機密費によるメディア・評論家買収について

今年の4月19日に野中広務さんがTBSのニュースで口火を切った官房機密費によるメディアと評論家の買収問題、今までも漏れ伝わっていましたが、野中発言の後、ジャーナリストの上杉隆さんが積極的に追っていらっしゃいます。しかし、問題の当事者が日本の新聞社であるため、新聞、および、新聞と仲のいい地上波テレビはほとんど掘り下げません。なので、そんじゃあ、ちきりんも一度書いておこうかなと。


まずは機密費自体の説明をwikiで見ておきましょう。

内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。内閣官房機密費とも呼ばれる。会計処理は内閣総務官が所掌する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されている。原則、使途が公開されることはない。1947年度から予算計上されるようになった。2002年度予算で前年を10%下回る14億6165万円になって以来、2009年現在まで同額が毎年計上されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E5%84%9F%E8%B2%BB

つまり、機密費とは「内閣が好き勝手に使えて、何に使ったかも報告する必要がない国民の税金である14億円」です。“国会の運営上必要な場合”とは、具体的には、「野党対策費とマスコミ対策費」ということのようです。国会で自民党が何か法案を通したい場合、反対する野党や、世間を煽るマスコミを懐柔するための費用ですね。

より具体的に言えば、与党が、野党の議員を赤坂や神楽坂の料亭で接待する時の費用、その後、銀座のバーで呑ませる費用、その後、銀座の女性に彼らと共に一晩“泊まってもらう”経費などに使われます。

また、社会党など野党が地方大会や研修会(温泉旅行?)を行う時の費用としても支出されますし、外遊にいく政治家にもお小遣いとして配られます。(ちきりんの知る限り、社会党はたっぷり受け取ってますが、共産党は受け取ってないんじゃないかな。)

また、記者クラブが懇親会や親睦旅行をする際の費用も分担するし、有力な記者であれば、個人で引越祝い、出産祝い、結婚記念日祝いなどとして数十万円がもらえたりもします。

この辺の具体的な話は、週刊ポストの記事に詳しいです。バックナンバーが手に入らなくても、今後も記事は連続掲載されると思いますので関心のある方はそちらをどうぞ。


ところで「機密性の高い外交活動などに使われる機密費」、たとえばスパイ活動費や、国際機関で日本に投票してもらうための根回し・接待費用は、この官房機密費ではなく、外務省の同様の予算である外交機密費が使われます。

こちらも「どう使っても誰にもばれないお金」なので諸処の問題が起っています。公になった事件としては、2001年に発覚した外務省の機密費横領事件があり、詳細は下記のwikiをご覧ください。当時は、松尾克俊というAの具体名も報道されていたと思います。

Aは1993年10月10日から1999年8月16日まで外務省の要人外国訪問支援室長に在任し、46回の首相外遊を担当。9億8800万円にのぼる官房機密費を受領していた。このうち約7億円を詐取。そこから競走馬(大井所属)14頭、サンデーサイレンスの種付け権、ゴルフ会員権、高級マンション、女性への現金に浪費していた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%8B%99%E7%9C%81%E6%A9%9F%E5%AF%86%E8%B2%BB%E6%B5%81%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

完全な私的流用ですね。
なお、官房機密費、外交機密費の他にも警察にも同じようなお金があり、これも内部流用などの問題が指摘されています。

また、額的に大きい外交機密費からその一部を官房機密費に“上納”するという慣習があり、官房機密費は実は14億円よりかなり多かったようですが、この外務省の事件発覚後、2001年以降は上納はなくなったとのこと。

★★★

この問題については、5月19日(火)に朝日ニュースターの“ニュースの深層”(司会は上杉隆さん)でゲストの元参議院議員、平野貞夫さんも話されていたのでご紹介します。

囲んだところは録画を観ながら文字におこしましたが、会話言葉そのままではわかりにくいので、趣旨を変えないよう気をつけながら、書き言葉に直し、順番を整えるなど編集しています。

上杉氏:野中さんは「評論をしておられる方々にも盆暮れにお届けしていた。額もすべて(引き継ぎ書に)書いてあった。テレビで正義の先頭を走っているような人が、こんなカネを平気で受けとるのかと驚きました。返してきたのは田原総一朗さんだけです。」「1000万円とか3000万円を要求した評論家の人もいた」と書いてありますが、これは間違いないですか?


平野氏:はい、そう思います。それが官邸の慣行になっていました。私が国会対策をやっている副議長秘書の時は、月300万を預かって、記者クラブの主要な社の人達への支払いに使いました。

平野氏:羽田政権になった時に、当時の官房長官と自分が、今も活躍中の評論家の人と食事をすることになった。官房長官が急にこれなくなったので、お金のはいった封筒を私が評論家に渡すことになった。厚みでだいたいの額はわかった。先方もすんなり受け取った。

(上杉氏:記者クラブの記者への接待の内容は?)


平野氏:ちょっとした料亭(一流ではなく中級の料亭)で7,8人でご飯を食べ、銀座のクラブにいって飲み、女性と話がついて(事前に決めてあるので)・・という。で、朝、一番町にその人達が集合する、一緒に朝ご飯を食べて、というのを一月に一度くらいやっていた。一回の費用は、(昭和40年代で?)少ない時で20万円、多い時で30万円くらいです。


多くの有力新聞の中でそういう遊びの誘いに応じなかったのは朝日新聞の記者だけだった。私の世代から10年〜15年の時代には、類似の行為はあったと思う。各派閥の番記者は同じことをやっていたと思う。

上杉氏:国会対策だから野党に渡すのはともかく、新聞記者や評論家がそれを受け取るのはどうなのか?

平野氏:高度成長時代、昭和30年代後半から、日本の巨大マスメディアの記者がまともなジャーナリスムの役割を果たしていたとは思わない。日本の新聞社の姿勢は、近代国家のジャーナリストの姿勢ではなかった。彼らは権力の一員です。だから、1960年以降の政治運営において野党対策と新聞社対策というのはある意味同じことです。評論有識者も、自民党からお金をもらうのは当然だった。これは日本の政治文化です。

平野氏:日本のメディアの大半は国から土地を払い下げてもらい、会社を構えているし、ずっと権力と一緒に日本の運営をやってきたんです。個人の記者にお金を渡したこと以上に、会社全体として権力と二人三脚でやってきたわけです。

米ソ冷戦終結までは、社会主義に指導される政権を日本に作ってはいけないという思いが強かった。だから自民党、野党やメディアを堕落させるための活動として、僕らはそうやってきたんです。

★★★

ところで、昨年の政権交代がおこった2009年の9月、自民党最後の河村建夫前官房長官(当時)は、選挙で負けた直後に(=政権交代が決まった後に)、2億5000万円の内閣官房報償費(官房機密費)を引き出しています。それが何に使われたのか、民主党もマスコミも“もちろん”追求しないし、誰にもわかりません。政権を降りることが決まってから2億5000万円引き出す・・・すごいですね。


長くなるので今日はここまでにしましょ。


<関連サイト>
・週刊ポスト掲載号(バックナンバーに関してはコメントを参照してね)
 http://www.zassi.net/mag_index.php?id=51&issue=27617


・野中さんの暴露内容が引用されてる上杉さん出演番組の一部(生々しいです)
 http://www.youtube.com/watch?v=TrSIHYr3zkI
 同記事:http://www.asahi.com/politics/update/0430/TKY201004300449.html


・平野貞夫氏のインタビューはこちらでも。http://news.livedoor.com/article/detail/4798056/


・2000年05月31日号にフォーカスという写真週刊誌が掲載した、「極秘メモ流出!内閣官房機密費をもらった政治評論家の名前」という記事には、下記のリストが掲載されたようです。この額が年に2回(盆暮れの付け届け)なので10年もらえば結構な額ですね。税金もかかりませんし。=脱税してるはず? ただし野中さんは「田原さんだけはつき返した」とおっしゃってます。

 竹村健一 200万円
 藤原弘達 200万円
 田原総一郎 100万円
 俵孝太郎 100万円
 細川隆一郎 200万円
 早坂茂三 100万円
 三宅久之 100万円


そんじゃね。