ちきりんは今回の旅行で初めて、「アメリカ大陸の国ってのは、移民の国なのだ」と実感しました。
これ自分でも不思議です。だって、移民の国と言えば誰もが最初に名前を挙げるであろうアメリカに、ちきりんは何度も行ってます。なのにアメリカで意識しなかった「移民の国」をなぜブラジルで強く感じたか。
まず考えられる理由は「日系移民の方と話す機会が多かった」こと。これは明らかにそうだ。しかし、これ自体がなんで?って感じ。
だって、ちきりんはカリフォルニアに2年住んでいる。その間、大学院の同級生に日系人の三世の人もいた。彼らとも話はしたはず。
なんだけど・・・全然違う。
何がちがうの?
アメリカの日系人の人は、自分たちを強く「アメリカ人だ」と思ってます。その上で「ルーツは日本なんだよ」というのが彼らのアイデンティティでした。
今回ブラジルで会った人たちは反対だった。彼らはまず「私たちは日系人です」という。そして次に「ブラジル国民です、もちろん!」という順番。
なんで、そういう意識の違いがあるか?
ちきりんの仮説は、「アメリカの方が、差別が激しいから」ではないかと思います。差別されないように、アメリカへの忠誠心を疑われないために、アメリカへの一体感を表明するために、「オレはアメリカ人である!」とことさらに言うのかな、と思った。
そして後から「誰にだってルーツはあるはず」という意味で、「ルーツは日系」と言うのだ。白人に対して「あんたのルーツはイギリスでしょ」という意味で。
★★★
じゃあ、なんでブラジルの方が差別が少ないのか?
移民元の国(の力関係)が“よりバラけている”からだと思う。ドミナントがいないのだ。ブラジルはポルトガルが宗主国というけど、ポルトガル人ルーツの人がこの国の経済や政治やを独占しているわけでも人数的に多いわけでもなさそうだ。
イタリア移民、ドイツ移民もかなり多いし、もちろん日系も多い。そして大事なことは、誰もヘゲモニーを独占していない。ブラジルは「本国人がいない移民だけの国」なのだ。
だから皆、わざとらしく「オレはブラジル人だ!」「オレもオレも!」と言い張る必要がない。一方のアメリカには“本国人ぽく振る舞うグループ”がある。そしてそれ以外の人(非主流の人達)は常に「お前は本当にアメリカ人なのか?」と問われている。疑われている。そういう国なのだ、あそこは。
と今回ブラジルに行って気がつきました。
★★★
さて、そういうわけで、今回多くの日系移民2,3世の方とお話しました。日本語がすごく丁寧(言葉として進化しておらず、昔の日本語のまま)等はまあ想定内。それ以外のことで、おもしろかったのは・・
(1)A氏(幼少の頃に両親と移民で来た人)は、異常に「日本」への「誇り」をお持ちでした。だって「この国ではどんな車が売れてるんですか?」という質問に「トヨタ、本田、日産です!」って。
ちきりんが見た感じ、一番売れてるのはフォルクスワーゲン、次がルノーかな。アメリカ車もあったし。日本車ではタマに本田と三菱(コレが多い)を見たけど、トヨタ車なんて全然見かけなかったよ。
なのにA氏力を込めておっしゃる。「お金ができれば皆トヨタを買います!」
うーん、妄想だと思う。
A氏曰く「韓国の車は一年すると必ず壊れる。全然だめです。」
うーん、嘘だと思う。
それくらい思い入れが強いというか、祖国が強いことが誇りなのだと思います。ありがたいことです。
★★★
(2)A氏含め、6−7名の方と話しましたが、ほぼ全ての方がブラジルの将来について「明るい」とおっしゃってました。
これは、エマージング投資にかなり踏み込んでしまっているちきりん的には貴重なお話。しかし、なんといっても彼らは既にブラジル人。基本が楽観的だからな。本当に将来明るいのか、彼らの頭の中が明るいのか、その辺が判断に迷うところだ。
「なぜ将来明るいと思うのか」と聞くと、基本は「土地がある」ということのようだ。国土が広いということね。
まあこれは一理ある。この前も書いたように、これからは資源と自然だからね。とりあえず土地がでかいだけで有利だ。
ただね、日系移民博物館で見かけた非常に含蓄のある説明が下記。
ブラジルは土地が広大であり、収穫を増やすことは、すなわち開墾する土地を拡大することと同義であった。そこに移民した日本人は“狭い土地の生産性を高めて収穫を増やす”という概念を持ち込んだのだ。
これ、なるほど〜とうなってしまいましたよ。倍の土地を耕せば収穫が倍、というのがブラジル人のやりかたなのだ。これって「土地が広いから将来有望」という理屈と極めて似ている。
実際のところ、ブラジルが将来有望なのかどうか、よくわからなかったです。人口が伸びているのはよい。土地が広いのは非常によい。しかし、中国やベトナム、インドなど、アジアの急成長国で感じる熱気というか高レベルのエネルギーみたいなものは感じにくい。
その理由も「土地が広い」ことだ。人が固まってないから。あと、基本が「ゆっくり」「ゆったり」だと思う。あんまアクセクしない感じだ。本当にこんなんで将来有望なの?とも思う。
★★★
(3)B氏は、両親二人が移民してきて、子供が7名生まれ、その7名から今のところ13名の子供がうまれている、と言っていた。これはまだ今年中に2人増えそうとのこと。
すごいよね。3代で、2人が15名になった、ということです。日本で、こんな増え方している家少なくないですか?
例えばちきりんの場合、父方のおじいちゃん、おばあちゃんから生まれた2代後(ちきりんの代)の子供は5名です。2名→3名→5名。母方も2名→4名→6名です。うちは少ない方とは思うが、それにしても、2名→7名→15名って。
じゃあ日本人だらけになるのかブラジルは!というと、違う。他の人たちはもっと増えているんです〜。「6人生まないとブラジル人じゃない」と言われるらしい。すごい〜。
★★★
(3)日系の方が、日本人旅行者に極めてやさしい。
これは驚きました。感激しました。私たち日本にいる日本人は、彼らが日本に出稼ぎに来て滞在している期間中、こんなにやさしく彼らに接しているだろうか?
多くの人が、無関心という種類の、極めて冷たい対応をしていると思いません?もしくは、関心を持たざるを得ない人たちも、あんなに暖かく接しているのだろうか?
無関心だったのはちきりんだけなのか???
ちょっと反省したよ。これからはちょっと考え、行動をあらためたいです。
★★★
最後に、ちきりんがC氏のご両親について「ご苦労されたのでしょうね」と言ったのに対して、C氏が言った言葉。
「そうですね。まあ、あの時代はどこにいても大変だったでしょう。」
この発言でちきりんはあることを思い出した。障害児支援のボランティアをしている時に、とあるお母さんにちきりんが「大変ですね」と言ったのだ。その時、そのお母さんがにっこり笑って教えてくださいました。
「子育ては大変なものなのよ」と。
そうね。
そうですね。
なんで、私は成長しないかね?
んじゃね!