今のモスクワ=

21年ぶりにモスクワを再訪。モスクワは大きく変わったです。

どー変わったのか?と、旅行中ずっと考えていました。知識としては知ってる。ゴルビーのペレストロイカで共産主義が終わって、アル中エリツィンの混乱期があって・・とか。でも、実際に行ってみて感じる“その変化”は、どんなものか。すごく興味があった。

で、まずは結論。ひとつは「ロシアになった」ということ。そしてもうひとつは「完全にイカレてるな」ってこと。


最初に感じた「ロシアになった」の意味ですが、前回行った時には、そこは「ソビエト」だったのですごく変わったなあと。

ソビエトとは、ご存じの通り当時のソ連の共産主義的制度&体制の名称であり、昔の日本が「天皇翼賛国」という国名だった、みたいなイメージです。でも今回は完全に「ロシア」でしたね。国名も「ロシア連邦」に変わってるわけですが、それだけじゃなくて、いろんな意味で「ロシア」という言葉が“前面にでてきた”印象を受けた。

ロシア料理、ロシア文化、ロシア人気質、みたいなね。


もうひとつは、完全に調子乗りすぎでしょ、というか、イカレてますよ、ってこと。
モスクワと東京、北京、ソウル、パリ、ロンドン、ローマ、NYを較べると、


今のモスクワは、
・最も“歩き煙草比率”が高い。それを道端に投げ捨てる比率も、NYのハーレム地区並みの高比率。
・最も“ジーンズ着用比率”が高い。
・最も“コカコーラ飲用比率”が高い。
・最も、若者の洋服が汚らしい。


まとめていうと、モスクワは「汚いジーンズ姿の若者が、コーラを飲みつつ煙草を吸いつつ騒いでる。」街です。「こういうのがカッコイイと思ってるんだな〜」という時代です。

なお、ダイエットコークなんて飲んでる人はいません、というか、存在しません。「ようやくコークが自由に飲める時代がやってきたのに、なんで偽物を選ばにゃならん」という感じ。わかるわかる。


ただし、明らかに他の都市と違うのは、警官だか軍隊だかしりませんが、治安維持部隊の人の多さ。これ、日本人は馴れてないからびっくりしますね。モスクワの場合、各地のテロ(チェチェンとか)への警戒に含め、アル中の若者の自然発生的な騒ぎも警戒しているみたいだった。

まあとにかく「イカレタ感じよね」っていう街になってます。


ところで、ロシアを訪れる日本人もずいぶんかわりましたね。昔ちきりんが訪れた時は、日本人でモスクワに行こうなんて人は、なんらか共産主義体制に関心のある人だった。ちきりんのような趣味的な関心も含め、です。だから、若者が多かった。

ところが、今日本からロシアにいく人は全く違います。ひとつは「ビジネスマン」、そして、観光客の方は「ロマノフ系」なんです。ロマノフ系観光客ってのは、ベルサイユやら、ウイーンやらバチカンやらローマやらを回っている観光客ってことです。ああいう時代の貴族の宮殿や至宝系に関心がある人達。

イメージ涌きますよね。大半が妙齢のおばさまです。これ、ちきりんは結構驚きました。「この国は今やパリやローマと較べる観光地なのね!」と。


でも本当はちきりんとしては是非若い人に勧めたいよ、「若者よ、ロシアにむかえ!!」と。(うーむ、年寄り発言だな)

値段的にもヨーロッパや、もちろんハワイやグアム、近場の中国や韓国に較べて、ロシア旅行は価格が高い。規制も多いので自由な旅行も組みにくい。だから行きにくいのはよくわかる。それでもここは一見の価値のある国だ、と思いました。それほど“変わった”国だと思います。

「若い時ににハワイやバリに行くなんて、知的感性の無駄遣いに他ならないよ。」

とは思うけど。いや、やめた。どーでもいいです。おせっかいだね。反省。ハワイでも箱根でもお好きなところにどーぞ。

★★★

ちきりんはあちこち海外に行っていますが、同じ国に何度も行くことは余りないです。行きたい場所が多すぎるので、どうしても一度行った国は後回しになる。今回は、別の人の好みに合わせて行く場所を決めたので結果として2度の訪問となったわけです。

なんだけど、この「同じ所に、一定期間後、もしくは“毎に”訪ねる」というのは、すごい意味がある、と今回認識しました。


たとえば、ロシアの現代史でいうと、時代は次のようにわかれます。

(1)ロマノフ王朝(スタートが1600年頃)

(2)共産革命時代。1917年からはじまります。

(3)スターリン時代。独裁という意味では1935年くらいから53年までの20年弱ですね。

(4)ポストスターリン時代(マレンコフ、フルシチョフ、ブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコ)と多いけど、全部で30年。

(5)ゴルビー時代(85年からのペレストロイカ、グラスノスチ)

(6)エリツィン時代・・91〜99年 ハイパーインフレ、経済混乱、財政破綻、格差拡大、財閥とマフィアの癒着の時代

(7)プーチン時代。2000年以降


ちきりんは(5)と(7)に行ってみたわけですが、2地点を見ると「線」がひけるから「点」で見るのとは全然違います。あと中国も、ちきりんは10年間隔で3回訪ねており、「日本の高度成長ドラマ」を中国語吹き替えで見てる、みたいな感じを得られています。この「定点訪問」ってのは、ほんとおもしろい。

★★★

今回、モスクワのガイドさんが54才だったので、昔の話をいろいろ聞きました。54才ってことは1953年生まれ。スターリン死去以降の時代ですね。「僕は昔の時代の人なんです」って言ってた。ちょっと寂しそうだったよ。

一方で、サンクトペテルスブルグのガイドさんは22才で1985年生まれ。物心ついたころには共産党が崩壊してた世代。彼女はちきりんに聞いてきた。「その頃のこの国はどんな国だったんですか?」と。

日本では戦争を知らない世代が増え、北京では文革を知らない世代が増え、そしてモスクワではソビエトを知らない世代が増える。

世界も変わるやね。


んじゃね!