新連載 浅草から考える多文化共生

先日、浅草に行ったら・・・インバウンド観光の威力にあらためてブチのめされました。浅草は今、日本で一番、海外旅行客増加の恩恵を受けている町のひとつ。

「不景気」とか「デフレ」という言葉は「どこの国の話?」って感じるほどの賑わいだし、

仲見世通りの外国人比率はパリのシャンゼリゼと同じくらいなんじゃないかな。知らない人はみんな一回、見に行ったほうがいい。



さて、私が浅草を訪ねた目的は取材。

今回もびっくりするほど多くのことを学べたので、少しずつ紹介していきます。まず初回の今日は、取材を受けてくださった守護彰浩さんのご紹介。



守護さんは千葉大学の経済学部に在学中、半年を休学して世界放浪をした経験の持ち主。その頃はユーロもドルも高かったので、アジアの国での滞在が長かったとのこと。

そこでインドネシアやマレーシアなど、日本ではほとんど見なかったムスリムの人達とも出会います。

とはいえ当時は大学にいるムスリムの留学生にも、「お祈りって毎日するの?」「何の肉が食べられないの?」と質問するレベルのムスリム初心者。

しかし新卒で就職した楽天で、守護さんにはその後の人生を変える体験がありました。


それはパキスタンからの留学生で、楽天で働くエンジニアとの出会い。彼はなんと 5カ国語が話せ、奨学生として東工大に留学し卒業、もちろん開発者としても超優秀。

正直言って自分や自分の周りにいる「普通の日本人」の何倍も優秀な人材。。。


なのに彼は毎日、食べるモノにも困ってた。

といってもお金の話ではありません。


ムスリムの彼には豚肉だけでなく、材料としてアルコールを含む調味料を使った食事も食べられない。たとえば照り焼き肉にみりんや料理酒が使われていてもダメ。

豚肉以外の肉に関しても、ハラールの認証を受けた特別な屠殺処理が行われていないと食べることができません。

だから毎日お弁当を持参。飲み会に参加しても出てくる料理で食べられるのは焼き魚やサラダのみ。。。

食べ物だけではありません。

2010年の英語公用語化以降は外国人社員も増え、今では環境も整った楽天ですが、当時は毎日のお祈りをする慣習や場所への理解も少なく、イスラム教徒の社員は苦労をしていました。


守護さんは思います。

「こんな優秀な人材が、普通に働くだけでこんな苦労をする国ってどうなんだ?」と。


ところが更にショックな事態が発生。

超優秀なパキスタン人社員が、「日本は働きにくい」という理由で、ムスリムフレンドリーな環境が普及するシンガポールに移ってしまったのです。


まじか!? あれほど優秀な人材で、かつ東工大に留学し、日本で働くことを希望してる人をそんな理由で逃してしまうなんて、日本ヤバイだろ!?

そして、ムスリムの人達が普通に働ける環境を日本にも作りたいと楽天を退職して起業。現在のハラールメディアジャパン株式会社を設立します。

この会社がやっていること、守護さんが目指していることなど、これから少しずつ書いていきますが、今日はもうひとつ、

今回の取材を行った浅草のカフェを紹介しておきましょう。


SEKAI CAFE は仲見世通りのごく近くにあるオシャレなカフェ。


ここではすべての料理がハラールフード。私がいただいたのは鳥の照り焼き丼ですが、これもお酒は使われていないし、鳥もハラール処理されたものです。

お店はモダンなのにお料理がいかにも「日本の定食諷」なのは、外国人観光客の好みに合わせたためかな。


とはいえお客さんにはムスリムの方だけでなく、日本人、そしてそれ以外の海外観光客も含まれます。

働いている学生アルバイトの方も、ムスリムだったりヒンズー教徒だったりと様々。(左右がアルバイト。真ん中は店長さん)


そしてなにより驚いたのは、カフェの隅にお祈りスペースまで用意されていたこと。

壁の掛け軸(?)には「アッラ−」と書いてあるらしい。
あと、矢印がメッカの方向ですね。


このスペースはカフェのお客さんだけでなく、浅草を訪ねてきたムスリムの観光客の方には自由に使ってもらっているとのこと。

このカフェについても書きたいコトはたくさんあるんですが、最初から余りにたくさん書くと読者のみなさんもお腹いっぱいになってしまうので、今日はこの辺で。


今年は夏から秋にかけて「難民支援」関連の取材をし、その連続エントリを書いてきましたが、この冬は(来年の1,2月も含め)、

ムスリムの方が「食べるものさえ見つけられない国」日本を、守護さんがどう変えていきたいと考えているのか。

現状から問題点、そして私たちが進むべき方向などについて、ゆっくり連載していきたいと思います。


お楽しみに!

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そんじゃーね。


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