誰にやらせて誰を守る?

近くのスーパーやコンビニ、飲食店のバイト募集を見ると、時給は低くて800円、高くて1200円かな。

さて、時給1100円で一日8時間、朝9時〜6時半まで働くとしましょう。昼休み1時間と休憩30分を含み、9時間半の拘束。バイト先まで30分かかるとすれば、日々の拘束時間は8時半から19時までの合計10時間半となる。

これで1100円×8=8800円。月に21日(土日祝日分で、月9日お休み)働くと、18万4800円。年収だと221万7600円。もし時給が900円だと年収は181万円ちょい。

なんの税金も社会保障も引かれないと仮定すると、上記が手取り。実際には全く何も引かれないってことはなさそうだけど。

★★★

東京だとしましょう。都心まで住宅地で駅から徒歩圏、家賃、管理費込み8万円でお風呂付きかな。(30分で仕事場に行ける、という前提だから、素敵なマンションではありません。ただし通勤時間を1時間にすれば6万円で探せそう)

光熱費は、電気、水道、ガスで合計5千円くらい。電話は携帯だけで月に4千円。ブロードバンドでネットを利用すると加えて3千円。計1万2千円。

食費は一日千円としましょう。ランチはバイト先近くのファーストフード店で500円以内ね。朝のパンと牛乳が200円。夕食は300円で適当に自炊。贅沢をしなければ材料費なら300円でもなんとかなるかなという仮定。

毎日一本だけ発泡酒を飲む。120円。他の酒、煙草はなし。
ここまでの食費の月額が、34720円。

生活雑貨(トイレットペーパーやシャンプーや洗剤などなど)が月5000円としましょう。

地下鉄とバスを使うので、一日250円×往復の500円で、25日分として、12500円。家に洗濯機がないので、週に一度コインランドリーで洗濯と乾燥。一回に400円かかるので月1200円。

月に“一度だけ”友達と飲みにいき、超安い居酒屋で3千円。
月に“一度だけ”DVDを借りてきて映画を観る。300円。
月に“一冊だけ”漫画雑誌を買う。300円。

ここまでで、月14万9020円×12ヶ月=178万8240円。

★★★

健康保険は地域によるけど3千円くらいだとして年3万6千円。

年金は月に1万4千円だっけ。年16万8千円。あわせて20万4千円。

これを加えると、年199万2240円。

★★★

・年に1万円だけ、洋服を買う=ユニクロだとGパンとTシャツとシャツくらい買えるかな。翌年は、靴下、下着と、トレーナーを買うという感じか。
・3ヶ月に一度、1500円の散髪に行く=6千円。
・年に一度だけ、風邪をひいたりケガをして薬を買う=2千円。

ここまでで生活費合計=201万円。

時給1100円だと、年収221万7600円なので残金が21万円。時給900円だと181万円なので、20万円の赤字です。その間に「最低限の生活に必要な時給」があるってことね。

★★★

上記には突発的な支出は何も加えていない。PCや家電や家具を買ったり、帰省を含めて旅行をしたり、友達の結婚式も送別会にも行っていないという前提だ。

もっと重要な前提は、病気もせず毎日きちんと働いているということ。有給休暇もGWもお盆や正月休みもカウントせず、毎月21日間コンスタントに働いており、かつ、“仕事がある”=一日も仕事にあぶれていない、という前提です。

一日の拘束時間は10時間半ですが、これも片道30分で職場にたどり着くという、かなり甘い前提のもとでこの拘束時間です。

当然一人暮らしで、子供であれ親であれ誰かを養うのは無理そう。賃貸に住んでいるが、2年に一度の“更新料”として家賃分が必要。この1年4万円分は、何かを切りつめて(何を??)捻出しなければならない。

娯楽も最低限だ。月に一度DVDを借りてくる。月に一冊マンガを買う。月に一度だけ飲みに行く。毎日発泡酒をあける、だけ。世の中で話題の娯楽施設に行くこともないし、話題のお店でご飯を食べたり、ということもない。

★★★

たとえば更新料が払えずに家をでると、ネットカフェに寝泊まりすることになる。一日千円で泊まれるとしたら月に3万千円でいい。家賃や光熱費、雑貨費等の分6万円ほどが浮く。これは大きい。

しかしタマにサウナにいったり、横になりたくて月に2度ほどカプセルホテルに泊まれば、また、夕食の自炊ができなくなることを考えると、差し引きで月4万円くらいの余裕しかできないだろう。

“リクライニングの椅子で寝ることと引き替えに、4万円手に入る”ってことです。

効率的なのは「ルームシェア」だ。同じような時給で働いている外国人の大半は一人で住まずルームシェアしてる。日本人同士だとなぜだか少ないみたい。なんでだろ?実際には寝に帰るだけなのだから、部屋は共有すればいい。そうしたら「横になって寝ることができて」4万円くらい浮くだろう。

もし一度ネットカフェ暮らしになったとしよう。東京の場合でもアパートを借りるのに家賃の3倍は必要だろう。24万円。関西など別のシステムのエリアではもっと必要かも。

★★★

今日はちきりんは何を書いているのかって?

ちょっとビビッドに理解したかっただけよ。フリーターで生きるってどういうことか。こんな時給ではやっていけない。細かく計算するとよくわかる。

今日生きるのがせいいっぱいであり、なんの“のりしろ”もない生活だ。緊急への備えも、将来への投資や貯蓄も、結婚したり子供を持つなど人生を築いていくための経費もない生活、だ。

★★★

アメリカは負け組にこれらの仕事、こういう生活をやらせ、勝ち組が守られる。欧州先進国の場合は、移民にこれらの仕事・生活をやらせ、自国民を守っている。日本は若者にこれらの仕事・生活をやらせるという選択をし、中高年を守った。


なくせないよ。こういう仕事も、こういう生活をする人も。


誰にやらせて、誰を守るのか、という選択なのだ。



ちなみに、どの国も「反対方向の社会保障制度」を持っている。アメリカは金持ちが貧困層に寄付をする。欧州では宗教やNPOに参加する余裕のある人たちが移民の子供達を支援し、日本では若者に守ってもらった中高年が、自分の子供を家に同居させて救う。




ふうん。


じゃね。




貧困大国ニッポン―2割の日本人が年収200万円以下 (宝島社新書 273)

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