自分の悩み、決断できない何かについて、誰かからアドバイスをもらう場合、より有益なアドバイスが得られる方法3つをまとめてみました。
ルールその1
必ず両方の選択肢を質問に入れる。
具体例:「Aだと思いますか?それともBでしょうか?」
アドバイスを求められた時、相談された人がまず考えることは「この人は本音ではどちらを望んでいるんだろう?」ということです。
大半の人は自分の心の中に答えを持ってます。相談された人の役目はそれを「ほら、そこに答えがあるでしょう?」と指し示すことです。
下記は転職についてアドバイスを求められている例です。
「すごく強く誘われているのですが、転職すべきでしょうか?」「そうですね、そんなに強く誘ってもらえるってなかなかないですよ。真剣に考えてもいいかもしれません」
「迷っているんですが、やっぱり断るべきでしょうか?」「そうですね。生半可な気持ちでyesって言わない方がいいですよ」
というように、迷う相手を肯定してあげるのが一般的なアドバイスのスタイルです。なぜなら相談を受けた人は多くの場合、「本人が好きなことをするのが一番いい」と考えているし、もう少し突き放した言い方をすれば、「どうでもいいです。好きにすれば?」と思ってるわけだから。
なので、「こっちを望んでるな」とちょっとでも“匂う方向”があれば、そっちに答えを持って行きます。
本人の意向と反対のアドバイスをし、わざわざ相手を説得するなんて面倒なだけです。(そんなことをして結果が悪ければ、逆恨みされたりします)
だから本当に中立的な意見を聞きたいのであれば、必ず両方の選択肢を同列に並べて質問すべきです。
転職相談の例でいえば、「すごく強く誘われているんですが、転職するべきでしょうか? それともやっぱり断るべきでしょうか?」と、言葉を尻すぼみにせず、両方の選択肢を同じ強さの声でクリアに発語すべきです。
自分がどちらを(潜在的に)望んでいるか、少しでも匂わせたら、相談を受けた人は「あなたの気持ち」を汲んで回答してしまうでしょう。
ルールその2
「質問する」のではなく「語る」こと。自分を理解してもらうこと。
他人に相談しようと思うほどのことには普通、「正解」はありません。あるのは特定の人にとっての、特定のタイミング、特定の環境における最適解だけです。
A社に転職すべきか、今の会社にとどまるべきか。すべての人にとって答えが同じのはずがありません。A子と結婚すべきか、Aというキャリアを選択すべきか、AをBより優先したライフスタイルを選択するか。こういうことに絶対的な正解はなく、あるのは「今の私はどっちの道を進むべきか」という選択です。
だとしたら、その判断に最も重要な情報は「相談者がどんな人で」「その人は今、人生の中でどんなタイミングにあって」「どういった環境にあるのか」という情報です。
「主語・主体が誰であってもみんなA社に転職すべき」とか「あなたが今 20才でも 30才でも 40才でも、Aというキャリアを選ぶべき」などとは言えません。
なので、相談をする時は聞きたいことは冒頭に一回だけ言い、あとは、自分を理解して貰うために時間を使いましょう。
自分はどんな人で、何が嬉しくて、何が不安で、何が怖くて、何が大好きで、なんで今、迷っているのかを。以前に迷ったことを、過去に後悔したことを。以前に成功したことや、今満足していることを語るのです。
よいアドバイスを貰うために一番重要なことは、相手に「自分」を理解してもらうことなのです。
最後のルールです。
ルールその3
最後に「ありがとうございました。他になにか僕が聞いておくべきコトがあるでしょうか?今までお聞きしたことと全く違うことでもいいのですが。」と言うこと。
最後にこういえば、この言葉の前に得た助言より、何倍も有効なアドバイスが得られます。この質問の前、相手は「相談者が質問したこと」に答えています。反対にいえば、「相談者が質問しなかったこと」には触れていません。
しかし、「相談者が質問したこと」が「質問しなかったこと」より大事だという保証はありません。相談者は「何を質問すべきか」、正しく理解していないかもしれません。だから、自分が何を質問すべきかということ自体を、相手に問うてしまった方がいいのです。
たとえば、「博士課程に進学するにあたって、今までの指導教官の○○先生が他大学に移られるんで、僕もそっちに移ろうかなあと考えてるんです。でも研究環境は今の大学の方が圧倒的に恵まれてるし、家族もこの街に住みたがっているし、ここはいっそ研究室を変えて今の大学に残るべきか、悩んでいるんです。幸いにももうひとり指導教官として尊敬できる先生もいらっしゃるし。」と相談すれば、様々な“それなりに有益な”アドバイスがもらえるでしょう。
しかし、
もしも最後に「ありがとうございました。他になにか僕が聞いておくべきコトがあるでしょうか?今までお聞きしたことと全く違うことでもいいのですが。」と言えば、助言者は、
「ところで、博士課程に進むこと以外の選択肢は考えたの? 文系で博士号に進むって大変なことなんだよ。わかってる?」と言ってくれるかもしれません。
そして、そのアドバイスの価値たるや「相談者が質問したこと」への回答とは桁違いの価値があるかもしれないのです。
相談される人は、相談する人の何倍も幅広い知識や経験をもつ場合が多いです。「質問をして得られること」は、「相談者が思いついた質問範囲のことだけ」です。しかし「他になにかありませんか?なんでもいいです。」と言えば、相手は自分の経験と知識の大海から「相談者に最も有益なメッセージ」を取り出してきてくれます。
これをもらわずして何の意味がある? という珠玉の助言が得られる可能性があるのです。
ただし、1時間の約束で会っている時、58分経過時に「最後になにかアドバイスはありませんか?なんでもいいです!」と言われたら、ちきりんは「特にありません」と言うでしょう。
一方、半分の 30分だけ経過した時に質問を終え、「他に聞いておくべき事は、なにかないですか?」と聞いてくれば、「そもそもの話なんだけどね・・。」と話し始めます。
わかりますね。
私たちは、自分の思考の及ぶ範囲を超えた何かを得たいから、他の人のアドバイスを求めるのです。だったら自分で用意したくだらない質問なんてさっさと切り上げて、「相手が大事だと判断すること」について聞く時間を十分に確保する方がよほど意味があります。
まとめておきましょう。
1.質問にはすべての選択肢を含めること。
2.質問するのではなく、自分を理解してもらうこと。
3.「自分の聞きたいこと」は半分の時間で済ませ、残りの時間は「相手がコレを伝えておきたいと思うこと」を話してもらうこと。
この3つに気をつけておけば、人から得られる知見や助言は、圧倒的に豊かなものになると思います。
それではね。