先日、知人と食事をしてたら、「なんで日本ってこんなに危機感がないんだ?」という話になったのだけど、ひとしきり話してから思った。「危機感なんてもてないよね。だって全然、危機じゃないもん。」と。
都心のヌーベルシノワをうたったおしゃれな中華レストランの奥まった席で私たちが堪能していたのは、1万円ちょっとの創作コース料理とシャンパンベースのカクテル。
日曜日だから人通りも少なく、節電とやらで街はいまだに暗いけど、食事を終えてめっきり秋らしくなった風を楽しみながらそぞろ歩きしていてもなんの問題もない治安の良さ。
こんないい国で暮らしてて、何にどう危機感を持つべきだと?
って思う。
別にあたしだけじゃない。その翌日は銀座のワインバーで昔の友人達と食事。ひとりは35年ローンで家を買い、別の一人は10歳若い彼女と千代田区のマンションで同棲を始めたという。もうひとりは海外赴任が決まった。そしてあたしはタヒチにいった話と、来月、イタリアに行く話をする。
株価が最安値だかなんだか知らんけど、ユーロが100円切るかもしれないけど、おいしい食事とワインとおしゃべりを楽しみながら、「この国も終わりだよね」とか言ってても全然説得力がない。
ちきりんは、自分がとても突出した立場にいて、自分の周りだけがこうだとは思えていない。実にたくさんの人たちが、こんな感じなんじゃないの?この国の危機感のなさは、まさにこういう人たちに支えられてる。
企業だって同じだ。貸出先がなくてめっちゃこまってる銀行は、名前の通った大企業に貸し出したくてうずうずしてる。就職先のない大学生も押し寄せるように応募してくる。自社の株価が少々下がってもなんの問題もない。そもそも日本の大企業の大半は、今や株式を上場しておく意味さえ見失いつつあるんだから。
確かに売上が伸び悩むようになってからボーナスが少なくなったし、今の役員が部長だった頃にもらっていた額は、今、部長職をやってる自分はとてももらえていない。
それでもつい5年前に35年ローンで家を買ったばかりだし(つまり、向こう30年はこのローンが払えるだけの収入があると信じているし)、それどころか妻は子供の進学や留学に、まだたっぷりとお金を掛けられるという前提で、あれこれ子供の将来を案じてる。
会社にいけば、そりゃあ危機感は感じる。もう儲かるようにはならないよね、と思える事業に2000人の社員がぶら下がったりしている。どうにかしなくちゃいけないとは思う。このままじゃもたないとも思う。
でも家に帰れば、秋の大型連休にはどこに行こうか、という相談が始まる。
なんだかんだいっても、私たちはあまりにすばらしい国に住んでいるので、なんの危機感ももてません。