全国の子供たちに告ぐ:お年玉はソッコーで使うべき!

あけましておめでとうございます。
今年もちきりんブログをよろしくお願いいたします!


お正月なのでお年玉の話。

子供にとってお年玉ってのは、もらってすぐに使えば毎月のお小遣いでは決して買えないモノが手に入る “使い甲斐の非常に大きな額” です。

ところが親の勧めに沿って “とりあえず貯金” してしまうと、大人になった後、「お年玉で何を買ったか」全く記憶に残りません。


この理由は、お金の価値の上昇スピードと、本人の稼ぐ能力の上昇スピードの違いにあります。

小学校の時に 5000円もらったとしましょう。

小学生にとって 5000円は、自力ではとても手に入れられない大きな額です。

欲しくて欲しくてたまらなかった(でも親には買ってもらえなかった)何かを買っておけば、「やったー!!! うれしい!!!」という強い記憶が残るでしょう。


ところが数年が過ぎて高校生になると、貯金していた 5000円は最早そこまで大きな額ではありません。

日曜日のバイト 1日で稼げる額になってしまうからです。

もしくは、自分の欲しいモノもそれなりの値段になっており、小学生の頃に使っていれば得られたほどの感激は、もう手に入りません。


同じことは、高校生がもらう 2万円のお年玉でも起こります。これは、もらってすぐに使えば、かなり使いでのある額です。

しかし “とりあえず貯金” して数年たち、就職すれば、新入社員でさえその 10倍もの額を(しかも正月だけでなく)毎月貰えるようになります。

高校生の時にもらったお年玉で憧れの大人向けレストランを予約し、ひとり1万円のディナーデートをしたら、一生忘れない思い出になりますよね。


30歳になったら、最低でも 5万円は払わないと得られないほどの新鮮な驚きや感激が、高校生の時には半額以下のお年玉で得られるのです。

そして人を育てるのは(=私たちの稼ぐ力の源となるのは)1万円の貯金ではなく、「こんな世界が世の中にあるんだー!!!」という、若い頃の未知なる世界との遭遇から得られる驚愕であり、衝撃なのです。


お年玉というのは、もらってすぐに使えばものすごく価値が高いにも関わらず、貯金して数年も置いておくと、“生活費の誤差”にさえ成り下がってしまう程度の額です。

このことを理解したうえで子供時代に戻れば、「もらったお年玉はソッコーで使うのが吉」だとわかるでしょう。


★★★


さらに言えば大人に関しても、「これから自分はいくらでも稼げる」と考えている人は、若いうちから貯金に励んだりしません。

稼げる額がどんどん増えると思える場合、今の給与から苦労して貯金しても、5年後にはそんなの “軽く稼げる額” にしかならないとわかっているからです。

だからそういう人は貯金ではなく、その時点で自分が一番価値があると思うものに、ドンとお金をつぎ込みます。


反対にせっせと貯金をする人は、「これからはもう、自分が稼ぐ額は増えない」と諦めているわけです。

確かにそういう人にとっては、今、稼いだお金を“とりあえず貯金”しておくことに意味もあるでしょう。

個人ベースでのデフレ対策みたいなもんです。


だからあなたが今、自分は完全に人生の終盤にいると思っているなら、もしくは、自分の給与はこれ以上もう全く上がらないと確信しているなら、貯金をしておけばよいでしょう。

でも、親が我が子に「お年玉はちゃんと貯金しておきなさい」などと言う必要は全くありません。だってそれって、

あなたは大人になっても、そんな額を簡単に稼げるようにはならないと思う。

ママは、あなたにはそんな能力はないと思うの。

だからそのお金は使わずに、大切にとっておきなさい。

って言ってるのと同じですよ。

そんなこと、ほんとに言うべき??


そうじゃなくて、

そんなお金、何年か経てばあなたは簡単に稼げるようになる。

だから、今とても欲しいものを手に入れるために使っておいたほうが(お金の価値が下がらなくて)いいわよ!

と教えてあげるべきでしょう。


そしてお年玉の使い道は、“賢い消費”やら“自己投資”などに限定する必要さえありません。

大人から見れば馬鹿げたお金の使い方であっても、子供の世界をドーンと大きく広げてくれる、貴重な経験や気づきの機会はいくらでもあるんです。

しかも子供だって一時の大金に舞い上がり、すぐに飽きてしまうようなおもちゃを買うのに大枚を払ってしまったら、きっと後悔し、翌年からは「これ、本当にそこまで欲しいモノかな? すぐに飽きたりしないかな?」と考えるようになります。

なんなら毎年、子供がお年玉で買ったものの写真をとって、保存しておけばよいでしょう。

その写真を毎年ためていけば、親も子供も、(お金や価値に関する)子供の考え方や判断力の変化を実感できるはず。


そもそもお年玉の使い方なんて、失敗してもなんの問題もありません。

だって失敗ほど、人を成長させるものはないのだから。

お年玉の使い方を間違えるなんて、たいした失敗ではありません。

なのに、ものすごく大きな学びがある。

その学びの機会を、親が奪ってしまっていいんでしょうか?


★★★


大人になってからも同じですよね。

マネー誌やらが熱心に説くように、20代や 30代から、欲しいものも我慢し、やりたいことも我慢し、安い月給のなかから、苦労して数万円を貯金に回すことに、ほんとに意味があるでしょうか?

20代の頃ならその数万円で、月に何回かは多く飲みに行くことができ、人生を左右する誰かと、もしくは、人生を左右する何らかの言葉や機会と、出会えるかもしれないのです。

そのお金を使って観に行ったイベントや、読んだ本や、出かけた旅先で、あなたを次のステージに導いてくれる“何か”に遭遇する可能性だってあります。


遊びや付き合いを制限し、若い間の貴重な時間を犠牲にして幾ばくかのお金を節約しても、40代になった時、あなたにとってその 数万円( +利子)は、大した額ではなくなっているかもしれません。

というか、あなたが順調に成長していれば、将来のそのお金の価値は、 20代の時に(あなたが貯金のために)諦めたモノの価値とは比べ物にならないほど小さくなってしまっています。

だから早めに使ってこそ、お金の価値が生きるのです。


貯金をすることが、
あなたの世界を広げてくれる消費より、
本当にいいお金の使い方だと思いますか? 


だとしたらあなたは、自分の将来の価値を、自分自身でさえ信じていないのでしょう。

自分でそう思っている人の将来に、他の誰が期待します?


20代やら 30代から、老後資金なんて貯め始める必要はありません。

必要なのは、稼ぐ力をつけることです。


そしてそのためには、
= もっともそのお金が貴重である時期に
= 若くてお金のない時期にこそ、
(そのお金を死蔵せずに)使っておくべきなのです。



そんじゃーね


追記1)



追記2)このエントリ、ずいぶん読まれましたね。ツイッターでの言及数が 2500以上、Facebook での共有数はなんと 16000個以上になってます・・


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/