最近つくづく思うのは「これからは公務員の仕事が、ほんとに大変、そして大事になるなー」ってことです。
なぜなら!
1.核家族化、単身化、高齢化の進展で「老後と死のケア」が公務員の仕事になるから
高齢単身者世帯は急増しており、世話をする家族がいないまま高齢化し、病気になったり事故にあったり死亡(孤独死)する人が増えてきます。
長生きすれば貯蓄が尽き、生活保護に頼らざるをえない人も増えるし、認知症になって家をゴミ屋敷にしてしまったり、街で迷子になり、家に戻れなくなってしまう人もでてくる。
迷子になり、町を徘徊してるところを保護された高齢者だって、ひとり暮らしの場合、引き取りにきてくれる家族がいません。
今後は一日何人ものそういった高齢者の預け先(受け入れ先)を探すのが、公務員の仕事になるでしょう。
孤独死された方も身元がわからなければ行政が手続きをとるしかないし、亡くなられた後もずっと身元がわからず、役所が遺骨を管理するケースも増えているとか。
こういった人が現れた場合、対処するのは、基本、公務員です。最初は 110番や 119番に連絡があり、その後は役所の福祉課などに担当が移ります。
急増する身寄りのない高齢者の最期をケアする仕事は、今後の行政にとって、非常に重要な(主な)仕事となるのです。
2.低成長下で取り残される人が増え、そのケアが公務員の仕事になるから
高度成長時代であれば、すべての家庭&人がそれなりに(誰だって少しずつは)豊かになっていました。でも低成長時代になると、その恩恵から取り残される人がでてきます。
約半数が貧困と言われるシングルマザー家庭は今後も増え続けるし、長期間にわたり引きこもり、仕事に就かないまま中高年となる人も増えています。
発達障害を含め、なんらかの障害があって自由競争下では仕事に就けない人や、ホームレスになってしまった人の支援も行政に求められます。
いまでもそうですが、生活保護や障害者年金で暮らす方などの生活支援(というより人生支援)は行政にとって非常に重要な仕事です。
3.ボランティアに頼りがちな社会問題の解決においても、行政の積極的取り組みが求められるから
日本では、精神障害をもつ人の入院期間が他国に比べて極めて長く、一般住民から隔離されていると問題視されています。
これを解決するためには、そういった方も(病院ではなく)地域社会で暮らせるよう環境や支援体制を整える必要があるのですが、それも公務員の仕事です。
ギャンブルやドラッグ依存で生活が破綻した人の治療施設や支援体制も足りていないし、家庭内暴力を受け、逃れてきた女性を保護する人員も十分ではありません。
ネグレクトを含む子供の虐待を防ぎ、親元で暮らせなくなった子供を適切に保護するための仕組みもまだまだです。
今は NPO が支援することも多い分野ですが、いつまでもボランティア頼りとはいきません。今後は行政のより積極的な取り組みが求められることでしょう。
※参考エントリ→ 奉仕の心で社会を維持するのだー!
4.空き屋の処理も公務員の仕事として増大するから
都市部、地方を問わず、人口減少による空き屋の増大は深刻な問題です。
先日、地方の空き屋にスズメバチの巣ができ、近所に住む車椅子の高齢者がハチの大群に襲撃されて死亡するという痛ましい事故が起こりました。
ほかにも、不法投棄場所や野生動物の住処となってしまうなど、空き屋が原因となる問題は少なくありません。それらを地道に解決し、地域を維持するのも行政職員の大きな役割です。
まずは不法投棄されたゴミを片付けたり野生動物を処理したり、その後は空き屋の持ち主を探し出し(多くの場合、相続人があちこちに点在しているので)皆に連絡をとって処分を依頼、
それでも放置された場合は法的手続きをとって取り壊し業者を手配したり、実際の取り壊しに立ち会ったり、空き屋処理は一軒だけでも相当な時間がかかります。
それがあちこちに現れるのだから、担当部局の仕事は本当に大変になるでしょう。
5.災害時にもまさに“公僕”となることが求められるから
日本は災害の多い国です。
そしていったん大きな災害が起こると、真夜中も含めた避難指示など緊急判断、高齢者や弱者の避難支援、避難所の開設運営から被害調査、仮設住宅の建設や住宅の移転から復興計画の策定・実施と、ものすごい量の業務が発生します。
東北の地震の際にも、自身の家族も行方不明となっているのに、公務員としてのつとめを優先された方が数多くいらっしゃいました。
本当に頭の下がる思いですが、今後は高齢化の進展で、ひとりで歩けない方の避難を助けるなど、災害時に求められる役割はさらに増大しそうです。
★★★
高度成長時代は高速道路やダムを造るとか、企業や大学を誘致するといった仕事も多かった公務員ですが、今後は社会から疎外されがちな人を地道に支えていくことが仕事の中心となります。
それは日々過酷な現実に正面から向き合う精神的にも負担の大きな仕事であり、生半可な気持ちで務まるものではありません。
使命感はもちろん、世の中の理不尽から目をそらさない強い心、そして、すぐに結果が現れなくても諦めずに頑張り続けられる粘り強さが求められます。
しかも少子高齢化、低成長の時代、公の支援を必要とする人は今後もどんどん増えていく。
公務員の方の「社会や地域が崩壊しないよう、きちんと支える仕事」の重要性は、増えこそすれ減ることはないのです。
もちろん、こうした支援には多額の予算も必要です。
だから民間企業に勤め、ガンガン稼いで税金を納めたり、起業して多くの雇用を生み出すのも立派な社会貢献です。
社会貢献したい人が、全員で公務員になる必要はありません。
民間セクターでしっかり稼いで税金を納め、新しいサービスや事業、そして雇用を生み出し、社会に貢献するか、公務員として弱者に寄り添い、最前線で身をもって彼らを支えていくか、
「社会を支える」「社会に貢献する」チャンスは公務員にも民間で働く人にも同じように与えられているのです。