ドル売り

今年と来年で大きく変わることのひとつは、「世界がアメリカを怖がらなくなる」ということだ。

一昨日パキスタンで起こった事件(ブット女子が街で狙撃された)は非常に象徴的だ。CIA劇場パキスタン支店の主役に抜擢されていた女優が消された。人前で演説中に狙撃されるというあまりにも劇的な形で。


これは明確な意思表明だ。


世界は今、高らかに宣言する。
「アメリカはもう怖くない。」 と。


思えば2001年の9月以来、理性とブレーキのネジを(半分、意図的に)失ったアメリカの癇癪的横暴に、世界は自律的な意思をなくしていた。いや息を潜めていた。

「あのクソガキ、また暴れとるわ」「んやけど、あいつが暴れとる間は近寄ったらあかんで。けがするからな。離れときや」ってな感じ。大人の皆さんは距離を置いて、時を待ってたというわけだす。

そしていよいよ2008年。世界は「もうアメリカに気ぃ使わんでも大丈夫」と思い始めた。



そしてなにより大きいのは「石油価格」だ。石油価格が高騰して、アメリカの力は相対的に削がれてしまった。


「アメリカがイラクを攻撃」→「しかし戦争に失敗」→「石油供給に世界が不安感を持ちはじめ」→「石油価格高騰」→「投機筋が参戦して、価格高騰に歯止めがかからなくなり」→「ロシアや中東などの産油国の力が強大になり」→「もうロシアも中東もアメリカに従属しなくなってきた」

という流れなんで、アメリカさんの自業自得なんですけどね。


ドイツもフランスも元々アメリカに追随なんかしたくなかった。最初にしっぽを振ったイギリスとスペインは大規模なテロに首都を襲われ、高い代償を払った。中東は今やサブプライムで痛んだアメリカの資産をすべて肩代わりしつつある。

ロシアはプーチン体制を継続することを明確にし、あからさまにアメリカに反旗を翻し始めた。金正日も完全にブッシュの足下を見ている。日本でもオーストラリアでも親米首相(ハワード&小泉・安倍)が政権の座を追われた。そしていよいよイスラム過激派が「もうブットを殺しても大丈夫」と判断したってことだ。


世界が「もうアメリカは怖くない」と思い始めた理由はもうひとつある。ブッシュは来年で政権から降りる。そして“誰か”新しい大統領が誕生する。

しかし、それが“誰であれ”「もうアメリカは怖くない」と世界は思っている。民主党の若い、肌の黒いおにーちゃんも、ミーハーなおばちゃんみたいな候補者も、共和党の、北米大陸から一度も出たことのないようなドメな候補者も。だーれも怖くない。誰でも怖くない。

世界はそう見てる。


「ブットを殺しても、アメリカは何もできない」と。
彼らはわかってる。



今までちきりんはこう思ってた。「こんなにアメリカばっかり強くなってどーなっちゃうんだ?」って。「アメリカに対抗できる力はもう出てこないのか?」「中国が米国に対抗できるようになるには後何年かかるの?」と。


しかし、潮目は一気に変わった。


「世界はもうアメリカをおそれない。」
2008年という年が、今年と最も大きく異なる点はこの点だ。


じゃね。