CD&OD

CDと言えばなんですか?
 ・コンパクト・ディスク(と思った人は、音楽好き?)
 ・キャッシュ・ディスペンサー(と思ったあなたは、銀行員)
 ・クリスチャン・ディオール(と思ったあなたは、プチセレブ)
 ・中日ドラゴンズ(と思ったあなたは、名古屋出身)


ODと言えば?
 ・オーバードース(精神疾患のある患者が、睡眠薬などを過剰摂取すること)
 ・オーバードクター(今日のテーマ)

★★★

オーバードクターってのは、ごく簡単にいえば“博士号取得者が就職できない問題”です。

原因として語られることに、
(1)文部科学省の無責任な&人体実験的な博士大量輩出政策の問題
(2)学位授与や研究者採用の不透明さの問題
(3)研究者の社会貢献の場所の圧倒的な不足の問題 などなど。
などがあります。


ことの発端が(1)の文部科学省の政策です。文部省は「少子化で大学が余ってしまう」とか「博士が欧米先進国より少なくて恥ずかしい」とか、「技術立国、文化先進国には博士が必要」とかと考え、政策的に博士号取得者を増やしてきた。

これは人為的にコントロールできる数なんです。基本は、博士課程の定員を増やせば博士が増える。で、どんどん増やしてきた。修士課程にいる学生に対して「博士よいとこ、あなたもおいで」的な勧誘も行われたわけです。

ところが、博士号取得者の伝統的就職先である「大学の教授ポスト」(アカデミック・キャリア、アカデミック・ポスト)は、全然増えない。当然です。少子化で日本の学生数は、全体として減っていくわけだから、教授側ばっかり増やすわけにはいかない。で、博士号はとったけど、仕事がない、という問題が生じています。

ところで過去20年くらいで文部科学省が決めた大政策は、「ドクター大量養成政策」と「ゆとり教育」くらいしか思いつかないのですが、他になんかあるのかな?

★★★

ちなみに、もっと大変な問題もあります。博士課程に進んだのに「学位がとれない」人もいるんです。博士課程に入学して、在籍して、すべての課程を修習したけど博士号が取得できず、そのまま卒業したり中退します。博士号って、学士とは違い「博士論文」が認定されないととれないのですが、この認定方法がまた不透明なわけです。

まだ理科系はましです。国際的な学会や学術誌の評価とかがありますから、圧倒的にすぐれた成果を残せば、客観的に認められる。だけど・・・たとえば文学系とかだと誰が判断すんねん、論文のクオリティを?って感じでしょ。

結局のところ、既得権益者である「今の大御所教授」が判断するわけです。これはかなり不透明だし、かなり人為的でない?と、誰でも思いますよね。「力のある教授に“気にいられないと”アウト!」って感じです。誰が助手として大学に残れるのか?という「選抜」においても、同じです。


そもそも、博士号をとってもポストが絶対数として不足してます。一番伝統的な「助手から教授へ」というポストは、上に書いたように限度があります。文部科学省は税金つかって責任をとり、いくつかのポストを用意してます。中心的なのが、ポスドクとよばれる「ポスト・ドクター」職ですね。国関連の研究機関が給与を払って、博士号取得者を雇います。ポスドクの最中に研究を重ね、アカポスへの就職を目指すという趣旨です。

が、ポスドクってたいてい2,3年の任期、最高年齢は35才まで、そして、根本的な問題として、待ってたってアカポスが増えるわけではない。しかもポスドクを合わせても、年間の博士号取得者の7割未満しかポストがない。残りの人はどーすんの?今ポスドクの人は、35才以上になったらどーすんの?と思いますよね。

★★★

この問題の特徴をあげると、

・「困っている人が少ない」:年間の博士課程修了者は1万5千人くらいかな。世の中全体で失業者とかニートの増大!とかって言われる場合、単位は何百万人、ですからね。たかだか数千人が就職できないなんて、「小さな問題」として扱われる。

・「分野による差が大きい」:日本は製造業の国だから、技術系・工学系の企業はたくさんあります。余裕があれば「中央研究所」を持っている。大学の定員も大きいし、教授職もそれなりに数がある。悲惨なのは、まずは人文学系。学校以外で、どこが雇う?って感じでしょ。次が社会学系、そして、案外大変なのが「理学系」です。「宇宙」とか「天文学」とかね。こーゆーの研究しても「民間就職」ってありえないでしょ。

というわけで、そもそもの人数が少ないのに、分野による差が激しいため、ひとつひとつの問題が非常に「細かいし、小さい範囲で起る」んです。だから、解決策を考える方の人にメリットが少なく、問題が放置されがち、なんでしょう。


これは病気も同じ。ガンは深刻な病気ですが「亡くなる患者が多い」ので、治療方法の研究が進むんです。日本で年に数十人しか死なない病気になると「研究すれば治療方法が見つかるのに、研究自体が行われない」ということが起こります。それと同じ。

しかしながら・・・当の本人にとっては、問題の大きさは「全体の人数」とは無関係。むしろ、世間の人に知られてない問題だからこそ深刻、とも言えます。


というわけで、長くなるので今日はここまで。(たぶん)明日、続きを書きます。

ではまた〜