前回のエントリ『 働き方改革における 3つの選択肢 』では、仕事を「労働時間」と「生産性」の高低により 4つに分解しました。
今日は別の軸を使い、仕事を「労働時間」と「リーダーシップを取る機会」の有無で 4つに分けてみます。
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リーダーシップを取る機会がある仕事と無い仕事の違いってわかります?
正確には「リーダーシップを取ることを期待されてる仕事」と「そんなこと期待されてない仕事」、つまり、
「自分で判断してやり方をどんどん変えていくことが求められる仕事」と
「自分で判断なんてせず、ましてや勝手にやり方を変えたりは決してせず、粛々と言われたとおり正確にこなすことが求められている仕事」の違いです。
ひとつずつ見ていきましょう。
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まずは、労働時間が長く、リーダーシップを取ることが期待されてない仕事。
決められた手順で延々と組み立てるとか、一晩中(明日コンビニで売られる)弁当ケースに卵焼きを詰め続けるといった仕事です。
次が、労働時間が長く、リーダーシップを取ることが期待されてる仕事。従来型の会社員(正社員)の多くがこれにあたります。やりがいのある仕事も多々あります。
3番目は「労働時間が短く、リーダーシップも期待されてない仕事」
ランチタイムだけ飲食店の洗いもの係として働いてるとか、週に 3日だけスーパーで働くなど。
家計補助のために働いてるパートの主婦や、定年後、毎日家にいると退屈すぎるので近所で働いてるオジサン、みたいなイメージです。
ここまでは比較的わかりやすい。
では、最後のひとつはどうですか? 「短時間労働で、かつ、リーダーシップを発揮することが求められる仕事」
みなさんの回りに、こういう求人ってあります?
実はこの「働く時間は短いけど、リーダーシップを期待される仕事」の求人はすごく少ない。
こういう働き方をしてるのは、フリーランス(自営業)か、もしくは、
もともとは「労働時間が長く、リーダーシップを発揮する仕事」に就いていた人が、個別に会社と交渉して、こういう働き方に移行したか、のいずれかであって、
最初から「短労働時間 + リーダーシップ必要です」というポジションの求人はほとんどありません。
でも、「リーダーシップを発揮してちゃんと成果を出し続けたい。けど働く時間は(通常の時短勤務より更に)短くしたい!」という人はたくさんいます。
たとえばワーキングママの中には、たとえ保育園が見つかっても、フルタイムで仕事と育児を両立するのは大変過ぎだと感じてる人が一定数いる。
会社が認めてくれる 1日数時間の時短くらいでは、日々の疲れがまったく取れない、ギリギリの綱渡りのような生活だ。
できることなら 1日の労働時間は 5時間未満にしたい、できれば週 3日だけ働きたい・・・
みたいな人、いるでしょ?
でもね。だからといって彼女らは「パートの主婦」になりたいわけじゃない。
ちゃんとキャリアが積みたいし、仕事でもリーダーシップを発揮して大きな価値を出し続けたい。
そうなると今の世の中では(ごく限定的な時短勤務は認められても)基本はフルタイムで働くしかない。
「あー、まーじで疲れる!!!」
けど、それしか選択肢がないから仕方ない
というのが本音だと思うのです。
働く女性の多くは(↓)右上みたいな選択肢があればそれを選びたいけど、それがないから、他のふたつのいずれかを選んでるわけ。
必死で、疲弊しながら、しゃかりきに、「長時間+リーダーシップを求められる仕事」を続けるか、「短時間+リーダーシップを求められない仕事」に甘んじるか。
そのふたつしか選択肢が無いから。
★★★
60才からの再雇用契約を経て 65才となり、いよいよホントの定年を迎えたオジサンも同じです。
彼らの中には、まだまだ元気な人も多いし、毎日家にいても超退屈で困ってるという人もたくさんいます。
なんらか社会と関わりをもっていたい。
できればボランティアとかじゃなくて、働き続けていたい。
けど・・・ 70才近くになって、さすがに毎日ラッシュアワーの電車に乗るのはつらい。
可能なら週に 3日くらい、1日 4時間くらい働ければありがたいのだが・・・
とはいえ、今まであれだけバリバリ働いてきたのに、いきなり「まったく上昇志向をもたなくていい短時間 & リーダーシップも一切不要な仕事」をやりたいとはさすがに思えない。
それはいくらなんでもアホらしすぎる。
こういう人にとっても、「労働時間は短いけれどリーダーシップは期待される仕事」があったら、すごく魅力的なはず。
でも今は(↓)右上の仕事の求人がないから、仕方なく右下を選んでる。ホントにもったいないことです。
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さらには、ワーママでも定年後でもない、ふつーの人でも同じだと思う。
いま、多くの人はものすごく多忙になってる。
子育てもあるし介護もある。
趣味もあるし、自分の時間も大切にしたい。
こんな長い時間、働きたくない。
でも「長い時間、働きたくない!」と言ったとたんに、なんのリーダーシップも発揮できない仕事しか与えられない。
なぜか、
「長時間働く」ことが、「リーダーシップをとってバリバリ仕事をする」ことに不可欠な前提だと思われているからです。
価値が「時間」に依存すると思われてるからであり、「時間」がコミットを生むと信じられてるからです。
でも、、、ホントにそう?
それって思考停止してない?
そんなに長く働かなくても、働いてる時間だけでもリーダーシップをとってもらったほうがいい仕事や、働いてる時間だけリーダーシップをとってもらったら、後の時間もより上手く回る仕事はたくさんあるのでは?
オレは(私は)仕事が嫌いなわけじゃない。
単に「週に 5日、1日 8時間 = 通勤時間を含めると毎日 10時間の拘束なんて、長過ぎだろ!」って思ってるだけなのに。
なぜか「長時間労働」と「リーダーシップポジション」は常に抱き合わせでしか売られてない・・・
これが今、「一億総活躍」を疎外してる、もっとも大きな問題なんじゃないかな。
高度成長期を支えてきたおじさん達は「女性は責任あるポジションに就きたがらない」とか「最近の若いもんはえらくなろうという意欲さえない」みたいに言うけど、
それって、「責任あるポジション」と「長い労働時間」がセット販売だからなんだよね。
もしそういうポジションが「短時間」パックとして売られていたら、頑張ってそれを手に入れたいと考える若者や女性はもっとたくさんいるはずなのに。
んが!
10年後には、そういう働き方もかなり拡がってるはず。
そのとき「あたしはそんなこと、10年前に書いてたもーん!」とドヤ顔でエバるために、今ここで高らかに予言しておきましょう。
これからは、研究、開発、企画、広報、人事、経理、法務、営業、秘書業務など、あらゆる分野の仕事で、しかも多くの会社が、
「短時間勤務 + リーダーシップを求められ、ちゃんとキャリアアップできる」ポジションで人を募集、採用し始めるはず。
だって、仕事なんて1日 4時間でよくない?
週に 3日も働けば十分でしょ?
いやもちろん、もっと長く働く時期があってもいいけど、人生 50年以上も働く時代に、50年ずっとそんな長い時間、働く必要はないでしょ。
この国は究極の人手不足に向かってるんだから、そういう人が増え、ちゃんと「そういう働き方がしたい!」と言えば、そういう求人も増えるんです。
てか、女性や高齢者含め、ほんとに一億総活躍的に働いてもらいたいのなら、必要なのは、この「 4つめの働き方」を提供することなんだよね。
働き方改革というとすぐに「1日 8時間以内。いっさい残業なし!」みたいな話になるけど、なんで 21世紀にもなってそんな画一的な話ばっかしてるのか、
アタマ固すぎですよ。
昨日のエントリもそう だけど、どうやったら、こういう 2 × 2 の図を上手く使えるようになるのかって?
図の作り方や、図を使った思考の進め方については下記の本にまとめています。興味のある方はぜひ勉強してみてください。
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併せて読みたい!
・「仕事と家庭の両立なんて目指すの止めたら?」