岡本太郎展

生誕100周年(1911年〜1996年)を祝って、岡本太郎展が竹橋の東京国立近代美術館で開かれていました。すばらしかったので感想を書いておきます。(展覧会は本日終了です。書くのが遅くなってごめんなさい!)


観客は、高齢者が多いゴッホ展など「大御所の印象派画家の展覧会」に比べ若い人が多かったです。

また、それぞれの作品に付けられた説明文章がシンプルながらとても的確であったことが、展覧会の価値を大きく高めていました。これは、彼の元秘書で後に養子となった岡本敏子さんの功績が大きいのではないかと思います。

造形物、絵、写真、ビデオなど展示物も多彩で、岡本太郎氏の才能と人生を存分に堪能できました。1300円でこんなの見られるなんてすごいです。(加えて常設展も見られます。)



感想を一言で言えば、岡本太郎氏が天才(芸術家)であったとよくわかる展覧会でした。これに限らず美術館や展覧会に行くと、「天才」「特別な才能」とは、「普通の人が精一杯努力しました」という地点の先に存在するわけではないとよくわかります。努力によって到達できる地点なんて、たかだかしれてるよね、と楽しくなりました。

★★★


個別の展示作品では、代表作である『森の掟』や話題作『明日の神話』もすばらしかったですが、個人的には彼の私的な思いが感じられる作品、たとえば、父の死の直前に、書き物をする父、岡本一平氏をモチーフにした作品が、とてもやさしい視線が感じられ、印象に残りました。

しかしこんな人まで31歳で招集されて1942年から終戦まで中国に送られていたらしく、戦争ってホント馬鹿げてるなと思えました。彼は当時のことを「あの数年間、私は冷凍されていたような気がする」と言っています。

若い頃はパリ留学をしピカソに衝撃を受けた太郎氏ですが、年齢を積んでからは日本の美も再認識していたようです。

彼が「美しい」と絶賛した縄文土器や、なまはげなど東北の伝統の祭りの写真やビデオも展示されており、確かにそういう目でみると、それらも「まさにアート」な感じでした。同じモノを見ても、見る目が違うってこういうことねと痛感します。

あと、ベトナム反戦のためにワシントンポストに出した「殺すな」という文字の広告はすごいインパクトで、まさにアートでした。


『太陽の塔』で有名な大阪万博(1970年)についての展示もおもしろかったです。のべ6400万人が入場したこの万博は、昨年の上海万博の7200万人と比べても(人口比を考えると)すごい規模のおばけイベントでした。よく知らなかったのだけど、太陽の塔の中には人類の過去と未来を表す様々な展示があったらしく、初めてそれらを詳しく知りました。

ところで、大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だったんですって。これ、2011年のテーマとしてもよさそうじゃないですか?


★★★


岡本太郎氏はその言葉の豊かさでも有名で、展覧会でもいくつもすばらしい言葉が紹介されていました。


「ぶつかり合うことが調和なのだ」
「人間には意識があるからいろいろ虚しくなる」、「単細胞にかえるんだ、人間の根源にかえることが大事。」
「どうしても本職というなら、人間です。」
「芸術家はきれいに描こうとするんですよ。卑しいんです。」
などなど


どれも参考になりますよね。特に「ぶつかり合うことが調和なのだ」という言葉にはハッとしました。「ぶつかりあいの結果、調和が生まれる」と(凡人みたいなことを)言っているのではなく、「ぶつかり合うことが調和だ」と言っている点が「なるほど」です。


会場の最後のところに、穴の空いた箱がありました。「ひとりひとつお取りください」と書いてあって、中には岡本太郎氏の言葉を書いた小さな三角の紙がごっそり入っています。すごく粋ですよね。


そこでちきりんが選んだ一枚に載っていた言葉は、


「好かれるヤツほどダメになる」


そのとおりだよ。反省します。


そんじゃーね!


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岡本太郎氏の言葉は、まとめられて本になってます。↓ちきりんが一番好きなのはコレ。

壁を破る言葉

壁を破る言葉


あと、この「あいしてる」っていう絵本もすごくよいです。何十周年かの結婚記念日や、プロポーズの時のプレゼントに最高です。愛ってアートだからね!

あいしてる―岡本太郎の絵本

あいしてる―岡本太郎の絵本