公平という美名の下の不正

NHKの番組には、会場にお客さんが入っているものがたくさんあります。歌番組なんて大半そうですね。

ああいうのの入場チケットは一般には販売されていません。

希望者が申し込んで、抽選で当たるのです。つまり、当たった人は、無料で見に行くことが可能です。


紅白歌合戦もそうだし、もうお亡くなりになりましたが「美空ひばりリサイタル!」みたいなものも、「当たれば無料」です。

すごいでしょ。もし普通のコンサートだったら数万円のチケットを買う必要のある歌番組に、NHKの番組ならタダでいけるんです。


ロジックはこうです。「チケットを販売するとお金のある人だけが見ることができる。だから、公平にチャンスを与えるために抽選にし、無料で招待するのだ。それが公共放送であるNHKのやり方だ。」と。


でもこれ、大嘘です。


★★★


紅白歌合戦を例にとって考えましょう。

倍率はだいたい 250倍〜 300倍と言われています。

毎年倍率が上がります。往復はがき「でしか」申し込めません。300枚の往復はがきを買うコストは、3万円です。ただし、これでは1人しかあたりません。


それに、倍率はだいたいの目安ですから、確実に当てたければ多めに出さねばなりません。

なので、二人分のチケットを確実に手に入れるためには、だいたい 1000枚くらいの往復はがきを出せばいいと言われています。葉書代で 10万円です。


もしラッキーにも入場券が3枚あたったら誰かに売ればいいだけです。おそらく自分の分の葉書コストもゼロにできるくらいの値段で売却可能なのではないかな。(一応、転売は禁止されてると思いますが。)

1000枚のはがきに、申込み事項である住所や氏名等を(往復はがきなんで各2面ずつ)「手書きで書く」なんてあり得ません。

普通は、郵便局で「折られていない」はがきを買ってきてパソコンを使って、数時間かかって印字します。インク代もバカになりません。


つまり、NHKの紅白歌合戦に行ける人は下記のような人です。
・10万円以上の費用を出して往復葉書を買う財力のある人
・PCを使えるスキルのある人
・手間暇をかける時間のある人
です。

もちろん、誰かに手間暇を委託する(印刷にかけるとか)ことも可能なので、お金があれば、自分で PCが使える必要はありません。近くの印刷屋さんに発注すればいいだけです。

なので、お金持ちなら(コネがなくても)紅白にいけます。家族全員で観に行く、とかも可能です。


NHKの言っている「公平に紅白歌合戦を見てもらうために敢えて無料」は、あきらかに嘘です。お金があれば、チケットは手に入ります。

「お金持ちが紅白を見に行くことができる」システムになってるんです。

家族 5人で観にいくには 2000枚くらいの申し込み葉書を印刷屋で作ってもらえばよいです。30万円くらいで手に入るってことです。

いいなあ、お金持ち!


★★★


別の観点から。

紅白を始めNHKの出演料は非常に低いと言われています。

歌手にとって、ステイタスはあがるけど、儲かる仕事ではありません。

それでも、あれだけの舞台を用意しあれだけの準備をすれば、相当のコストがかかります。それをNHKは無料で提供するわけですから、そのコストを払っているのは誰なんでしょう?


それは視聴料を払っている人です。

敢えていえば、“まじめに視聴料を払っている人達”です。

もし、NHKがこれら歌番組等のチケットを有料で売ったら? 相当の収入になりますよね?


そしたら・・・視聴料なんて徴収する必要はなくなるのでは? もしくは、視聴料をその分安くすることができるはずです。

それなのにチケットを無料で売るから、視聴料をやたらと高く必要がでてきます。

NHKの言うところの「公平な制度」のために、まじめな視聴者は無用に高い視聴料を徴収されています。

コンサートチケットなんて売ればいいんです。葉書代として払うかチケット代として払うかは、払う方にとっては負担は変わりません。チケット方式の方が寧ろ公正明大でしょう。


もうひとつの視点。

このシステムで大もうけしているのは、現在大紛糾中の郵政公社です。

NHKホールの収容人数は 3700名です。これに 300倍の数の応募が来ます。

往復はがきが 111万枚! 使用されるということです。


郵政公社の売上は1億円以上です。(プリンタ会社もインクが売れて嬉しいでしょう)

1億円くらい、巨大な郵政公社にとってはたいした額ではありません。

しかし・・このシステムは紅白歌合戦だけではありません。


3歳児しか出られない「おかあさんといっしょ」に我が子を出すために、同じようにプリンタフル稼働させる親はたくさんいます。

その他のすべての歌番組、お芝居等が同じシステムをとっています。郵政公社はこのNHKの申し込み制度によっていくらの利益があがるのでしょう?

私が、郵政公社の経営者だったら?

もちろんNHKの会長さんにお歳暮送りますよ。「視聴者がこのシステムの不公平さに気が付くまで、絶対このシステムを変えないでくださいね!」というお手紙をつけて、季節の付け届けを欠かしませんね。

ビジネスとして当然のことでしょう。



し、本当に公平でありたいなら、いくらでも別の方法はあるんです。

NHKの視聴料を払っている人は個別の管理番号を持ってますよね。

一年に一度、視聴料を払っている客が、自分の行ってみたい歌番組等に申し込む。

NHKは、イベント毎に希望者の管理番号リストからランダムに当選者を選んで通知する。

極めてシンプルです。そして公平です。(ちなみに、今の紅白は視聴料払って無くてもいけます。)


なんで、そういう方法にならないか?

私がNHKの会長なら、当然こうおもいます。

「そんな方法したら、郵政公社からの付け届けがとぎれるじゃないか!」と。だからやめません。絶対やめないぞ〜!!


もしくはこうかな?

「前例のまま続けたい」「前例のないことはやりたくない」


ものすごく不公平な、お金持ちばかりが得をする“公正な方法”というのが、世の中にはあるのです。



それではまた明日。


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