてたら、500万円の奨学金は返せたはずなのに、非正規雇用にしか就けなかったので返せない」ってのは、今や課題の立て方自体が成り立ってない気がします。


ちなみに、「学校にお金を払えば、卒業後に経済的に報われる」と信じてるのは、こういう番組に出てくる人だけじゃなくて、

いまだに欧米のビジネススクールに 2000万円もかけて通おうとする人も同じで・・・あれも私にはちょっと信じがたいです。

「学校」ってのは、聖域でもなんでもなく、単なるサービス業のひとつなので、そこに払うお金と、受けられるサービスが見合っているかどうか、

そこで得られるものが、本当に自分が(それだけのお金を払ってでも)手に入れたいものなのか、多額のお金を払う前に、よーく考えたほうがいいと思います。


最近は「起業家に大学教育は役立たない」という人もいるけど、起業家どころか、普通に自分で商売して(お好み焼き屋でも、高齢者支援でも、ネットサービスでもいいけど)食べていくのに、大学や専門学校に(その授業料に見合う)価値があるとは思えません。

もちろんお金が有り余ってるなら好きに出費すればいいけど、借金までして、たいして価値のない学校に多額のお金を払うなんて本当にもったいない!


とかいうと、すぐに「ちきりんさんは、大学に行き、ビジネススクールにも行ったんですよね?」って言う人がいるので、そういう人はこちらをどうぞ→ 「やっぱり最初は武士になるべき?


そんじゃーね!