格差問題@一票の価値

今回の参議院選では、121の議席が改選されました。73名が選挙区、48名が比例区です。参院選の選挙区は一票の格差が衆院選より更に大きく、今回も鳥取県民は神奈川県民の5倍の権利を与えられました。

実際に、神奈川県では70万票近くを獲得しながら落選した候補者がいる一方で、鳥取、徳島、高知県では16万票以下でも当選です。そこで今日は、「もしも選挙区割りがなく、得票数の多い順に当選していたらどうなっていたのか」をみてみましょう。


下記は、選挙区の候補者を獲得票順に並べたものです。全国の有権者の票が同じ重みであれば、この表の上から73名が当選するはずでした。

白の欄の人は順当に当選した人です。

青色の人は、「本来この得票数なら当選するはずなのに、一票の軽さのために落選した人」です。

皮肉なことに、このあからさまな格差選挙を有効であると強弁する最高裁のお仲間、現職法務大臣の千葉景子氏が「最も多くの票を獲得しながら落選した人」です。


また、表の下部にはピンクの欄の人がいますが、彼らは本来なら落選だったはずなのに、ひとりが何票も与えられている“権利富裕層エリア”で立候補したために当選できた人達です。この20名の政党名や都道府県名も、よーくご覧になってみてください。



一票の価値格差のために落選した20名の候補者(青色の人)が集めた票は、なんと計860万票です。今回落選した青色の人に投票した860万人は、有権者ヒエラルキーの最底辺に暮らす人達なのです。この数がどれほど大きいか、上記の一人当たり得票数と比べて頂ければわかるでしょう。

ワーキングプアならぬ“ボーティング・プア”(voting poor)として、有権者社会の底辺に暮らす860万人。彼らは法律にも行政にも顧みられることなく、もう何十年もずっと社会の底辺に放置されています。

一方で、ひとりで何票もの票を与えられた“権利富裕層”達は、これからも悠々と“所得保障”や“オラが村の郵便局への税金投入”など様々な権利を勝ち取っていくことでしょう。


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ところで、もしも票の多い順に当選していたら、各政党の獲得議席はどうなっていたでしょう?

下記の表、最初の行には各政党の今回の当選者数が、次の行には上記の表での当選者数、すなわち、もしもちゃんと獲得票数順に当選していたらこうなったはず、という当選者数が記載されています。最後の行はその差です。

一目瞭然ですよね。今回の選挙で自民党がなぜゾンビのように復活してきたのか。権利富裕層の多く住む地方の“一人区”(定員一名のみの選挙区)で、今回、自民党は29戦21勝と圧勝しました。“一人が何票も持っている田舎を根こそぎ抑えたこと”、これが自民党勝利の大きな、そして唯一の理由です。



(この表に比例区での当選者数、非改選議席を加えたものが各政党の議員数です)


民主党もみんなの党も、まず今、何をやるべきか、何をやらねばならぬのか、よーーーーーーーく考えてほしいものです。


そんじゃーね。


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追記) 関連エントリ「国民の代表の選び方」 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090809