アルミ缶のプルトップを集め続ける哀しい国

1年くらいまえに録画してたテレビ番組を見ました。

所ジョージさんが司会の番組。テーマは飲料が入ったアルミ缶のプルトップ部分を集めるボランティアの話。

ざっくり言うと、こういう感じ。

1)昔のアルミ缶のプルトップは、開けると缶から離れてしまっていた。


2)このためプルトップ部分が道にポイ捨てされ、子供がケガをしたり、エサと間違って飲み込んだ動物が死ぬなど、問題が大きかった。


3)ポイ捨てを防ぐため、アルミ缶のプルトップを集めてリサイクルし、そのお金で車椅子を買って寄付しようという運動が始まった。


4)この活動は広く支持され、多くの学校や職場がプルトップを集めるボランティアを始めた。

  ↓

5)1990年代、開けても缶から離れない新型プルトップが開発され、ほぼすべての缶がこのタイプに変わった日本では、ポイ捨て問題自体がなくなった。


6)ところがプルトップを集めてリサイクルし、車椅子に変えようというボランティア活動はこれまで以上に盛んになりつつある。


7)缶から取れないよう設計された今のプルトップを無理矢理はずそうとし、手をケガする子供もいる。


8)しかもプルトップを分離してしまうと、アルミのリサイクル工場での作業が複雑になるため、プルトップだけではリサイクルを断られる場合さえある。引き受けてくれる工場も、プルトップだけだと採算が合わない。


9)リサイクルでボランティアしたいなら、プルトップを付けたままのアルミ缶全体を集めるべき。そうすればリサイクルも簡単、アルミの量も多く、寄付できる車椅子も大幅に増やせる。


10)なのに今でも学校や職場では(アルミ缶ではなく)プルトップを集めようと推進されている。


というのも、「プルトップはアルミ缶よる遙かに小さい。こういう小さいモノでも全員が長い時間をかけて集めることで、いつか車椅子になる、という体験に教育的な意味がある」と考える学校(先生)がいるから。


職場に関しても、「小さなことを全員でやりつづけて成果を出すと、一体感の醸成に役立つから」プルトップを集め続ける、とのこと。


この話、本当に根が深い。

まずなにより、「変化に対応できない日本」を象徴してる。

プルトップがポイ捨てされていた時代に価値のあった行動が、技術革新で無価値(てかネガティブ価値)になっても、止められない。

過去にやっていたことを(無思考に)延々とやり続ける。

こういう組織、会社、そして人が、日本中にたくさんいる。


もうひとつは、「短時間で簡単に大きな成果を出す方法を考えること」より、「長時間、非効率なやり方を続けて小さな成果を出すこと」に意味があると、未だに学校や先生が教えてること。

「高い生産性」より「無駄な作業を続けることで得られる自己満足的な陶酔感」が大事だと教える学校と教師・・・

こんな教育をやってる国で生産性が上がったり、IT や AI を駆使した画期的なサービスが生まれるはずがない。


学校からプルトップを集めるように言われたら、

「技術革新により時代のニーズが変わっています。より早く成果が出せる方法=プルトップだけでなくアルミ缶そのものを集める方法に変え、もっとたくさんの車椅子を困っている人に届けるべきでは?」

と提案できる、論理的で、リーダーシップに溢れ、生産性の概念を理解した生徒を育てたいのか、

それとも、

時代が変わったにも拘わらず、一昔前に良しとされていた非効率な作業を延々続ける無思考な子供を育てたいのか。

学校はしっかり考えるべき。


「今はもっといい方法があるんだから、そっちを提案してみるよ!」と言える子供と

背景も理由も考えず、ただただ「先生に言われたから」プルトップを集め続ける子供、

どっちの子供を育てたいのか。

家庭でもいちど振り返ってみればいい。


てかさ、
「十分な睡眠時間さえとれず、健康に害がでるレベルまで非効率な職場で頑張って働き続けることに価値がある、と勘違いしてしまう労働者」が生みだされるのは、

「手をケガするリスクがあっても、しかも、極めて非効率な方法であっても、とにかくプルトップを集め続けろ。無意味で非効率な活動を長期間つづけるからこそ達成感が得られるのだ!」などと、学校で刷り込んでいるからでは?


この国の未来を支える人材とは、いったいどういう人材なのか。

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そんじゃーね

※アルミ缶リサイクル協会では「プルトップ」ではなく「タブ」と呼称されています。


「お知り合いに「タブだけを集めている方」がおりましたら、アルミ缶はタブもいっしょにリサイクルするように勧めてください」とのことです。

注)これは日本の話です。今でも「分離型のプルトップ缶」が売られている国もあるよね。たぶんコストが安いのでしょう。