内容の難易と文章の難易

文章を書く場合、内容と書き方の難易を分類すると4種類あります。

(1)難しいことを難しく書く
(2)難しいことを簡単に書く
(3)簡単なことを難しく書く
(4)簡単なことを簡単に書く


ちきりんブログは明らかに (2)か (4)です。だって私は難しい文章を書けないから・・


たまに「難しいことを簡単にわかりやすく書いてる」と言ってもらえたりもするんですが、実は違います。私は本当に「難しく書くのが苦手」なのです。あえて簡単に書いているわけではなく、難解な文章は苦手で書けない、だけなんです。


書くだけじゃなくて、読解もだめです。難しい文章は理解できません。昔「一応、大学生だし」と思って、いくつかの古典的な哲学書や思想書にトライしたけど、全く理解できませんでした。あーゆーのがわかる人がいるってのは驚きです。

そういうのを読んで理解できないのは、それなりに「ショック」でしたが、でも、そこは実務家ちきりん。「こんなのわかんなくても生きていけるさ」と前向きに考え(?)すぐに本を放り出しました。


昔、実家に、父親が旧制高校生の時に読んだという阿部次郎の「三太郎の日記」。父に「これくらい読んどけ」と言われて目を通そうとしましたが・・・

ぜ〜んぜん、わかりませんでした。

「おとーさん、ほんとにこれ、高校の時に読んでたの??」って感じです。昔の高校生ってすごかったんですね。びっくりです


★★★


話を戻しましょう。四つのパターン。

(1)難しいことを難しく書く

これが、先ほどから書いている「ちきりんには理解できない世界」です。

なにが難しいのかというと、
・単語の難解さ
・抽象度の高さ
・止揚度の高さ
ですね。この3つが揃うとお手上げです。


これは「わざと難しく書いている」のとは違います。言いたいことをできるだけ正確に伝えるためには、表現が難しくなるんだよね。



(2)難しいことを簡単に書く

・単語に関しては、漢字や熟語を少なくして、説明的にするとわかりやすくなる。
・抽象度→できるだけ具体例を挟むと、わかりやすくなる。
・止揚度→止揚する階層をひとつづつ説明してくれると、わかりやすくなる。


こうすれば、内容は難しいけど文章はわかりやすくなります。その一方、デメリットもでてきます。それは、


・文章量が大幅に増える。
・具体例は、あくまで「例」であり、抽象度の高いことを具体的な「例」にするのは、それ自体が難しいだけでなく、絶対に「100%の例」にならない。すなわち、伝えたい内容に一部漏れや違い、が出てしまう。

「例で理解する」というのは、「ほぼわかる」ということであって、「完全にわかる」ということじゃないんです。

・止揚度は、階層を説明してくれれば、思考を追っていける。ただ、これは書き手に多大な手間と時間の投資を要求します。宇宙物理学者や哲学家が、素人にわかるように文章を書くために自分の研究時間を割くべきか否か、議論のわかれるところでしょう。

さらにいえば、すごーく難しい内容を簡単に書いてくれる人がいると、素人は嬉しいけれど、その嬉しさは「理解できた嬉しさ」ではなく、「理解できた気になる嬉しさ」にすぎません。そこにどんだけの価値があるのか、というお話。



(3)簡単なことを難しく書く
「人を欺きたい」という目的がある時によく使われます。欺きたいパターンは2種類。

・自分がすごい人なのだ、と欺きたい。
・内容が正しいのだ、と欺きたい。

の二つです。妙な新興宗教の奥義書とか、左翼(崩れ?)の人の文章とかね。圧倒的に「わけわかんない」けど「不要に難解」で、かつ「かなり、うさんくさい」文章です。


(4)簡単なことを簡単に書く

これは子供の日記です。朝起きました。ご飯を食べました。プールに行きました。みたいな・・


★★★


佐藤勝彦さんという物理学者の人が本を書いてて、「相対性理論を楽しむ本」とか「最新宇宙論と天文学を楽しむ本」とかいうのがあります。これ、驚きです。ちきりんでさえ「相対性理論が理解できたっ!」って気になります。

でも、それはやっぱり錯覚です。理解できたのではなく、簡単に書いてくれると「理解できた気になる」(んで、嬉しい)。

ありがたいが、罪作りな気もします。

ちきりんが、こんな本を高校生の時に読んでいて「相対性理論おもしろいっ!」とか思って物理学科にでも進んでいた日には、落第に落第を重ねて、今頃どーなっていたことやら・・


まあでも、これだけわかりやすく書けるのは大変な才能だとは思いますが。



ところで、難解な文章の読解力は、やっぱ、世代を追うごとに落ちている気がする。父の方がちきりんより圧倒的に読解力があったとはなかなか信じがたいですが、父の方が明らかに難しい本を読んでます。


やっぱり昔は、
・同級生がみんな読んでるから、見栄はって無理して読んでるうちに、理解できてきた。
ってのと、
・議論しながら読んでいるから、皆で議論してる間に理解できるようになる、ってのもあったんでしょう。


そう、ちきりんが難解な文章を読み込めないのは、時代と友人のせいだっ!



・・・こーゆー開き直った態度が・・・進歩のない理由でしょう。


ではまた明日



超わかりやすいです(キンドル版もでています!)

「相対性理論」を楽しむ本―よくわかるアインシュタインの不思議な世界 (PHP文庫)

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