化学物質過敏症

この病気について初めて知ったのは、何年か前にテレビでその特集を観たときでした。「こんな病気があるんだ!」と驚いたし、アレルギー体質の自分にも無縁とは思えず怖くなりました。

その後、先月またこの病気を取り上げた番組を観て、今度は大人だけじゃなく子供も発症してると知って驚愕。

文字通り「化学物質」に過敏に反応してしまう病気で、嘔吐や頭痛、鼻血、動悸、呼吸困難、ただれや腫れ、痙攣といった症状がでます。しかもかなり強い(日常生活が普通におくれないレベルの)症状がでるんです。


2009年に「化学物質過敏症(CS)」と病名登録されたこの病気、番組内で患者が反応する化学物質として紹介されていたのは下記ですが、実際にはもっと幅広いみたい。

・空中散布される農薬
・シロアリ駆除剤や除草剤
・建材や合板家具
・塗料
・タバコ
・消臭剤や芳香剤
・スプレー式の防虫剤
・柔軟剤 

特に「柔軟剤」については、洗濯時に柔軟剤を使った服を着ている人とすれ違っただけで気分が悪くなると多くの患者さんが証言。(洗濯洗剤には柔軟剤が入ってる商品もあるんで)

専門医は「今、いい香りとされているものはほとんどが化学物質です。それらが臭神経を通して脳に影響を与える」と言われてましたが、

症状が重くなると電車やバスにさえ乗れなくなるので、全国に数少ない専門医に診てもらおうと思っても、病院まで辿り着けない患者さんもいるとか。

治療法も確立されておらず、できるのは「化学物質を避ける」ことだけ。

でもそれがまた大変で、まず、今までの家に住めなくなったりする。

自宅の建材や家具から出る化学物質に耐えられないだけでなく、近所の家が干してる洗濯物の柔軟剤が原因で症状がでたりするので、単に「古い家を借りればいい」という話でもないみたい。

じゃあ田舎に住めばいいかというとそうでもなく、農薬やら除草剤やらをラジコンで散布されたりしたらやっぱり住んでいられない。


一日中、頭痛と倦怠感で動けない、でも、専門医に会えず病名もついてないとなると、「さぼってる」と思われ周囲にも理解されず、患者さんの多くが死にたいと考えるって。。。

これじゃあ、いったいどうやって暮らしていけばいいのか、食べていけばいいのか、途方にくれますよね。


しかも番組を観て驚いたのは、小さな子供までかかっていると紹介されていたこと。

化学物質のでない家を作っている建築家の方( パハロカンパーナ自然住宅研究所 の方)によると、「子供さんが化学物質過敏症だという人からの問い合わせがものすごく多い」とのこと。

合板でできた椅子や机、教科書のインク、床ワックス、ホワイトボードに使われるマジック、トイレの消臭剤など、学校には化学物質の漏れ出すモノが溢れているので、この病気を発症した子供は学校にいけなくなる。

てか、ぴかぴかの新しい校舎のせいで発症する子供もいる。

症状によっては「他の子供が着ている服から漂う柔軟剤の香り」が耐えられないため、公園に遊びに行くのでさえ「他の子供が帰ってしまった夕食時」を待って行くと・・・

番組にでてきた子も4歳で発症、学校に行けなくなり、今でも「何時間も鼻血が止まらなく」なったりするそうで、ほんとに大変そうだった。

★★★

私が怖いのは、「これ、そのうち花粉症みたいに、ものすごくたくさんの人に拡がるんじゃないの?」って思うからです。

平成 27年に環境省がまとめた報告書には「予備軍も含めると人口の 7.5%が化学物質過敏症の対象者」とまで書かれてるらしいんだけど、

花粉症やアトピー、さまざまな食物アレルギーの人だって、昔(たかだか 30年くらい前)にはほとんど目立たなかったのに、今は子供も含めほんとにたくさんの人が困ってる。

化学物質過敏症が取り上げられ始めたのはここ 10年くらいだと思うけど、20年後あたり、いったいどうなっているのかぞっとします。


てか、化学物質過敏症の症状には、下痢とか頭痛とか耳鳴り、不眠といった「ふつうにいろんな人が悩んでる問題」も含まれていて、それらの人達も(まだ日常生活に深刻な支障がでてないだけで)、実はすでにこの病気にかかり始めてるんじゃないの?

今回の番組では、ある学校が過敏症にかかった子供のために「化学物質のでない特別な教室」を作ろうとしてたんだけど、

その途中、親が(過敏症の)子供を建設中の教室に連れて行き、床や壁をクンクンさせて「大丈夫? ダメ? まだつらい?」とか確認してたんだよね。

それをみて思ったんだけど、過敏症じゃない子供だって、そういう教室で勉強すべきじゃないの?

だって、まだ症状が出てないからって「過敏じゃない子供」にとって化学物質が健康にいいはずはないよね?

だったら症状がでてない間から、悪影響のありそうなものはできるだけ周囲から排除したほうがいいのでは?

化学物質過敏症の子供でも苦しまずに過ごせる教室を作って、過敏症じゃない子供もみな、そういう教室で勉強させたほうがよくない??


こちら、患者の支援をしている特定NPO法人のサイトにはいろんな情報が載っていますが、特に紹介したいのが、今はまだ発症していない人に向けた「予防してください」というセクション。

今、化学物質過敏症でない人は、たんに「まだ発症していない」だけかもしれないんだよね。

そういう人もできるかぎり、発症しないよう気をつけるべき。


さきほどのサイトには「発症者の 80%以上に症状がでるもの」といったリストも載ってるので、ぜひ見ておきましょう。

特に
・アレルギー体質
・今でも匂いのキツいモノは苦手
・原因不明だけれど、頭痛、耳鳴り、不眠などの症状が長く続いてる
・子育て中
みたいな人は気をつけたほうがいい。


下記は小児科の医師の方が書かれたコラムの記事なんだけど、


柔軟剤に含まれてると言われる「イソシアネートは毒性が極めて高い」とか書かれてて、ちょっと怖くなる(欧米では環境基準が厳しく設定されてるらしいのに)。

ちなみに柔軟剤は「柔軟剤」として売られているものだけじゃなく、衣料用の洗剤の中にわざわざ成分として入れてある場合もあるから気をつけましょう。「ふわふわに仕上がる洗剤」にするためにね。

みんな一度、自分の使っている洗濯洗剤のパッケージ表示を確認してみたらいいかも。

それと、柔軟剤だけじゃなく合成洗剤そのものも体にいいわけじゃないのだから、「節水のため、すすぎ回数をやたらと少なくした洗濯コース」を使い続けるのもどうかと思うよ。

あと、やたらといい香りのするコンディショナーなどヘアケア商品を毎日使うのも。


そういえばスプレー式の商品ってよくみると小さな字で「風通しのよいところでお使いください」とか「必ず換気をしながら使ってください」って書いてある。

これってつまり「吸い込んだら健康によくないですよ」ってことなんだよね。

そう書かれているスプレーを、たとえば、靴やコートの防水のために、ヘアスタイルを保つために、換気もしてない屋内で使うのは、けっこうリスキーな行為なんだってこと。

てか、そんな注意書き、読んでない人もたくさんいそうだけど。


ちきりん的には、今後は(絶対に必要!でない限り)スプレー式の商品はもう使いたくないなって思いました。

柔軟剤なんて絶対に使いたくないし、芳香剤や消臭剤も置きたくない。
防虫剤も使わなくてもなんとかなるし、洋服やソファの匂い消しにワザワザ化学物質をスプレーするなんてトンデもなさすぎる。
あと、新しい家具を買ったら、できる限り窓をあけて換気したい。

考えてみてください。
花粉症や食物アレルギーの人や子供、昔はこんなにいなかった。
ごく一部の人だけが悩んでて、他の人はみんな「自分には関係ない」って思ってた。
でもその後、どんどん症状がでる人が増えていった。

化学物質過敏症だって、いつそうなっても不思議じゃない。

ほんとに気をつけたい。



そんじゃーね

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