旅行記ソビエト5

さてアレクサンドロビッチ(長いので、以下はアレクと書くだよ・・)に、「どこに行きたい?」と聞かれたので、「お買い物!」とちきりん。世界中でお買い物!するちきりんです。

どんな店に行きたいの?というので、まずは有名な国営デパート「“グム”に行きたい!」と。これはロシア語の教科書の中にもよく出てくる有名デパート。アレクは・・・ちょっと躊躇していたが「何を買いたいの?」と。ちきりん「帽子。毛皮の帽子。ロシア人の帽子!」。彼は静かにうなずき、じゃこっち、と歩き始めた。彼の様子は、なんか・・・変。??


その理由はすぐにわかった。グム。すごいとこでした。巨大なビルの1,2階がデパート。まず・・・入り口になぜか鉄の鎧戸のドア。警備員が閉まっている門の外で拳銃をかまえて立っている。しかも門の中も外も「ラッシュ時の山手線?朝の新宿駅?」って感じの人・人・人。すんごいうるさいし、おされるし、はたかれるし・・・なんなんだ、この混雑は!?

アレクが、ちょっと待ってて、と、ちきりんを残し、人混みをかき分けて前に行き、警備員となんか話をして、そしてちきりんを手招きした。んで、いきなり、ちきりんは中に入れることになった。なんでだろ?わかんないけど。他の人のブーイングが聞こえる。みんな入り口でシャットアウトされているのに。


しかし、中は中ですごかった。押される押される。本当、ラッシュの山手線内って感じです。アレクがちきりんの手をとって、こっちこっちと進んでいく。ロシア人巨大だから、ちきりんはもう大海にもまれる落ち葉状態。ちょっとずつちょっとずつ人波を乗り越えて進んでいく。「どこ行くの〜」って感じなのだが、アレクがしきりと「上を見ろ!」と言っている。で、上を見たら!

びっくり仰天。


なんと・・・

天井から・・・商品がつり下げられている!

天井は2階建て吹き抜け、かなり高い(普通で言えば3階建てくらいかも?)吹き抜けの上の方からロープで、いろんなものが吊してある。コートとか、ズボンとか、ベッドとかあ〜!!!

そしてよくみると、四方の壁にもかなり高い位置におもちゃや鍋、靴など、こっちは小物が“掛けてある”。

これ、、、、どういうことかというと、売り場のフロアは人であふれてる。売り場は見通しが全くきかないから、どこに何を売っているのかわからない。もし日本みたいに低い位置にあるショーケースに商品を並べたら、列の一番前の人しか見えないじゃん。

でも、天井や壁の高い位置に商品を吊したり掛けたりしたら、遠くからでも、人波の頭越しに商品が見える。「あっ、あそこがコート売り場だ!」とわかる。そしたら、少しずつ少しずつ人波をかき分けて、“そちらの方向に”進んでいくわけです。お客さんが・・・

まじっ!!??

ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、網棚に商品が置いてあって、目当ての商品に向かって、皆が少しずつ動いていく、そういうの想像してください。だからアレクは最初に「何を買うのか?」って聞いたんだよね。買うものが決まっていないと、こんなところでは何も買えない・・・

まじっ???


アレクは必死で「毛皮の帽子」を探してくれているみたい。でも30分もたった時、ちきりんは「もーいーかも・・・」と思った。だって大変すぎ。息苦しい。目が回る。それに一番大事なことは・・・

「暑くて暑くて、毛皮の帽子が欲しいと思えない!!」


ちきりん「アレク!!行こ!帰ろ!」
アレク「???」(←肝心なところで通じないちきりんのロシア語。あんなに苦労して勉強したのに〜)
ちきりん「帽子、いらない!」
アレク「ほんと?」
ちきりん「いらない〜」

アレク、手に力を込めちきりんをひっぱった。そして15分後、私たちは人混みを振り切って、出口にたどり着いたのでありました。

グム体験、約1時間。

すごかった・・・


その後、アレクとピーターと3人でお茶。いろいろ聞く。あれでもモスクワは物資がある方だから、地方から皆ものを買いに来ている、とのこと。地方の人はグムしか知らないから殺到しちゃう、と。(ちきりんも田舎モンってこと?)入り口の規制は、入れ替え制だから、と。もっといいショッピングセンターがあるから、ってことで、そっちに行こうという話になる。

それから、いろいろ物々交換した。シチズンのミッキー腕時計はロシアのアンティーク手巻き時計に、ダウンベストは毛皮のロシア帽子に、日本製ボールペンはCCCPロゴの入った手帳と交換。(CCCPってのは英語でUSSR。ソビエトの国名です。)ちきりんがはいてたGパンも欲しがってたけど・・・それは断りました。

後、空港で入国にすごい時間かかった、って言ったら「幾ら渡したの?」って。「なに、それ?」って聞いたら「僕は空港は行ったことないけど・・・全然お金渡さずに手続きするなんて馬鹿だなあ」って。

そうなんだ〜。だからちきりんだけ1時間もかかったんだね。「幾らくらい渡せばいいの?」「ん〜、ドルなら1ドルでもいいんじゃない?」って・・・そーなんだ〜。だからお札を全部並べたりしたのかしら。いや〜ん、ケチなわけではないのよ、そんなこと思いつかなかっただけだよお。そーだったのかあ・・・などなど、しばし会話。

んで、その後、彼らの言うところの「おしゃれなショッピング街に行くことにした。」

すごい!

おしゃれっつーか、アーケードなんですけど、2階建ての。ロンドンやパリにあるアーケードみたいなのの巨大なやつです。(何でも巨大な国です)

お店いっぱい。人、普通。商品、普通。かな。グムみたいに混乱してません。商品は棚かショーケースにあるし。彼らは「外貨ショップに行こう!」と、下心満載で提案してきたけど、やだ!と言ってローカルなお店を回る。ちきりんが買ったのは、トイレットペーパー、歯磨き粉、石けん、口紅などなど。

なんでって?

こういうもの買うと、その国の技術や消費生活レベルがすぐにわかります。それがおもしろい。

まあ、「これ、おみやげ」とか言われて、ソビエトのトイレットペーパーもらった友達は、無言であったけれども・・・


というわけで、午後いっぱいを3人ですごし、記念撮影し、私は暗くなる前に帰ることにした。「どこまで帰るの?」「コスモスホテル」「へえ〜すごい」「すごいの?」「すごいよ、僕たちは入れないんだ、あのホテル」「なんで?」「ルーブルでは払えないし、許可書もいるし」

ふううううううううううん。

アレク「明日も会える?」、ちきりん「うーん、明日はツアー」、アレク「今日も抜けてきたんでしょ?」、ちきりん「うん、まあ、そうだけど・・・」、「明日もここで待ってるよ!」、「うん、ああ、うん」

というわけで、明日も会う約束・・・でも、ちきりんはこの約束は守らない。こういう旅先で出会った人と「2回目に会う」ってのは、とても危険です。

今日はたまたまだから、向こうも何の準備もないし計画もない。でも、すでに彼はちきりんが「日本から飛行機に乗ってやってきてコスモスホテルに泊まるお金を持っている」とわかっている。カメラを持っていることも知っている。しかも、明日会うとしたら、それまでに彼は「いろんな用意」ができる。他の仲間を呼んでくることもできる。だから、ちきりんは「偶然会った人」とは話すけど、旅先で知り合った人と「2回目会う」ことはしないと決めている。

ちなみに「偶然2回会う」というのも信じない。ちきりんには「偶然」でも、相手は「必然として」2回もちきりんの目の前に現れているはずだ、と思う。このへんはさすがに気をつけないとやばいです。

というわけで、二日目、もし待ってくれていたら、ごめんねアレク!

★★★

で・・かなり充実した気分で家路(ホテル路)についたちきりんなのだが・・・この後、まさかあんなことが起こるとは・・・・全く予想していなかった。

ちきりんモスクワ訪問、最大の危機が!!



また明日(毎日いいところで終わらせる連ドラ方式でお伝えしております。悪しからず!)


続きはこちら → ソビエト旅行記その6