続)給食費滞納問題

昨日のエントリに関して、いくつか論点を含むコメントを頂いたので、追加エントリとして書いてみます。


(1)これもまた、“作られた問題”とは言えないか?

今日、給食費を滞納している児童数が10万人だと報道されてました。これが正しいとしましょう。

「子供がいる家庭の平均子供数」というのは2人を超えていますので、(いわゆる出生率が低いのは、子供がゼロの人、結婚しない人を母数にいれた数字だからです。子供がいる人だけで計算すると平均の子供数は2人を超えます。)、この10万人の児童の親(ペア)数=家庭数は、半分の5万家庭ちょいです。

この数字には「経済的な理由で払えない」家庭も含まれています。アンケートの数字では約半分が「払えるけど払わない」らしいので、その数は2.5万組(家庭数)です。(この比率は地域によってかなり偏りがありそうですね。)

これは、義務教育児童がいる家庭の合計500万家庭の0.5%に当たります。つまり、200家庭にひとつの家庭です。

現在、200組に一組の親が「払えるけど払わない」と言っているわけです。いわゆる「モラルのない親」が「200組に一組」です。


親の10人に1人が払ってないとか、2割も3割もの親が払ってない、という話ではありません。0.5%の親が、です。200家庭にひとつです。まずはこれを確認しておきたいです。


あと、今のところ、この数が「増えている」というデータは見つかりませんでした。どうやら「先生の感覚として増えている」と報道されているようです。

生活保護世帯は過去10年で急増してますから、「経済的理由で払えない親」が急増しているのは納得できます。しかし「いや、増えているのは経済的理由で払えない人ではなく、お金はあるのに払わない親の方だ。」と、学校&先生が「そういう気がする」と言っています。
まあ、それを信じましょう。


だとすると、「すんごい増えて」「200家庭にひとつ」なんでしょ。これが本当に今の学校の抱える問題の内、優先順位の高いことなんですかね?


ふーむ


というわけで、ちきりんにはこの問題が例の納豆問題と同じに思えるのです。マスコミはセンセーショナルなニュースをほしがっている。根拠が若干薄弱でも全然かまわない、と。

そして、もうひとつ、この問題は「世の中が悪くなっている!」「はず!!」と言いたい人に、非常に好まれる議論だ、ということです。

何かと「昔はよかった」「最近の親は」と言いたい人に、格好の“都合のよいデータ”だと思います。「ほらね、世の中は悪くなっているだろ。オレの言ったとおりだろ?」と。例の若者悪者論と構造が似てるなあと思います。


(2)払わないなら食べさせるなという主張について


これは本当に理解できないです。親が悪いことしたら、子供が責任をとらないといけないのでしょうか。親が悪いコトしたら、子供がこらしめられなければならないのでしょうか??

たまたま、ひどい親のもとに生まれた子供は、人生を諦めなければならないの??(おっと、給食を諦めなければならないの?、ですね。)


そういう理屈に聞こえるんですけどね、どーもこの主張は・・



親が修学旅行費を払わないなら子供は旅行につれていかない、これ当たり前。親が体操着を買わないなら、子供は体育の授業に参加させるな!親が絵の具セットを買わないなら、図画工作の授業中、先生はそんな親の子供は徹底的に無視して孤立させておけばよい!ってこと?

もし将来、教科書が一部有料化されたら、「教科書代を払わない親の生徒には、授業を受けさせるな!」と。

そーゆー意見なんですかね??



ていうか、この意見の人は「子供に給食を食べさせなければ、親は必ず金を払うはずだ。」と信じているんではないでしょうか。

つまり、「すべての親は子供をかわいいと思っているし、子供を悲しませるようなことは絶対にしない。」と信じている。だから「食べさせなければ払うだろ?」という理屈になる。

とても幸せな環境で育った人であり、とても羨ましいですが・・・世の中の100%の人がそんなに幸せなわけでもないんじゃないかな。

何百世帯にひとつか知りませんが、赤ちゃんに煙草の火を押しつけて虐待したり、一切食べ物を与えなかったり、という親はいるんです。「昼飯ぐらい抜いても死なへん」って開き直る親っていると思う。


世の中にはごく僅かではあるが、一定数「わけわかんない人」というのはいるんです。

いきなり他人を殺しちゃう人がいる、から殺人罪という罪があり、警察という制度があり、拘置所や刑務所があるんです。

「給食費を払わない親がいる」から、さて、どういう制度にしましょうか、という話し合いが必要(取り立て強化でも公的負担かでもいいが)なのであって、「モラル崩壊っ!!」って叫んでてもしゃーない。


でしょ?というのが、ろれるりさんの後段の意見だと思う。ちきりんも本当、そう思う。

ということです。


最後に。日本の教育費への公的負担率が先進国の中で低いのは、ろれるりさんのおっしゃる通りなんです。これ、どの項目が(どの分野の負担率が)低いのかよく知らないので、そのうち調べてみようと思っています。

ただ全体として言えることは、「価値あるものには、きちんとした価格をつけるべき」という話だよな、と思います。

精神論的に「教育は聖域」だから、「金がなくても熱意があればいい教育はできるんだ!」なんていうのはもう通用しないと思う、ということです。

これはまた別問題。



そんではまた