「格差問題」の「問題」

先週テレビでみた番組の多くが格差社会や格差問題の特集でした。それにしてもメチャクチャな議論だな〜と思うものも多かったので、ちょっと整理しておきたいです。

格差問題についてではなく、“格差についての議論方法の問題”について書いてみます。



<1>議論のトピック自体が不明確
まずは以下のうちどれを議論しているのか、明確にしてほしい。


(1)格差とは、なんの格差なの?
経済力だというなら個人の経済力なのか世帯の経済力なのか、
経済力って収入のことなのか?資産を含むのか
再配分前の格差なのか、再配分後の格差なのか
格差と、格差固定化のいずれを問題視しているのか


(2)格差がつくことは、いいことか悪いことかという是非論

(3)問題とされるほどの格差が現実にあるのかどうかという現実論

(4)その問題が、こんなに議論が必要なほど重要なの?ということ

(5)格差の原因と対策(解決法)


また上記は、上から順に議論される必要がある。最後の問題について議論する番組は、最初の4つについて、どのような前提(仮定)をおいた上で議論しているのか、明らかにしてくれないと、わけがわからない。

再配分前の格差を解消する方法と、再配分後の格差を解消する方法は、まったく違います。また、固定化を解消する方法も、格差自体の解消法とは全く違うはず。なんで、ごちゃごちゃに議論するんだ??


なお、上の5つを“漢字の多い言葉”で表記すると下記です。
(1)課題の定義
(2)価値観の議論
(3)現状の把握
(4)他の社会問題との優先順位の明確化
(5)原因の解明と解決方法の議論・提案



<2>極めて、恣意的に(な)データが使われている

  • 貧困率の国際比較がよくでてくるけど、所得分布が大きく異なる国の貧困率を比べても意味がないでしょう。
  • またジニ係数だって、完全な指標ではありません。退職金を入れるかどうか、再配分前と後、高齢化の影響、フロー(年収)とストック(資産)の関係、景気変動要因の影響・・・グラフを見せる時はもうちょっと「どういう計算がされているのか」明確にしてほしい。また、これだけ言われているのだから、そろそろ「高齢化の影響」を除いた係数を計算して欲しい。
  • 非正規雇用の人の数を、「希望して非正規雇用を選んでいる人」と「余儀なくされている人」に分けて議論して欲しい。フリーターとかニートも同じ。

<3>格差問題を利用して、全然別の問題に話をもって行く人が多い

「格差問題の解決策は、非正規雇用者を減らすこと」とか言う人がいるけど、格差が無くしたいだけなら、寧ろ不当に高い正社員への報酬を下げればいいはず。

しかし、そうはならない。なぜなら主張者が「労組系」だからです。自分たちの給与をさげることを解決策の一つであるとは、彼らは口が裂けても言わない。格差問題を利用して自分達の既得ポジションを守ろうとするのはすごいずるい。


もうひとつ。ニートやフリーターが増えてるということをやたらと問題視するんだけど、「増えているのがニートやフリーターであってホームレスではない理由」もよく考えて欲しい。

年収200万円のニートやフリーターの中には、家に個室をもっているのに家賃も光熱費も払っておらず、それどころか母親が、食事の用意や衣服の洗濯までしてくれるという、ちきりんよりよほど恵まれた環境の人もいる。

一方、正規雇用されてるけど、超狭いアパートに全部自分で払って住んでいる若者(年収400万円)もいるでしょ。どっちが可哀想なのかよく考えて欲しい。前者が年収が半分で可哀想、とか言われても簡単には同意できません。後者の人は世帯主で、もちろん洗濯も掃除も自分でやっていて、加えて田舎にいる親にもなかなか会えなかったりするのだよ。


というわけで、この問題の議論の仕方、前々から気になっていたのですが、最近テレビとかで、すごい勢いで取り上げられるので、より気になりました。



また明日