今、共産党に学ぶべき3つのポイント

800人近くにリツイートされた志位和夫 共産党委員長の呟き↓


きっかけは去年 12月のコレ↓


呟き後すぐに集英社からアレンジの提案があり、共産党からも「やりましょう!」というお返事をいただきました。

集英社ならびに共産党の皆様には心から感謝しています!


私が志位委員長に会いたかったのは、共産党ってほんとにスゴイなと思うコトがよくあるからなんです。

詳しい対談内容は 次回のエントリを読んでいただくとして、今日は「ここがスゴイよ 共産党!」という 3点をまとめておきます。

1)マーケティングがめちゃくちゃ巧い!

私がいちばん関心したのが、何年か前に登場した「たしかな野党」というキャッチフレーズです。

当時の共産党は、二大政党制への期待が高まる中でまったく選挙に勝てず、多くの人から「既に存在意義が無くなったのでは?」と思われてました。

実際、この時期に社民党(元社会党)なんて、ほぼ消滅してしまったのです。

そんな状況の中「たしかな野党」と開き直る、つまり「二大政党の時代がきて、たとえ与党になれる可能性がゼロになっても、共産党の存在意義はある!」と主張するのは非常に巧い手です。

与党になりたくて離合集散する他の野党への皮肉もばっちり効いてるし。



代々木の共産党本部前にて 以下、写真撮影はすべて高橋定敬氏


これ、実は前にサントリーも使ってた手法です。

当時、ビール業界ではアサヒとキリンが熾烈なトップ争いをしていて、どっちもデータをこねくり回し「我こそがビール業界のトップである!」とつばぜり合いを演じてたんです。

そこに(ビールに関しては)どうあがいてもトップになれないサントリーが、「一番であることに何の意味があるの?」という皮肉の効いたテレビコマーシャルを流したことがありました。

あの時も、「巧いなー」と思ったんですが、共産党の「確かな野党」はこれと同じ構造をもつコピーです。


アサヒとキリンが二大トップを争う中、「一番じゃないけど存在意義のあるサントリーのビール」をアピールした CM と、

自民党と民主党が政権を争ってた時期に「与党にはなれないけど存在意義のある共産党」をアピールする。 ねっ、同じでしょ。


とはいえサントリーは、民間企業の中で最もマーケティングやコマーシャルが上手い、この分野ではトップレベルの企業なんです。共産党ってのは、そういうレベルのマーケティングセンスを持ってるんですよね。

しかもサントリーと違って、大手の広告代理店を使ってるわけでもない。これはもはや電博の存在意義が問われる事態では!?



加えて共産党は、あの党名を変えないのもさすがです。

ドイツが統一したりソビエトが崩壊して、「共産主義はもう終わり!」みたいになった後でも、頑なにあの名前を使い続ける。これもマーケティング上は非常に賢い判断です。

だって「共産党」って言ったら、日本中の全員が知ってる党名なんですよ。おそらくその認知度は、自民党と並んでトップクラスだと思います。

こんな浸透度の高い名前は、(共産主義を目指してるとか目指してないとかに関わらず)ぜったいに捨てたらダメです。


昔とある銀行が、国際的にも高い知名度を誇っていた日本興業銀行(IBJ )というパワフルな名前をポイと捨て、「みずほ」なんていう意味不明な名前に変えてしまったとき、

「ホントにあほだな」

と思いました。誰でも知ってる名前がブランドとしてどれくらい強力か、大事にすべきものか、みんなもうちょっと共産党に学んだほうがいいと思います。


ちなみに中国企業のレノボは、 IBMからパソコン部門を買い取った後も、数年は IBM ブランドを使う権利を確保、今でも Think Pad という商品名を使い続けてるし、その後 NEC のパソコン部門を買った後も、 NEC ブランドのまま商品を開発、販売しています。

名前って言うのは、ビジネスにとってめちゃくちゃ大事なのに、この前、できた保険会社の名前・・・コレ見て!

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社


これじゃあ、まるで 生活の党と山本太郎となかまたち と同じレベルじゃないですか?

・・・ホントにみんな、もうちょっと、日本共産党を見習ったほうがいいと思う。


2)人事制度が完全実力主義!

志位委員長は、学生時代に党員になった後、35才で書記局長(自民党の幹事長にあたるポジション)に抜擢され、46才で党のトップである党委員長になられてます。

これもすごいでしょ。完全な実力主義なんですよ、日本共産党って。
成果さえ出せば若くても抜擢し、トップにまでつける。まるでベンチャー企業か外資系企業みたいですよね。


しかも志位委員長は既に 14年間もトップの座にあるけど、党内では多選禁止とか、長期独裁政権反対とか、意味不明な議論は一切でてきません。

民主党に政権を取られる直前の自民党が、安倍 → 福田 → 麻生と、一年ごとに首相の座を回してたの覚えてます? 

民主党も政権をとった時、「これを逃せばもう永久に首相になれるチャンスは来ない!」とばかり、鳩山 → 菅 → 野田と、首相の座を一年ずつ、みんなで共有しました。

両党とも、それに合わせて大臣も全とっかえし、「できるだけ多くの人を総理経験者、大臣経験者にしよう!」という野望を隠しさえしなかった。


でも、共産党は違います。トップの座をみんなで分け合うなんてことはしません。志位さんだけでなく、これまでの共産党のトップもみんな、10年、20年と続く長期政権なんです。


実は民間企業の中にも 5年とか 7年とか、社長の任期に(それぞれの会社の)暗黙の了解があり、その期間が終わると若返りという名目で次々と社長の椅子を回していく、悪しき慣習が捨てられない会社がまだ、たくさんあります。

これがために会長だの副会長だのといった意味不明なポジションが増えるし、自分が社長なのはどうせ数年だと思うから、みんな任期中は大過なく終わらせたいと考え、思い切った改革は何もできません。

長くトップが変わらない創業社長以外、大胆な経営改革ができなくなってるのはこのせいなんです。

そういう無意味なたらい回し人事をやらないだけでも、共産党は ほんとエライ。



日本企業も共産党と同じように、30代半ばくらいの層から「アイツを将来のトップに」って人を明確にし、早くから要職に就かせて経験を積ませ、40代でトップにつけるくらいのことをしたほうがいいんじゃないでしょうか? 50代で若手を抜擢とか言ってては、お話しになりませんよ。


3)理論と現実を折り合わせて実を取るスキルがスゴすぎる!

一般に左翼系のグループっていうのは、非常に「理屈」が好きです。

以前は(今でも?)共産党の幹部って東大出身者ばかりだし、行動派が多い右翼と違って「やたらと難しい理屈をこねくり回すのが左翼」というイメージがありますよね。

そしていつしか理屈におぼれ(現実が見えなくなり)世の中から乖離して見放されていく、というのが、これまでの左翼思想衰退のパターンだったわけです。

ところが、

日本共産党がすごいのは、理屈で建前を維持しながらも、現実を見失わないマーケット感覚を持ち合わせてることです。



たとえば彼らは、「大企業は内部留保を取り崩して非正規雇用の人を正社員にすべし」みたいな(私には全く理解できない)ことを言うんだけど、こういう言い方をするのには、ちゃんと理由があったんです。

(この点、詳しくは 後半エントリからリンクされた対談文章をご覧ください


2004年に志位委員長の下で党の新綱領を発表した時も、古くから在る「二段階革命論」を使って、ものすごく巧く現実と理想を折り合わせました。

昔から共産主義社会を目指す人の中には「一気に共産主義革命を目指そう!」という一段階革命論を支持する人と、

封建主義 → <第一段階の革命> → 人民中心の資本主義 → <第二段階の革命> → 共産主義

みたいに、二段階の革命を経て共産主義を実現しようという主張があったんだけど、


今の共産党はこれを使って、「共産主義社会は、遠い理想の姿としては捨てていない」けど、「今の目標はあくまで第一段階の革命です。単に中小企業と庶民のための社会を作ることを目指してるだけだから安心してね!」みたいな主張をしています。

これなら「あくまで最終目的は共産主義」という建前も捨てなくて済むし、「今目指してるのは弱者のための党」という現実路線も選択できる、

しかも二段階革命論は(共産主義の議論の中に)昔からあった議論だから、「いきなり新説を持ち込んでごまかした!」みたいな批判も受けなくて済む。


なんという巧みな理論構成! 



あたしね。今回、対談して思ったんですけど。

志位さんはお話が上手なだけじゃなく、人としてもホントに誠実で純粋で人格者なんです。しかも、現実的な組織運営やマーケティングを通して、きちんと「実を取る」戦略遂行能力や組織運営能力にも長けてらっしゃいます。


で、思いついたんですけど・・・


ここはいっちょ、北朝鮮から拉致被害者を取り戻す交渉を共産党にまかせたらどうでしょう?


北朝鮮との交渉って、小泉さんの訪朝以来まったく成果が挙がってないでしょ。何十年も前に、自分の国からいきなり拉致された人を未だに取り返せないなんてひどすぎない?

しかも交渉技術として、日本は北朝鮮に全く勝ててない。去年だって「拉致の調査して報告するから制裁を解除して!」って言ってきた後は、なんの進展もないじゃん?

これこそ、原理原則を捨てることなく巧みに世論にアピールし、かつ、現実的な果実をきっちり得てくるスキルも持つ共産党が貢献できる分野だと思うんだけど、どーでしょう? (相手も「おっ、同じ共産党?」って油断するかもしれないし)


(安倍さんが志位さんを拉致問題担当大臣に指名し、)
志位委員長が金正恩氏と対談して拉致被害者を取り返してきてくれたら・・・

「確かな野党」どころか「確かな与党」も夢じゃないですよ!!!



そんじゃーね!


→ この続き「志位委員長との対談メモ」はこちらでお読み頂けます。

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