メモるべきはインプットではなくアウトプット

昨日メモの取り方についてつぶやいたのですが、けっこう大事な話をしてるので、補足や、その後にいただいた質問への回答を含めまとめておきます。

まずはテキスト抜粋版から(自分のツイートなので、読みやすいよう改変してます。実際のツイートは後半に貼っておくので、RTしたい方はそちらをご利用ください)

★★★

あたしはメモはとるよ。

てか、メモらないとすぐに忘れる。「最近は」なのか「昔から」なのかよくわからないけど、メモらずに(大事なことを)漏れなくぜんぶ覚えておける人ってすごいと思う。

一方、対談とかインタビューを受けると、ほぼ100%録音されるんだけど(もちろん許可をとって)これは本当に意味がわからない。

あたしは自分が取材をする側、インタビューする側の時は、いっさい録音しない。

理由は、録音データをあとから聞いたり(文字興しされたものを)後から読む時間が無駄だから。

インタビューや取材は、してる間に「どういう記事にするか」を頭の中で考え、そのアウトプットイメージをメモにとります。


ここで大事なのは、「メモを取る」のは、相手の言ったことを書きとめる、のではなく、
「相手が言ったことにたいして、自分が感じたこと、考えたこと」をメモに残す、ということ。

つまり、メモるのはインプットではなく「アウトプット」イメージ。

そうやって取材中やインタビュー中に「アウトプットイメージ」をメモっておけば、あとからアウトプット(ブログ記事や本の原稿)を書くのはめっちゃ簡単。


ちなみに、これまで受けた数多のインタビューや対談において、録音しないライターさんには会ったことがないので、おそらく私の慣習は「文筆分野」においては例外的なんだと思う。

でもビジネス分野においては、取引先や上司などの会議で録音する(できる)ことはほとんどない。基本、機密事項だからね。

このため 文筆分野よりビジネス分野での経験のほうが圧倒的に長い私にとっては、「録音なんてしない」のが普通。


ちなみに先ほど書いた、「取材や講演など、誰かの話を聞いている時に、相手の言ったこと=インプットではなく、それを聞いて自分が考えたこと=アウトプットを、その場でメモる」というのは、けっこう高度なビジネススキルで、このスキルもってる人は多めに見積もっても1割強しかいないっぽい。

なので、このスキルを身に付けるだけで「トップ10%くらいの仕事の早い人」になれる。

難易度がすごく高いわけじゃないけど「インプットではなくアウトプットをメモる」という概念を知らない人がまだまだ多い。


また、「インプットを聞きながら、そのインプットから(自分のアタマで考えた)アウトプットを(その場で)メモる」ためには、「インプットをアウトプットに変換するスピード」が非常に重要なんだけど、このスピードを上げるにも相当の訓練が必要。

この訓練が先日からよく呟いてる「自分の意見を考える訓練」で、「他者の意見(=その人が考えたこと)への反応」ではなく、「自分の意見」をすぐに考えられるか、が問われる。

以上、めっちゃ大事な(役立つ)スキルについてのお話でした。

★★★

ツイートは以上ですが、少し補足しておきましょう。

まず、
取材時に相手の許可を得て話を録音することには、大きな意味もあります。

たとえば、徹底した取材に基づき、臨場感に溢れる小説を多く書かれている(私も大好きな!)山崎豊子さんのインタビューテープの中には、

今は亡き中国共産党幹部の貴重な肉声証言なども含まれており、録音データが後々貴重な歴史的資料となる、といったこともあるからです。

この本を書く準備として、山崎さんは中国共産党幹部から庶民まで、中国でも膨大な取材をされており、それらの録音テープが残されています。

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もちろん、「相手の発言を一言もらさず聞き取り、後から何度も聞き返してその意図を熟考する」といった目的でも、取材やインタビューを録音する意味はあると思います。

ただ、「録音しても、テープ起こしされた文章をさっと読みながら原稿を仕上げる程度」の取材であれば、わざわざ録音したり、テープ起こしを(依頼)して後から文章を練るより、

最初から「インプットを聞きながらアウトプットをメモってしまう」ほうが圧倒的に生産性が高いと思います。

特に、ごく短い記事にしかならない場合でさえ、いちいち録音されるのは、
「本当に録音が必要だから」ではなく、
「取材は録音するものだ」という固定観念に囚われ、「本当に録音することが必要なのか?」と一度も自らに問わないまま(つまり思考停止して)慣習的にそうやってるだけなのでは?

という気がしてる、という話でした。

★★★

あと、「読書というインプット作業をしている時には、どんな形でメモをとるのか?」といった趣旨の質問への回答も載せておきましょう。
 ↓
本を読んでいる最中にメモを取ることもありますよ。

でももちろん、メモに書くのは「その本のその部分を読んで、自分の頭で考えたこと」です。

メモが多くなる本はいい本です。それは「良いことがたくさん書いてある本だから」ではなく「考えるきっかけをたくさん与えてくれる本だから」

それに、そもそも本を読むとき「インプットを得たい」と思って読むことことはほとんどないんだよね。

「新しいインプットを入れれば、何か今までは考えたことがなかったような新しいことが考えられるんじゃないか。ワクワク!」と思うから本を読むわけで。

自分が本を書く時も「ハイライトされる文章をたくさん書きたい」とか思わないよね。むしろ「ちきりんの本は読むとすぐに自分の頭で考えたくなってしまう」と言われる本が書きたい。ブログも同じ。


というように、私も本を読みながらメモを取ることは(もちろん)よくあるのですが、いわゆるハイライト(本に線を引く)はほとんどしません。

そうではなく、本の中の文章を読んで考えたことをポストイットに書き、その文章の部分に貼り付けます。つまり、ここでも「メモ」は、その文章(本)を読んで自分が感じたこと、考えたことなんです。

読む本が電子書籍になってからは、本を読みながら(考えたことを)そのまま電子メモに口述筆記しています。

で、後からそれをブログなどに仕上げます。めっちゃ効率いい。

★★★

もうひとつ。

最後のほうで呟いている「インプットからアウトプットへのスピードを上げる方法」について、下記のような質問もいただいているんですが、


答えは下記の本に書かれています。読まれた方はすぐに分かりますね。『思考の棚』です。

自分のアタマで考えよう
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下記の方がまさに「完璧な回答」をくださってます。(私の本を)ここまでしっかり読み込んでくださってありがとうございます!


「インプットからアウトプットへのスピードが速い人」について、「頭の回転が速い」と評する人がいますが、上記の本に書いた通り、それ「回転が速い」のじゃありません。単に「思考の棚を作って、既に考え終えてるだけ」なんです。

まっ、その部分については本を読んでもらうとして、今日のメッセージは、

「メモをとるとき、相手が話してることを書き留めるのじゃなく、相手の言ってることを聞いて自分が感じたことや、考えたことを書き留められるようになれば、生産性が圧倒的に高くなるよ」というお話でした。

「自分も練習したい!」という方、「講演を聴きながら、取材をしながら、会議中にアウトプットメモをとる」のは難易度が高いので、最初はじっくり時間をかけられる本で、「読みながらアウトプットメモを取る」練習を始めればよいと思います。


そんじゃーね!

★★★下記は実際のツイート★★★