ダイソンの功績

掃除機が壊れた。家電の壊れる時期のちきりん家です。
まだ動くんだけどね。スイッチのある手元のプラスチック部分が割れ、スイッチを入り切りするたびにその割れ目をパチンとあわせないといけない。

ちきりんは花粉症なんで、できれば排気がきれいであの時期に窓を開けずに掃除機がかけられるようなのにしたいな、と前々から思っていたので、現在買い換えを検討中です。


家電ってのは過去10年くらいですんごい変わりましたね。何が変わったって、まずは「日本企業が生き残る」ということが決まった。(決まった??)

皆さんよくご存じのように、戦後の高度成長の中で、日本の家電メーカーは世界を席巻し、アメリカなどの家電メーカーは軒並み「消失」しました。GEとかフィリップスとか、ごく一部の大企業を除いて、消えちゃった。

その後、“同じコト”、いや、“同じように見えたこと”が起こった。日本のメーカーも、プラザ合意以降の急激な円高の中で「韓国・中国メーカーに負けて、日本家電メーカーは無くなってしまうだろう」と言われ始めたのだ。

日本メーカーが欧米メーカーを駆逐してしまったように、日本メーカーも新しいプレーヤー達に駆逐されてしまう、と多くの人が考えた時期があった。

ちきりんも(ほんとに恥ずかしいのだが)短絡的にも「そうなるかも」と思っていました。ところが、全然違う動きが起こった。

「技術革新をおこし、お客が驚くような新製品を出せば、マーケットが変わる」というマーケティングの教科書が新しいチャプターを加えなければならないような「きれいな」事象が起こったわけです。

というわけで、今でも日本の家電市場では、日本メーカーのものしか売れないくらいの状況で、液晶やプラズマのテレビ、乾燥も一体型のドラム型の洗濯機、フロンのでない消費電力の超低い冷蔵庫、10年もフィルター掃除不要のエアコンなどが現れたわけです。

★★★

一方で、家電は「ものすごい複雑になった」と思います。これは上記の「きれいな現象」の副作用だと思う。

昔は掃除機買うなんて簡単だった。ところが今は、“たかが”掃除機を買うのに、パソコンを買う時と同じように、ネットやらなんやらで各商品を比較し、自分のニーズと商品の機能をマッチングさせ、などの比較検討が必要になってしまった。

今、大きな量販店にいって「掃除機ください」なんて言っても話が通じません。質問攻めにあい、自分のニーズを超クリアにしてはじめて「じゃあ、このカテゴリーですね」と言われ、そこからまだ6個も7個もの商品の比較をしなくちゃいけない。

難しすぎるって!!

しかもこんなデータまである(下記)。ネットのおかげで「どうしよう?」と思う消費者は「掃除機を買うために勉強が必要」という「なんやねん?」の状況に追い込まれた。
(国民生活センターの比較レポート)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20060406_1g.pdf

★★★

話をもどそう。上に「技術革新でヘゲモニーを取り戻した日本家電メーカー」という話を書いたが、「やっぱりすごいね、日本企業!」ということでもない一面がある。彼らはそれに「独自に」気が付いたわけではない。

ちきりんが理解するに「高い家電が売れる」ということを証明したのは、日本メーカーではなく、ダイソンだ。日本メーカーは、ダイソンの掃除機に大衝撃を受けたのだ。「なんで8万円の掃除機が売れるんだ?」と。

今でこそ各社のサイクロン掃除機は5万とかしますが、ダイソンがでてくるまでは全部2万円以下だった。しかも、各メーカーはコスト削減、価格低減のために日夜血のにじむ努力を重ねてた。そこに8万円の掃除機が現れ・・・売れまくった。

欧州の家電で、高いのはこれまでもあった。しかしそれらは「デザインが素敵」という路線だった。家電にもデザインを求めるセグメントは一定数ある。

しかし、日本メーカーはこの方向には動かない。当然だ。彼らは「デザイン力」で勝とうという会社ではない。それは欧州メーカーに任せておけばよい。「あれは違う市場」と位置づけた。

だが、ダイソンは違った。「機能で高く」の路線だった。「技術で」だった。これは日本メーカーショックを受けた。「それは日本企業がやるべきことのはずやんか!」と。

そして、掃除機だけでなく、すべての家電の「高機能化」が始まった。ダイソンは掃除機市場を変えただけではない。この掃除機の出現を通して、松下もシャープも東芝も気が付いた。「高くても機能が圧倒的であれば、日本の消費者が選ぶようになっている。」と。

そこからなのだ。クーラーも洗濯機も、すべての家電が高機能化し始めたのは。

ダイソンさん、ありがと〜、って感じだろう。韓国・中国メーカーに押されて「消失するはずだった」メーカーの多くが生き残る活路を見いだした。



今、日本の家電メーカーがあるのはダイソンのおかげ、くらいの感じだと思います。いや、まじで。

こうも言える。韓国や中国の家電メーカーは、ダイソンのせいで世界の家電市場のトップに君臨する夢を打ち砕かれた。半導体でサムソン電子が成功したのとは対照的だ。最後の勝負は自動車市場だろう。(話ずれすぎ・・)

それくらいダイソンのクリーナーはインパクトがあった。まさに「サイクロン」だ。

★★★

再度、話を変えよう。ちきりんは欧米でホテルに泊まることが多い。一日中部屋にこもって仕事をしている。お掃除の人がやってきて、ちきりんが部屋にいる間に掃除するのだが、最後に「掃除機をかけますか?」と聞いてくる。

掃除機をかけると音やほこりがでる。だから許可を求めるわけ。その時の英語が、米英で異なる。

「今、掃除機かけていいですか?」って皆さん、なんて訳しますか?



米国だとたいていが「Can I “バキューム”now ?」と言われます。バキュームってのは吸い込むってこと。掃除機はバキュームクリーナーだから、まあこれは普通。

しかし、イギリスだと「Can I “フーバー”now ?」です。フーバーってご存じでしょうか。もともとアメリカの家電メーカーだと思うのですが、イギリスではフーバーと言えば掃除機、掃除機と言えばフーバーというくらいになった有名掃除機です。

まんまるい掃除機で、下が黒、上が赤、その赤の部分に大きなおめめのついたかわいい掃除機が人気。あと縦型の、ゴミパックがタコのように拡がる形のもあります。

日本のwikiには乗ってなかったけど、英語のwikiには載ってました。

In Britain Hoover has become so associated with vacuum cleaners as to become a genericized trademark. The word "hoover" (without initial capitalization) often is used as a generic term for "vacuum cleaner". Hoover is often used as a verb, as well, as in "I've just hoovered the carpet".
http://en.wikipedia.org/wiki/Vacuum_cleaner


でも、いまやイギリスの掃除機と言えば、ダイソン!

なんだけど、ちきりんが「Can I “ダイソン” now?」と聞かれる日はないと思う。多分22世紀になんないと無理だと思う。


あとね、日本のメーカーはあれこれ作ってるから「Can I ナショナル now ?」ってのも、ないよな〜と思った。一種類しか造らないメーカーじゃないとこういう言い方をしてもらえないのよね。

ふーむ、ホント余談だわ。



ええっと・・ほんとは、どんな掃除機を買うか検討中で、それについて書きたかったのですが、長くなったのでもうやめます。


じゃ!