海外旅行保険って、ご存じですよね。最近はカード付帯保険があるからかけない人も多いかも。ネットでも申し込めるし、空港でその場でも加入できる。
いままで病気になったことのない人なら。
というのは、こういう保険を申し込もうと思うと一番最初に自己申告すべき項目が「現在健康であるかどうか」という質問。文言は保険会社によって違うけど、「現在、病気やケガなど健康の異常がありますか?」とか、「現在、病院に通院、もしくは、治療を受けている疾病やケガがありますか?」とか、です。
この質問に「はい」と答えると、基本的には海外旅行保険に入れません。カードの保険は無申告だけど、多分同じように「現在かかっている病気等」に関しては一切保障されないと思います。
実は少し前にAIUという保険会社が「持病があっても申し込める海外旅行保険」を売り出したので、このことに気がついたちきりんです。
★★★
たとえば、最近のメタボブームで注目される糖尿病とかって、かかっていても病院に行かず、したがって診断されてなければ、上の質問で「はい」と言えます。でも、診断受けちゃうと「はい」とは言えないでしょ。高血圧とかも同じです。血圧降下剤とかをとりはじめると「治療」でしょ。
昔はそういう持病のある人は海外旅行なんてしない、ということだったのか、自分でリスクをとって海外旅行しろ、ということだったのか。
つまりね、こういう保険って、「超健康な若者」だけいれてあげますっていう保険なんだな、と気がついた。だからすんごい儲かるんだよね。
もちろん普通の生命保険や入院保険もいったん病気になるとほぼ加入できなくなる(もしくは、それに起因する疾病や死亡は一切保障されなくなる)ので、海外旅行保険も同じともいえる。のですが、「ああ、なんかつらい感じだな」と思ったです。
★★★
ちきりんの知り合いと友人に、ひとりずつ、20代後半〜30代でガンを発病し治療を受けて今は社会復帰している人がいます。ふたりとも数年間仕事を休んで入院しヘビーな治療を受けて戻ってきて、今はばりばり働いているし、とても前向きです。
彼・彼女らを見ていると、その姿勢には本当に頭がさがる思いですが、病気を克服して数年から10年たった今でも、彼らは定期的に通院しているし、予防のための治療もしています。
そして、上のような質問に「はい」と答えることはできず、海外旅行保険に入ることはできません。
(対面販売だと状況によっては入ることもできるでしょう。保障の免責範囲で調整されることもあると思うので。)
AIUの新保険は、ビジネスとして悪くないと思います。これだけの高齢化の国です。持病のひとつや二つ持ちながら海外旅行を楽しみたいシニアの方も増えるでしょう。様々な疾病の治療方法も進歩しているから大病をしても、その後回復すれば、例えば、“胃は半分ないけど海外旅行したい!”という人だって出てくると思う。そういう人達を市場から切り捨てるのが賢い方法とは思えません。
同時に、いままでそういう保険がなかったのだ、ということには驚愕せざるを得ないです。
国全体が高齢化するのは悪くないかもしれない。ビジネスのためではあるけど、結果として皆がやさしくなる。元気な人だけを前提とした社会システムが変わっていくとしたら、それは悪くないことかもしれない。と思います。