旅行記ソビエト6

さて、ちきりんは地下鉄駅に向かい、コスモスホテルに戻ろうとしました。ところが・・・来た時とは駅の様子が全然違う。

何?

すんごい人が多い!! 駅に人があふれている。そして、到着する地下鉄も・・・すごい人!

地下鉄がグム状態になっているのです。何これ???

わかった! 夕方のラッシュだ!!!


そうなんです。クレムリン駅あたりはモスクワの中心街。コスモスホテルは郊外ですから、夕方のラッシュに人がその方向に動いているわけです。モスクワにラッシュがあるなんて・・・

なんかちょっと怖いな・・・と思って、また高速エレベーターで地上へ。「タクシーで帰ろう」と思ったわけです。中心街なんだから、タクシーもあるだろう。その通り。地下鉄の駅を出るとすぐタクシー乗り場があった。人が並んでる。っていっても10人ちょいだから、東京に比べたら全然まし。しかもタクシーが既に数台止まっている。

でもなんか変。並んでいる人は、間隔を1メートルくらいずつあけて並んでて、タクシーはその前をのろのろ進んでる。タクシーが近づくと、待っている客がタクシーに近寄り運転手になんらか少し話す。そのまま乗り込む人もいるんだけど、大半の場合、乗らずにまた列に戻る。

何やってんの?


なんかタクシーの乗り方も日本と違うみたいだな〜と思って、まずは観察。国によっていろいろシステムが違うからね。郷に入れば郷に従え、ですし。で、よく見てたら、どうやら皆、「行き先」をタクシー運転手に伝えている。

価格交渉しているならよくあるんです。タクシーにメーターがついてない国はたくさんある。交渉して合意しないと乗らない、乗せない、という国はたくさんある。でも、「客が行き先を伝え」「運転手が乗せるかどうか判断している」のですよ、この国・・・どーゆーこと???

よくわかんないけど、多分「自分が行きたい方向や距離の客しか乗せない」んだと思う。タクシーが・・・客を選んでいる!

ひえ〜

と思ったけど・・・そうね、ここは「労働者の国!」だもの。タクシーに乗ろうなんていう「堕落したプチブル」より「働く運転手」の方が偉くて当たり前なのかもしれない。


しかし、このシステムは外人には厳しい。だって、ちきりんに言えるのは「コスモスホテルまで行きたい」ってことだけ。他の客はなんだかんだ運転手に話したり、2,3人の乗客で一緒に交渉している「ここ行って、あそこ行って、最後にここに寄ってよ」とか言ってる。こうすると運転手の嫌う短距離の人も乗れるんだと思う。

でも、ちきりんは「あきらかによそ者」だし、誰も声を掛けてくれない。自分でタクシーの運転手に言ってみたけど・・・皆「ニエッット」って言う。(Noって意味)もしくは、顔をしかめてダメダメという表情をする。なんで???近すぎるのか、方向が悪いのか、コスモスホテルが特殊なのか・・・

かなりがんばって、その乗り場で待っていたり交渉したのだが、寒いし、途中で「やばいな、やっぱ混んでいても地下鉄の方が確実だわ」と思った。こんなところで待っていても、全然乗れないかもしれないし、夜になると怖いじゃん。


というわけで再び地下鉄へ。かなり混んではいるが、「ちきりんは東京から来たのよ。これしきのラッシュ何よ!」ということで。かなーり混んだ地下鉄に乗り込んだ。

そしたら・・・うえええん、次の駅から2,3駅はずうっと、どんどん人が乗ってきて、ちきりんは、また、「グムのちきりん」状態。右から押されては左、左から押されては右・・・

しかもみんな巨大だからロシア人の背中とおなかに囲まれて・・・窓からの駅の名前も見えないよ〜。つーか、ロシア人の背中以外何も見えないだよ〜。グムが商品を高〜いところに掛けている意味がよくわかる。ひえ〜

それに、ちきりんにはアナウンスだけで駅を聞き分けるのはとても難しい。コスモスホテル駅って名前ではないのだもの。なんて駅だったっけ〜。しかも動けない。降りられない。どーすんの〜。何個目の駅だったか忘れた〜。うええええええん。

・・・既に5個くらいの駅に停まったと思う。そろそろ降りるべき駅だと思う。でも、ちきりんは、後から乗ってくる人に押されて、今や車両の中央付近で埋もれている。とても降りられない。・・・・・ちきりん、どーしたか。


とりあえず叫んだ。

「降りる!」


日本語で。大事な時は母国語で叫ぶのが一番効果的なのだ。

「降りる降りる降りる、おろして!!!!」

周りのロシア人がちょっとたじろいだ様子が、背中とおなかの振動により伝わった。でも、皆、全然動かないよ、つーか、動けないのだよ。わかる。それは。

★★★

んで、強行突破だ!と思い、とにかく動き始めた。肉と肉の間をちょっとずつ、そう、グムにいた時みたいに・・・みんな協力はしてくれるけど、でも限界ある。ちょっとづつしか進まない。その間にまた駅にとまって、新たな肉波で押し戻される哀れなちきりん・・・

とうとう、ちきりんは泣き始めた。嘘泣きじゃないよ。ほんとに泣いたの。だって不安じゃん、怖いじゃん、困ったじゃん。泣くでしょ、普通。一人だし、息苦しいし、押しくらまんじゅうだし。かわいそうじゃん!!!

そしたら、周りの人が・・・・ひえっ?って感じになった。姿は見えないけど、なんかが泣いてるぞ、って感じで。そして、そのうち、誰かがなにかロシア語で言ってくれた。そしたら、周りの人がちょっとづつ「おなかをひっこめ」通路をつくってくれた。そしてちきりんは、ドアの近くにたどり着いた。そして、次の駅で、ちきりんは、降りた。

スパシーバ、スパシーバ、オーチン・スパシーバア〜!!!(ありがと、ありがと、めちゃくちゃありがと〜)


よかった、助かった・・・涙を拭いてハナをかんで・・・でも、そこは知らない駅。「ここ、どこ??」でも、地下鉄の駅は暖かいし、そこは人も多くなかったので、路線地図を見て理解できた。2駅行き過ぎだ。じゃあ、戻ればいいのね。で、ちょうどそこに反対方向の地下が・・・・

えっ!!!ガラガラ!!!!

ちきりん、それに乗り、2駅目で、「そーよ、ここ、ここ!」という駅で降りる。


そう、ラッシュは「中心街→郊外」の方向だけなの。そりゃあそうね。夕方だからね。朝はゆっくりだったからラッシュにあわなかったのね。ほんとに嬉しい。帰ってこれて・・・

でも学んだよ。ラッシュは・・・行き過ぎて戻れば簡単なのだ。これは次の旅行に生きる教訓だ!と転んでもただでは起きないちきりんである。ふふ。


というわけで、ホテル着。食事。シャワー&寝る。ああ、長い一日だった。

以上。明日はいよいよ総集編。ちきりんがモスクワで見たものとは!


また明日


続きはこちら → ソビエト旅行記その7