現地コミュニティ新聞から見えるもの

NYでラーメン屋など日本飯屋にいくと、現地の日本人向けコミュニティ新聞が無料で置いてあります。それを暇つぶしによく見るのですが、なかなかおもしろいなあと思うので、それについて書いてみます。

無料誌なので広告ばかりなのですが、実際、記事より広告の方がおもしろいので、そちらについて。


1.住まい、医者、レストラン

広告で圧倒的に多いのがこの3種。これは“現地コミュニティ誌”の存在意義をよく表してると思います。

日本からNYに来てさて生活しようと思えば、まずは住む場所が必要。慣れない国で英語で不動産屋で部屋を探すのは大変だし、そもそも共有しないと高すぎて住めない。でもいきなり見知らぬ外国人と・・・と躊躇しつつおなかがすいたのでラーメン屋にはいると、こういう新聞が待っている。

で、「お部屋探しは日本語でOK!」とか、「ワタシハニホンゴベンキョーチュウ。日本の方とのルームシェア募集シマス」とかいう広告を目にしてほっとするわけですね。


医者の広告も多いのは、衣類や家具なら現地の店でいいけどやっぱり医者は日本語が通じる方がいい、という人が多いからでしょう。同様の理由だと思うのですが、カウンセリング、弁護士やエステ、美容院、めがね屋さんの広告も多いです。たしかにどれも日本語が通じると楽ですね。

レストランの広告では、韓国料理や中国料理も多く、基本的にアジア系レストランの広告ばかりです。やっぱり料理は恋しくなるよね。ちなみに牛角とか一風堂なども。


2.英語学校、アルバイト求人、飛行機・・
これらも常連広告主です。英語学校は「在住認可をもってない学生でも登録できます」とか書いてある。とりあえずこっちにきてから英語学校を探す人もいるのかもしれません。

アルバイト求人の大半は日本食レストランでシンプルな3行広告が多いのですが、“フロアレディー募集”の場合は(広告主もお金があるのか)広告枠が大きく色刷りです。

飛行機は日本への帰国便や呼び寄せ便の広告ですね。その他に引越屋さん、携帯電話やネット回線契約などが日本語でOK!とか、日本語入り名刺が作れます!という広告も。異国での生活のスタート時に不可欠なものばかりですね。塾や補習校など子育て系も多いです。


3.日本企業進出系

最近、増えてきたと思われるのがこれ。ブックオフが日本で仕入れた中古本をNYで売り始めたのは“目の付け所”がすばらしいと思いますが、今回は楽天の広告も見つけました。日本のグッズがすべてアメリカから購入できますよ!ということで、化粧品から炊飯器まで通販できます。駐在員などお金のある人には便利ですね。

それとヤマト運輸などが引越とは別に「買い付け品を日本に送ります」という広告を出している。たとえば観光ビザで数週間アメリカにきて、こちらでアパレルや雑貨などを買い付けてヤマト運輸で送る。で、日本でそれをネットで売る、などすれば、かなり簡単に「輸入雑貨業」的なビジネスが始められそうです。便利になったもんだね。


4.体売る系
最後にこれ。2種類あります。ひとつは、

大手製薬会社による新薬開発のための健康な日本人
男女モニター募集


日程:2009年12月○日〜○日
治験期間:健康診断1日、施設内滞在7泊8日
場所:○○○ (マンハッタンからバスで送迎いたします)


謝礼金合計:最高1950ドル
女性対象者は妊娠の可能性のない方のみ

なるほど〜。食事などもすべて供されるので、一週間泊まり込んで20万円もらえたら結構よいですよね。ご丁寧にマンハッタンまで送迎付きだから車がない貧乏人でも大丈夫。

NYにきて英語学校に通ってたけど、思いの外はやくに貯金が底をついて。「どーしよーかな〜」と思いつつおなかがすいたのでラーメン屋にはいって新聞を読むと・・・心揺らぎます?


でももっと稼げる広告もありました。
なーんと謝礼は7000ドルから8000ドル!

卵子ドナー登録者募集
不妊で悩むご夫婦を助けていただけませんか?


米国でもトップの実績を誇る信頼あるクリニックでご提供いただけるので安心・安全です。

プログラム中にかかる旅費や諸経費、食費も支給されます。あいた時間はサンフランシスコ観光を楽しんでください。

秘密厳守。他の登録会社と違い、最初から最後まで日本語での丁寧なサポートをさせていただきます。


卵子提供は臓器の提供ではありません。一回分の月経周期の卵子を採取させていただくだけですので、ご自身の卵子がなくなる心配はありません。


26才までの心身共に健康で責任感のある女性
(ちきりん注:別の会社の広告では、19才〜29才となってました。)


いろいろ考えさせられますね。

・そうか、卵子って80万円くらいで売るもんなんだ。
・そうか、26才、29才あたりまでの卵子しか売れないんだ。
・そうか、卵子提供と臓器提供の区別がつかない人が、卵子売ったりするわけだ。

と。



若い頃に「NYで暮したい!」とかいって渡米して、生活費に困ってこういうところで卵売っちゃったりすると、40才くらいになった時に、自分によく似た二十歳の娘と空港ですれ違ったりするのかもしれないよ。

飛行機会社のカウンターでチェックインしようとしたら、そこにいる係員の顔がなんか自分に似ているとかさ。係員の方も、その人のパスポートを確認するのに写真ページをあけて、(10年パスポートだとすると30才そこそこの時の写真が貼ってあって)それをみた若い係員の表情が驚きで一瞬固まる、みたいな。

ちきりんが星新一氏的才能を持ち合わせていれば、すでにショートショートが一本できちゃってる感じです。



なんだかね。



話変わりますが、精子バンクの広告はみないです。なんでだろうね。日本人男性の精子へのニーズが少ないのか、それとも、男性の方は売りたい人が多いので紙媒体に広告を出す必要がないのか。


人生いろいろ


そんじゃーね。