ビジネス常識の中で大きく変化してるのが、コミュニケーションに関する常識です。特にインターネットが出きてからはツールの移り変わりも激しいし、世代ごと、そして業界ごとの常識に大きな隔たりがでてきています。
たとえば昔は、「知らない人に初めてコンタクトする」場合、
・必ず紹介者をたてるべし。本人に直接コンタクトするのは失礼、とか
・最初の依頼は挨拶を兼ね、手紙を郵送すべし
みたいな、ちょっと信じがたいような常識がありました。
今でも業界によってはそういう人が残ってて、あたしにさえ出版社経由で連絡をしてきたり、わざわざ知り合いを探し出し、紹介者をたてて頼み事をしてくる人もいます。仕事の依頼を手紙に書いて郵送してくる人も少なくありません。
先方はそういう方法が適切だと考えてるんだろうけど、正直、もはやブロガーに直接の連絡がとれないような人と一緒に仕事できる感じはしないし、紙の手紙なんかで仕事を依頼されても返事しようという気にもなれません。
紹介者を経由して仕事を依頼するのは、「丁寧である」と思われるのではなく、「メールアドレスが探せないほど IT リテラシーが低い」とか、「紹介者という権威を利用しようとする非民主的な傾向のある人」と解釈される可能性さえあるんです。
手紙で仕事を依頼したら「礼儀正しい人」ではなく、「古い慣行や常識にこだわる人」「新しいモノを取り入れるのに、消極的な人」と思われることもあります。
自分側の常識だけに則ってコミュニケーション手段を選ぶのは、結構リスキーなこと(=適切な方法で頼めば受けてもらえた話も、連絡手法を間違ったために断られてる)になってる時代なのです。
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さらに電話に関しては、「嫌い」「受けない」と公言してる人もたくさんいます。私も音声電話を掛けるのは、
・家族や親友など極めて近しい人
・待ち合わせの際のリアルタイムのやりとり。 (「遅れる!」とか「今どこ?」みたいな)
・一緒に仕事やイベント企画をしている人との、「電話で話した方が早いよね」的な複雑、もしくは急ぎの打ち合わせ
に限っていて、「よく知らない」「一度、会ったことがある」レベルの人と電話で話すことは、もうほぼないです。
なんだけど、今でも「まずは電話で」とか思ってる人もいて、これも相当にお互いのストレスの元になる。
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郵送に至っては、どんなに心を込めて手紙を書いても、読んでもらえてない(開封さえしてもらえてない)可能性があることを、よく理解した上で出しましょう。
私は 2週間くらい家(&事務所)を空けてることも多く、その間、郵送物は郵便局に留め置きにしています。帰京後( or 帰国後)にまとめて受け取ると、量も多いし、下手すると読めるのは、相手が郵送してから 3週間後だったりします。
2015年における郵送ってのは、誕生日カードとか年賀状とかお礼状とかファンレターみたいな「返事をもらう必要のない、挨拶目的のもの」と、物理的に送る必要のあるもの(本やプレゼントや契約書など)に使う手段なんだと考えるべきでしょう。
特に、古い常識を持ってる親や先生に勧められ、わざわざ紹介者を介したり、会ってくれた人に紙の手紙でお礼状を書く若い人はかわいそう。
ネット経由でお礼をすれば、相手からひとこと反応が返ってくることもありえるけど、手紙ではそんなことは期待できません。反対に「今どき手紙!? 若いのに面倒な奴」と思われてしまう可能性だってある。
手書きのお礼状を評価する会社や業界も(今でも)当然あるとは思うけど(そして私も、そういう分野だと思ったら手書きでカードを書いたりしますけど)、少なくとも「どこもそうのはず」とは思わないほうがいい。
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電話や郵送という伝統的なツールとは反対に、メール、ツイッターのダイレクトメール、フェースブックや LINE のメッセージなど、新たにいろいろ現れているツールの使い方についても気をつけましょう。
世の中には「日常的には使われていないアカウント」もたくさんあります。たとえダイレクトメールが送れる状態だとしても、相手が過去 1ヶ月に 3回しか呟いてないアカウントにメッセージを送っても返事は期待できないでしょう。
あと、SNSによって利用目的を分けてる人もいます。相手が「何用途で、どれくらいの頻度で、その SNS を使ってるか」を確認してから、メッセージを送ったほうがいいんじゃないかな。
SNS ごとの扱いも微妙で、「メールはビジネスに使ってもいいが、LINE は仕事に使うモノではない」という感覚の人もいれば、「メールなんて面倒。ぜんぶメッセージアプリで送ってほしい」という人もいる。
業界ごとの常識が大きく異なってきてるので、「こういう場合はコレ」と覚えるのではなく、連絡をとる相手の状況を読み、それにあわせてツールを選ぶ必要がでてきています。
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自分をフォローしてくれてる人に、事実上の営業ダイレクトメッセージを送るのはすごく非常識だし、名刺交換したすべての人に営業メールを送る会社もあるけど、
あれも(何人かが「迷惑メール申請」をした時点で)グーグル様にスパム判定されてしまうので、他の人にもメールが届かなくなって、むしろ営業効果は減じられてしまうと思います。
また、その人が他の誰かとカジュアルな口調で会話をしてるからといって、何の面識も無い人に 10年来の友達みたいなメッセージを送るのも止めたほうがいいです。
ネットだから(リアルでやらないことを)やってもいいわけではないし、本人に直接、連絡がとれる時代になったからといっても、全員が友達になったわけではありません。
いくら親しみやすい人に見えたとしても、初対面の人にタメ口メッセージを送るのは NG でしょう。路上のナンパじゃないんだから・・・
さらに、たとえ誰か宛てに送るメッセージではなくとも、誰でも見られる場所で むやみに汚い言葉を使うのも止めましょう。
多くの人は、自分にメッセージを送ってきた人の、他の発言も見てから返事をしています。自分に連絡してきた人がどんな人なのか、確認するのは当然のことなんです。
(ストレス解消にはなるんでしょうし、)毒を吐いたり悪口をいうためのアカウントを持つことを全否定するわけではないですが、そういうアカウントではフォロアーが増えても、そのアカウントを何らか意味のある活動に使うことは(将来にわたって)できないのだということも理解しておきましょう。
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メールやメッセージにどの程度すぐに返事するかも、業界や分野の常識が大きく違いますよね。移動中も会議中もずっとスマホをいじってる人と、他の仕事に集中してる時はスマホを見ないって人では、このあたりの感覚も全然違う。
誰に連絡しても数時間以内に返事が戻ってくる、というコミュニティもあれば、二日後に返事が来るのはごく普通って業界もまだある。
全体に「返事を出すべきタイミング」は早まっているんだけど、それは同時に「二日も返事がこなかったら、優先順位を下げられてる」と判断できる時代とも言えるし。
反対に、昔は「敬語も使えない人間はダメ」みたいな風潮があって、手紙の中でひとつ敬語を間違えるだけで「ダメ印」を押されることがあったけど、
今や外国の人も多いので、この辺はかなり緩やかになってきてます。以前はビジネスレターの季語とか結語も大事だったけど、今はそんなことより、きちんとメッセージを伝えることのほうがよほど大事。
「何がいいたいの?」みたいな文章を書いてると、返事がもらえない時代になってる。2年前のエントリですけど、これも読んでおいてくださいな → 仕事の超重要スキル 生産性の高い伝え方
いずれにせよこの分野はもはや、「何が常識か」さえ定義できないほど早く変化しているので、常に「自分の常識と相手の常識は、もしかしたら大きく違うかも?」という感覚をもつことが大事になってると思います。