最近このセグメントにターゲットしたビジネスが急拡大してるなあ、と。で、一応まとめておくです。
ターゲットされているのは「成長フリークな人達」。別の言い方もできる。「向上心に溢れる人達」「勉強好きな人達」「成長神話の信者」「焦ってる人達」「幻想好きな人達」「もっともっと病の人達」などなど。
商品群はいくつかに分かれる。
<学校系>
日本国内だと「社会人大学」「ビジネススクール」「英会話学校」に分かれます。海外だと「MBA」と「英語短期留学」かな。
趣味として売るのはいいと思うのですが、「社会人大学院に行ってキャリアアップ」とか「ほんまかいな?」と思うようなキャッチで売られているので“いかがなもんか”と思うです。社会人大学院でキャリアアップとか大学教授への道が開けるとか、ちょっとありえなくない?と思うけど。“地域の演劇同好会に入って女優を目指す!”とかいう感じだよ。
ビジネススクール系の学校も大流行のようだが、(しかもみんな忙しい帰宅後や休日を投資して通ってる・・)これって「成長と学習意欲が満たされ自己満足による幸せ感の獲得」には役立つと思いますが、それで「仕事ができる人」になったりすることはないんじゃないかなと思います。
英語は、ちきりんは大事だと思っているが、英会話学校に週2回、半年とか一年とか通うことがその手段として必須とも効果が高いとも思えないです。今はテレビのニュース番組も大半が2カ国語放送やってるし、無料の語学番組も多いでしょ。英字新聞だって500円で一部買えば1ヶ月くらいの読解力の練習教材に使えるよね。大半の人は英会話学校を「勉強の強制力」や「きっかけ」として使ってると思う。英会話学校行く人って「そこでしか英語は勉強しません」って人の場合も多そうだ。
というわけで、ひとつは「学校系」商品&サービス。
★★★
もうひとつ大きい市場が<書籍・雑誌系>です。
上記の学校の教材として売り出されている「MBAシリーズ」みたいなのもあるし、もうひとつ大きなカテゴリーは「ビジネス本」「経営本」というカテゴリー。これは最近急拡大している気がする。雑誌も多いですよね。「自己成長中毒な感じのサラリーマン向き」な雑誌。
こういうの買ってる人ってもしかして一人で一年に10冊以上とか買ってると思うのよね。いや、30冊買っている人がいても驚かないかな。すごく偏っている気がする。買わない人は全然買わないと思われるので。
ああいうのって読むと一種の“高揚感”が得られるんだと思うのよね。でも別にそれに書いてあることを実践するわけでも実現するわけでもないので、少し時間がたつとその高揚感が薄れてしまう。で、また次の本を買う。
読んでる本人も半分あほらし〜と思いつつ、また同じこと書いてあるなあ〜とわかりつつやめられない、みたいな。タバコみたいなもんだなと思います。読んでいる瞬間からその後すこしの間だけ「俺はもっともっとできるはずっ!」とか「くそぉ〜、俺の可能性は無限だぜ!!」、みたいな気持ちの高ぶりが得られるんだと思う。
そーゆー“自己成長の高揚感中毒”になっている人達が結構増えていて、大きなマーケットになったよね、これ。
★★★
最後が<資格・検定系>ですね。
これはね〜、上記と違い「官」まで参入してるのがエグい。資格ビジネスというのは、儲かるのは3ソース。ひとつは「資格試験料」ですね。受験料とかいうもの。合格率3割なら7割の人は“リピート顧客”(来年も受けてくれる客)にできる可能性が非常に高い。
もうひとつは「維持料」です。宅地建物取引主任の資格とかいくつかの資格は、取得した後毎年「登録料」とか「会員費」を数千円から1万円くらい払う必要があります。コレも大きな収入です。毎年新たに合格した資格会員が増え、彼らが“死ぬまで”毎年数千円ずつ払ってくれるんだよ。どんだけでかいねん?って感じです。しかもたまーに会報みたいなのを送ってくるだけ。ぼろもうけです。
これは試験が難しければ難しいほど、(今の自分の仕事にはなんの関係もなくても)皆、資格の失効を怖れて払い続けてくれます。よくできてます。
3つめの収入源、これも大きいのだが「勉強本」、とか「勉強するためのコース」ですね。たぶんああいう資格の勉強本って、実際に資格試験を受ける人の10倍くらいの人が買ってる可能性あると思う。コースなんて通信教育とスクーリングで数十万みたいなのもあります。
検定も同じです。最近は官も続々参入。こちらも受験料、登録料、関連雑誌など多彩な収入が得られます。
資格や検定は「国家資格」にできると一気に「販売価格」が高くできるので、民間が仕掛ける場合は担当官僚を接待して国家資格の認定をしてもらいます。その際、毎年の登録料から公庫に「管理料」として上納金を納めることももちろん提示します。
官は最近「自分でやったらもっと儲かるかも?」とか思い始めたりしてもいます。ご当地検定とかがそうなのですが、あまりにも考えが甘い行政体が多く、儲けるはずが「赤字」になってる検定もあります。あほみたいです。
★★★
こういう「成長したい人向けビジネス」がここ数年日本で大流行になっているのには理由があります。
そもそもこういう「成長フリーク病」は30代に出現しやすい(はしかみたいな)流行病です。どの世代も30代あたりで皆ある程度はこれにかぶれます。ところが10年くらい前に、この今の30代の人がちょうど就職氷河期に社会にでることを余儀なくされたために、今の30代に関してはこの「はしか」が非常に強固なウイルスを形成しました。
その30代を「初めて成果主義の洗礼を受けることになった40代」と「人生において初めて経済不況期しか知らない20代」がサンドイッチすることで、「一大“自己成長フリーク層”」が日本に出現した!ってことなんだと思うのです。で、この「成長支援ビジネス」が異常な盛り上がりを見せている、というわけ。
この「成長フリーク層ビジネス」、“キャリアアップ教”“自己成長教”が広く普及しているアメリカではかなり巨大な市場。ってことは日本ではまだまだ成長の可能性があるビジネスなのかもしれません。
実際、「こんな収入では結婚できない」とか「こんな収入では将来が不安で不安で」という多くの人達が、こういった「成長系ビジネス」には多かれ少なかれナケナシの資金を投入してるんじゃないでしょうか。
まあ、人様が自分のお金をどう使おうとちきりんの知ったことではありませんが、でもまあもうちょっと冷静になってみるのもありかもね、とは思います。1600円の経営本を買うよりも、同じ値段でカルビ買って焼き肉でも食べた方が、高い効用が得られる場合もあるんじゃないの、とも思うので。
そんじゃーね。