大臣たちが競うもの

民主党政権が誕生してからまだ一ヶ月半というのに、内政から外交までいろんな分野で矢継ぎ早に変化が起きていて楽しい。個々の動きの中には、ちきりんの考えとは合わないものもあるんだけど、“混乱lover”としては、いろいろあって飽きなくてよい、です。


その、民主党政権の大臣達。テレビで取材を受けたり、活動をしている際の彼等の表情を見ていて感じること。それは、彼らが「自分達が今、何を競っているのかを十分に意識している」よね、ということ。

これまで彼らは自民党と競っていた。自分の選挙区の自民党議員とも競っていたし、党としてもマニュフェストや政策において自民党と対峙していた。では今は、彼らは何と競っているか?


明らかだよね。彼らは「他の大臣と競っている」


何を競っているの?

「次のリーダーの座」に向けてのレースです。



この彼らの“次のリーダーへのレース”を、国民はマスコミを通して日々詳細に観察することができる。
・どの大臣が、時機を逃さず勇気のいる大きな決断をくだしたか
・どの大臣が、大局を見誤らない判断力を示しているか
・自分勝手な地方自治体の首長達、“地元住民”という名の既得権益団体、資金力をバックに圧力をかけようとする経済界、民主党内にさえ存在する抵抗勢力達を相手に、したたかな交渉力を発揮しているのは誰か
・優秀だがシニカルな官僚達を巻き込み動機付けるリーダーシップを発揮しているのは誰なのか


私たちは通信簿のような評価表を手にしながら、彼らの言動や成果を注視することができている。
「誰が、この国の次のリーダーにふさわしいのか?」と。



というわけで、今のところ各大臣がどうみえるか、採点してみた。詳しく調べる時間もないんでかなりの印象論ですけど。

ポジション 名前 ちきりん評価 コメント
総理大臣 鳩山由紀夫     国連の演説、各大臣のあしらい、“小沢民主党”とのつきあい、など巧くハンドルしてるかな。大胆なこと言いつつ、現実的な政治&政策バランスをとってると思う。宇宙人頑張れ!
副総理大臣(国家戦略局) 菅直人   C ちょっと出遅れ?厚生労働大臣がまごついているのに乗じて貧困や失業対策をやるみたいだけど、それが「国家戦略」なのか?予算の組み替えをやるんじゃなかったの?
せめて構造改革、できれば成長戦略をやってほしいんだけど。まあ菅さんは力のある人なんで期待してます。
官房長官 平野博文  A/B 子供手当の地方負担は“小心者ちっくな発言”って感じの失言だと思うが、それ以外は何でもそつなく処理している感じ
総務大臣 原口一博  B/C 期待値は高かったのに今ひとつかな〜。いくつかやってることがプロセス設計にとどまっていて、大臣独自の思考リーダーシップが見えない。
外務大臣 岡田克也  AA 外交なので(内政よりは)見えにくいのですが、着々と国際社会でプレゼンスを築いている。精力的に動いているし。
それに「公約通り記者会見を記者クラブ会員以外に公開した」のは、結局この人だけなのでは?
外務大臣になって“(権力闘争から)はずされた”という人もいるけど、ちきりんはこの“外相時代”こそが彼の将来の切り札になると思っています。
防衛大臣 北沢俊美   ? 全然わかりません。
財務大臣 藤井裕久    経歴、経験からして当然なのですが、巧く裁いてはいる。でも結局、巨額な予算ってどうよ? しかも財務大臣がリーダーシップとるのって民主党が描いた“あるべき姿”とは違うんじゃないの?それじゃあ今までと同じじゃん。
あと、こんな年齢の人に頼らないといけないってのは民主党もつらいよね。
金融大臣 亀井静香(郵政担当兼任)    ちきりんとは意見は全然違うんで(政策内容には賛成してないんで)すけど、政治世界での立ち回り方の巧さには唸らされる。このスキルはちきりんも見習いたいもんだわ。
厚労大臣 長妻昭   B/C この人も期待値が大きかった割にイマイチ。分野が広すぎて混乱しているのかな。それともやはり器の問題?
まずは予算がでかすぎですよ。マニフェスト約束分の上乗せはいいけど、従来部分にそんな無駄がないわけないじゃん。
あと、人の動かし方を知らないように見える。組織がでかいだけに、自分の苦手なところ、目の届かないところをどう引っ張っていくか、がポイントだよね。まあ頑張って欲しいです。
経産大臣 直嶋正行   C 限界が見え見え。経団連に手首をひねられてる。自動車業界と電機業界のいいなりになりそうな予感(悪寒)
法務大臣 千葉景子   B 地味ですが着実にやるべきことをやっている。でも野望はなさそうね。
文科大臣 川端達夫   ? わかりません。教育分野にはいろいろ課題があるはずなのに方針が見えない。“高校無料化”とかコスト側も大事だとは思うが、日本の教育をどーすんのよ?
消費者担当、男女共同参画等 福島瑞穂   C あまり興味ないですが、存在感薄くなってるのでは?亀井さんに負けるな!
農水大臣 赤松広隆   C イマイチ。官僚に踊らされてる感じ。日本の農業をどーするのさ?もうちょっとリーダーシップ発揮して欲しい。
国交大臣 前原誠司  AA この人はすばらしいですねえ。大胆でしたたかで強面。無駄を切りつつ成長戦略につながるところに集中的に投資する、という公約通りの“予算の組み替え”をやってるのはこの人だけだよね。
ダムやJALや難しい問題を山ほど抱えていますが、成功すれば相当なプラス。もちろんリスクも大きそうだけど。レース展開的には“序盤からいい位置に付けてる”って感じでしょうか。
環境大臣 小沢鋭仁  B/C わかんないです。せっかくすばらしい目標が掲げられたのだから、何かしらもうちょっとプレゼンス発揮できるんじゃないかと思うのだが。
国家公安委員長 中井洽元   ? わかりません・・
行政刷新会議大臣 仙谷由人    この人頑張ってますよね。“カリスマ節約主夫”みたいで笑えます。事務局長が内閣を回してるみたい。乞うご期待。


こんな感じ?皆さんも是非、評価してみてくださいな。

なお、Aを付けたとはいえ藤井さんや亀井さんに「次」のチャンスがあるとは思ってません。あと、副大臣や政務官も相当頑張っている人がいるよね。彼らも「予選からレースに参加」してる状態なので、大臣になにかあった時や、担当分野の政策で大きな動きがあれば一気に表にでるチャンスもあるでしょう。枝野さんなどももちろんエントリー済み!


というわけで、将来の首相に向けてのレースが(まだ走り始めたばかりだけど)なかなかおもしろい。これこそ「日本モデルのリーダーの選び方」かもしれないしね。


参考:次世代のリーダーを育む仕組み


んじゃー。