最初は10歳以下の子供にむけて「あなた達の将来はね!」という話を書こうかと思ったのだけど、どう考えても「このブログを読んでいる10歳以下の子供」は多くないかも、と思い直しました。
寧ろそのくらいの年の子供がいる、という人のほうが多いかも、ということでタイトルを変えました。
今日の日経トップ記事は“日産が中国で2割増産。ホンダも設備増強。日本車各社が一斉に中国事業を拡大する”という記事。一面以外でも“カネボウ化粧品、中国に専用ブランド投入”という記事も。
またミニコラムでは日本総研の寺島会長の“ブラジルに日本の新幹線を売り込む際には、建設に関する専門性も訴えて欲しい”が“建設業界は海外で人材不足に悩み、海外事業拡大に慎重だ。「大型プロジェクトを管理できる人材を育てるべきだ」と建設業に発破”という話が紹介されています。
これらはすべて同じ流れの話です。
基本的に今後、「市場としての日本」は全く将来性がありません。
唯一、日本において将来性のある市場は高齢者向けの市場、医療や介護市場だけであって、いわゆる壮年、若者が主に購入する財&サービスの市場規模については、(移民を入れるという判断をしないかぎり)今後、“原則として右肩下がり”が確定しています。
壮年、若者が主な購入者である財&サービスとは、飲料や食料品、お酒や外食産業はもちろん、アパレル、靴などの衣料品、学校や塾や文房具などの学校関係サービスと財、映画やゲームなどのエンターテイメント全般、雑誌や新聞などの紙もの全部、車や家電など、家やインテリア関係、などなど。つまり“ほぼ全部”です。
人口が減っても「一人当たりの消費量が多くなる商品やサービス」であれば売上げは維持できるかもしれません。
しかし現実的には、「一人当たり消費量」が伸びるものはほとんどないでしょう。若者が今までよりも、より多くの食料を買ったり、より多くの酒を飲んだり、より頻繁に旅行をしたり、より高い車を買ったり、しないでしょ。
今の若者は昔の若者より稼ぎが悪く、昔の若者より将来に悲観的なため、節約意識も高いです。
彼らが「今後消費を増やすもの」の大半は、ベンチャーや海外企業が提供する格安、もしくは無料のネットサービスのようなものばかりであって、それらは既存の財やサービスの“より安い代替品”として消費が伸びるだけです。
というわけで、生産人口の急速な減少とともに、「市場としての日本」は縮小を始めます。企業にとって「市場が縮小する」とは「売上げが落ちる」ということであり、「売上げが落ちる」とは「経費も落とす必要がある」ということです。
企業は、売上げが 5%落ちれば、社員の給与を5%下げるか、社員のうち 5%を解雇する必要があります。そして、「毎年毎年○%縮小する日本市場」で商売をすることは、「毎年毎年、社員の給与を○%落とす」か、「毎年毎年、社員の○%を首にする」ことが必要になります。
まともな企業なら、当然「これはやばい!」と思い、手を打つことになります。打つ手は明確です。「日本国外にいる人に買ってもらう」しかありません。
それがどこかといえば、「できるだけ若い人の数が多く」「一人当たり所得がまだ伸び続ける」国で、できれば「日本ブランドが生きる国」です。つまりそれがインドとか中国、インドネシア、また日系人が多いペルーやブラジルなのでしょう。
今 10歳以下の子供達の多くは、将来は「インド人に車を売る」、「中国人に化粧品を売る」、「ブラジルで工場立ち上げの支援をする」ような仕事に就くことになるのです。
彼らの親の世代がこれまで「日本で、日本人にものを売る、日本で、日本企業向けにサービスを提供する」仕事に就いていて、かつ、そういう仕事をやっていればどんどん給与が上がってきたのは、
「日本が市場として成長していたから」です。しかし皆さんのお子さんには、そういう将来は用意されておりません。
彼らが大人になった時に、就ける仕事というのは下記しかないんです。
(1)日本で高齢者向けの仕事(医療関係か介護関係など)に就く。
(2)インド人や中国人に消費財や消費サービスを売る仕事に就く。
(3)インド、中国の他、中東や南米などを含め世界のどこかで産業材を売る仕事に就く。
(1)は医者はまだしも、介護系は給与がワープアレベルです。(2)か(3)に入れば、主に海外で働くことになります。それ以外の選択肢は(4)日本で失業する、(5)日本で一生給与の上がらない仕事に就く、しかありません。
つまり“きちんと給与があがっていく仕事にありつく”人の大半は、海外での仕事(広く言えば“海外絡みの仕事”)に従事することになるわけです!
海外市場に本格的にシフトせざるを得ないことの必要性は、すべての消費財メーカーや関連企業が、すでに痛感していることです。若い人の人口が伸びない国で、ビールや缶コーヒーが売れ続けたりはしないのです。
今の 10歳の子供が 30歳になる 20年後、彼らは「インド人好みのビールを開発」し、「インド人にウケる広告を考え」「インド人がよく行くスーパーマーケットで、インド人好みの販促のキャンペーンを準備する」仕事をしているでしょう。
長期出張だか転勤・駐在だか知りませんが、今の私たちが想像するより遙かに多くの日本の若い人達が海外に居住し、働くことを余儀なくされるでしょう。
だって自分の国にはもう大量のビールを飲んでくれる若者も、車を買ってくれる若者もいないのですから。
というわけで、現在10歳前後のお子さんをおもちのご両親(もちろん、それより小さいお子さんをおもちの場合も同じですが)は、将来、
「インドからの電話で孫の誕生を知る」とか
「今年の夏休みは中国から孫が初めて帰ってくる」という感じになると思うし、
なかには
「うちの息子の嫁は中国人」
「うちの娘はインド人と結婚して・・」
みたいなケースも増えるでしょう。
自分達が年老いて、夫婦のどちらかが入院!というような時にも
「早くインドの息子に連絡して!」
ってな感じになるんだと思います。
いや別に、だからどーだとかいうことではないんですけど、「多分そうなりまっせ」ってことだけ。
「英語を勉強させたほうがいだろうか」って?
ん〜。どっちでもいいと思います。
インドで必死に働けば多くの人が5年後には立派なインド英語の話者になるでしょう。
わざわざ今お金をかけて英会話学校に行く必要はない気がする。必要になれば語学なんてなんとかなります。今の日本人が英語が苦手なのは「んなもん要らんから」です。
現時点で 10歳以下の日本人が生きることになる世界では、そんな贅沢は許されません。
今、スウェーデン人の大半は英語を話せます。人口の小さな国=市場として小さな国、の人達は概して英語が上手です。発展途上国でも、何カ国語も駆使しながら客引きをする子供もいます。でも彼らは英会話学校なんて全く行っていません。
それよりは“胃腸が丈夫な子”に育てた方がいいかも。ちきりんみたいな「日本食のないところには住めない!」ようでは今後は将来性がありません。インドのスパイスや脂っこい食事に耐えられる胃腸のほうが役立つかも。
まあ・・・頑張ってください。