アマゾンレビューの「数」でわかる書籍の「部数」

今はなんでも屋になってるアマゾンですが、最初は「ネット書店」として登場しました。いまでも書籍は、彼らの主力商品のひとつだと思います。

私も 10年前に文筆家としての活動を始めて以来、10冊以上の本を出しているのですが、それらの販売部数はかなりバラバラです。

最初からよく売れる本もあれば、10年くらいたってあらためて売れ始める本もあり、もしくは、最初はよく売れたけど、1年くらいで売上が止まってしまう本もあります。

んが、

この、書籍の販売部数って、出版社と著者くらいしか知らなくて、他の人にはどの本がどれくらい売れているのか、よくわからないでしょ。

10万を超えてくると帯の宣伝コピーや新聞広告にそう書かれ、

20万部、30万部と増えてくると、交通広告(地下鉄の中とかの広告)が出たりして部数がわかり、

100万部突破! など、超のつくベストセラーになると、テレビや新聞などメディアで取り上げられたりもするので、

「すごい売れてるんだなー!」ってことはわかるけど、

それ以外だと、どの本がどれくらい売れてるのか、マーケット側からはよく見えないんです。

んが、

実は(いくつか条件はあるものの)ある程度、外部から販売部数を推測できる指標もあります。

それは!

アマゾンのレビューの数、なんだよね。

たとえば、下記のグラフは私がこれまでに出版した本の「部数」と「アマゾンのレビュー数」の相関グラフです。

(縦軸が部数、横軸がアマゾンのレビューの数(いずれも昨年12月始め時点)で、○印が私の書籍)

相関係数など計算するまでもなく、すごい高いレベルで相関してるとわかりますよね。

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しかもさらに細かく見ていくと、より深い事情もわかります。

たとえば、下のほうに赤い○印がふたつありますよね。

この赤丸は、KDPという「著者=私が、出版社を通さずに直接だしたキンドル電子書籍」なんです。

このふたつ、やや相関から外れてて、「部数のわりにレビューが多い」もしくは「レビューが多いわりに、部数が少ない」状態です。

なんでか?

理由は、「読者が全員、キンドル読者である」ため、「レビューが増えがち」だからです。


キンドルって読み終わると「レビューしましょう!」的なメッセージがポップアップするんだよね。

だからKDP本は紙の本より「レビュー率」が高いというわけ。

★★★

また、右下の(でも線より上に)、ピンクの○印が 3つありますよね。これらは先ほどの例と反対に、

「部数は多いのに、レビューが少ない」もしくは「レビューは少ないのに部数が多い」状態です。

なんでか?

実はこのグラフにおける「部数」とは、実際に売れた部数ではなく、印刷部数なんです。

もう少し正確にいうと「紙の本に関しては印刷部数、電子書籍に関しては販売された部数」ですね。


本来、レビューの数は「販売部数」と相関するはずなんですが、このグラフでは(代替として)印刷部数が使われています。

このため「印刷したものの売れずに残っている本=在庫の多い本」の場合、データがラインの上側に乖離します。

ピンクの○印、3つのうちのひとつは、つい最近、増刷されたばかりの本です。

そんな、増刷されたばかりの部数が既にぜんぶ売れたりしてるはずはなく、店頭や出版社の在庫になってます。

また、残りのふたつについては、最後に増刷されてから、かなり時間がたってます=最近はあまり増刷されていません。

ってことで、「最後に増刷された後、あまり売れておらず、在庫として残ってる」ものと思われます。

★★★

最後に、右上のほうにも「相関からズレてる本」がいくつかあるんですが、これらは順調に(今でも定期的に)増刷を重ねている本なので、在庫が滞留してるわけではありません。

おそらく、ラインの上にずれてる本は、「あまりレビューを書かないタイプの人たちによく売れている」んじゃないかと。たとえば経営者とか・・・

反対にラインの下にずれてる本は、とてもキンドル比率が高い本なので、それが原因で下側にブレてる(レビューが増えてる)んだろうなと思ってます。

今後は電子書籍比率の高い本がさらに増えていくと思うので、年数がたてばどの本も、上記分析よりは「レビューが多め」になっていくんでしょうね。

★★★

このように、飛び離れ値にはなんらか考えられる理由があるので、もし、電子書籍と紙の書籍を分けてデータ入力できたり、増刷タイミングからの期間をパラメーターに加えたり、さらには印刷部数ではなくPOSを通った部数(販売部数)で分析できれば、さらに相関レベルは高くなるんじゃないかと思います。

なお、レビューの良し悪しはあまり関係ありません。

読まれなければ、褒めることも貶すこともできませんし、基本、アンチコメントは人気のある本にしかつかないからです。

つまり、本のレビューに関して重要なのは「中身ではなく数」なんです。

★★★

で!

この相関が正しいとすれば、誰でもアマゾンのレビューの数をみれば、その本の売れてる部数が推定できることになります。

たとえば、

レビューが 1000ちかい本といえば、
『シン・ニホン』   レビュー数=951
『ライフ・シフト』   808
など

さらに大きなベストセラーになると、レビュー数が数千にも登ります。
『嫌われる勇気』   4,492
『Factfulness』    3,216

これらの本の部数をご存じの編集者もしくは著者の方、それらが上記の相関グラフのラインに乗っているか、ぜひ検証してみてくださいな!

★★★

ちなみに、数多くの本を出されている同一著者の本でも(私の本がそうであるように)案外、星の数はバラけています。

たとえば、
堀江貴文さんの本には、レビュー数が 1000を超えてるのもあれば、100を超えない本もあるんです。

それと、
勝間和代さんの最初の頃の本、かなりの部数売れてると思うのですが、レビュー数は上記の相関と比較するとかなり少なめです。

これは、「当時はまだ、レビューをアマゾンに書くという習慣が定着していなかったから」じゃないかな。

つまりこの相関が効くのは、ここ10年くらいに出版された本、ということになります。


また、小説や実用本(ダイエット本やレシピ本など)についても、この関係は当てはまらないと思います。

小説好きな人はアマゾンではなく読書メーターなど専用サイトや、自分自身の読書ブログをもっていて、そっちにレビューを残す人が多そうだし、

「おなか周りの贅肉を取るための本」とかは・・・レビューを書きにくかったりしそうでしょ。

加えて書籍以外では「やらせレビュー」「ライバル商品を貶めるために書かれた営業妨害レビュー」が横行してるアマゾンなので、レビュー数が目安になるとは思いません。

むしろ「商品の種類からみて、考えられないほど多くのレビューが付いているガジェット」とか、個人的には怖くて買えないです。


と、様々な制約があり、使えない分野も多いのですが、少なくとも私の本に関しては、部数と(アマゾンの)レビュー数というのは、非常に高い相関にある、ということでした。

他の本がどうなっているのか、出版社の方や本を出してらっしゃる著者の方、ぜひチェックしてみてくださいな。


 そんじゃーね