一生でできること(信じがたい)

澁澤榮一(渋沢栄一)ってご存じですか?

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

Kindle版
楽天ブックス


彼の家(邸宅!)があった飛鳥山は今は公園になっていて、記念館ができてます。

飛鳥山公園って広大で、あれが私邸だったなんてスゴイです。


渋沢栄一氏は 1840年生まれ。天保11年。江戸時代末期ですね。

埼玉の生まれで、生家は「藍染めもの」の商家。

まあ、田舎の小金持ちって感じ?

ここまでは普通。で、大人になってからの軌跡をたどると・・・


(1) 幕末に最後の将軍、一橋家の徳川慶喜に仕官。最後の将軍に関する著作もあります。

(2) その命でフランスのパリ万国博覧会に行ってます。1867年にパリ!

(3) 明治 2年に、明治政府の「民部省租税正、民部省改正掛掛長」になってます。
日本に初めて近代的な「官僚組織」ができたのが明治ですから、彼は日本最初の「国税局長」って感じです。

(4) 明治 3年に、富岡製糸場設置主任。明治の殖産興業の中心工場を創立した責任者です。

(5) その後、大蔵省関係の仕事に移って銀行条例を制定し、「第一国立銀行」を設立、総監役に就任しています。最初の国立銀行の頭取。てか銀行制度を作った人ですね。

(6) 東京商法会議所も作り、会頭等に就任してます。今で言う「経団連会長」でしょうか。


ナンバーふってるとキリがないので、以下はドットで列記。

・東京銀行集会所の創立委員長です。手形交換所も。すなわち銀行の決済システムを作った人ね。
・東京証券取引所も設立しました。
・東京瓦斯会社創立委員長です。東京ガスですね。それを創立、と。

・日本郵船会社設立、東京人造肥料、日本土木(大成建設の前身)、東京製綱、京都織物、日本煉瓦製造、帝国ホテル等も設立です。
・ええっと、京阪電気鉄道、名古屋瓦斯、中央製紙、東京毛織物、明治精糖「等」も設立しました。

・ええい、まだまだ! 帝国劇場、日本皮革、日本化学工業、日本自動車「等」も設立!!
・王子製紙の会長と、石川島造船所の会長と、東京瓦斯の会長と札幌麦酒の会長「など」を兼任してます。
・明治 33年、60才で男爵を授爵してます。


(7) 日本女子大を開校しました。後に校長。
そのほか・・・
・理化学研究所創立委員長
・東京女学館館長(前身の女子教育奨励会の設立)
・東京商法講習所(今の一橋大学)設立の他、今の東京経済大学の設立や早稲田大学の創立にも関わってます。


(8) 東京市養育院(貧困者の養護施設)の設立、日本結核予防教会の設立、東京風水害救済会設立、中央盲人福祉協会会頭、中央事前協会会長などなど福祉系、医療系の団体創設多数。


(9) 日米協会設立、日米親善人形歓迎会(日本とアメリカで人形を交換し、文化交流をしようという有名な国際交流運動)開始、日華実業協会会頭、排日問題の話し合いに渡米などなど、外交関連努力多数・・・


(10) その他・・・都市計画プランを練り、現在の田園調布を設計などなど。


亡くなられたのは、1931年、昭和 6年で享年 91才。

どう??

「ホントにひとりの人間が、一生の間に、こんな沢山のことができるの?」

ってくらいたくさんのことやってますよね。

91才まで生きたとはいえ、
いくら一日の睡眠時間が短かかったとしても、この

「新日鐵以外は全部オレが作った!」みたいな仕事ぶりはちょっと異常。

もちろん「名前だけ」の役職も多かったろうとは思いますが、それにしてもすごい。

しかも何度も「船で」(←飛行機じゃなくて)欧米に行ってるし。

忙しすぎない?


正直言って今の世の中だと、どんなに才能に溢れていても、これだけのことを一人の人が成し遂げるなんて無理だと思います。

たとえば、松下幸之助さんが松下電産を作りました、と。一人であんな会社作っちゃうなんてすごいんですけど、それでも「たかだか一社」です。

何社もの創立に関わり、銀行から証券取引所から大学から福祉施設まで作って、実は幕府最後の将軍にも仕えてて、外交もやってって・・・えっ? って感じです。

個人の資質だけの問題とは思えません。何かの環境条件が違うからこういう人があり得たのでしょう。

個人の資質もさりながら、特定の時代背景がなければこんなことはあり得ない、と思えます。


エジプトのピラミッド初め、古代遺跡にも「今は作れない」ものが沢山あります。

それは「毎日何人も死んでも、その人数さえ気にする必要がない」という奴隷がいなくなったからです。ああいうのは、「価値のない命が無尽蔵にある時代」だったからできたことなんだよね。

そういう条件が、この場合もあったんじゃないかな、と思います。

「圧倒的な権限を持つ少数のエリート」と、「無思考に従属するスタッフ」、「大半の、無教育な庶民」という組み合わせが前提として存在し、その上でこういうすごい人が現われる。

そうでないと、一生で一人の人がここまでできるとは思えない。

って感じでした。

ちなみに彼の本のタイトルにある「論語と算盤」とは、論語=道徳や倫理、算盤=そろばん=お金勘定とか利益を生むことを意味します。

つまり、「正しい資本主義」を主張した人だってことなんです。

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

Kindle版
楽天ブックス


ではね〜

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/