ちょっと前に下記のようなツイートをしていました。
そのうち「計画運休の改善方法」についてブログに書こうと思いますが、「ちきりんのブログを読むとすぐに納得してしまい、自分のアタマで考えられなくなるんだよな・・・」という人は、ぜひ(私に洗脳されるまえに)先に考えて自分のブログに書いてみてくださいな。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) September 9, 2019
みんなで考えよう!
計画運休とは、台風が地域を直撃すると予測されたとき、JRなど交通機関が「明日は全面運休」などと事前に決定してアナウンスすることです。
数年前から始まり、関西や首都圏、そして新幹線でも行われるようになっています。
基本的にはポジティブな反応が多い計画運休ですが、新たな混乱も生じています。
たとえば今回は、前日夜にJRが「首都圏の在来線すべてを午前 8時まで運休」と発表したため、「8時からは平常通り動く!」と考えた乗客が駅に殺到。
にも関わらず 10時頃まで動かない路線もあり、ターミナル駅は大混乱。入場制限で長蛇の列ができる駅も続出しました。
毎年のように大きな台風に襲われる日本。計画運休は今後も行われると思うので、今回の混乱から学べた「こうするべきでは?」案を書いておきたいと思います。
1.すべての交通機関が足並みを揃える
今回、JRは前日夜に「明日は朝 8時まで全面運休」と発表したのに、私鉄各社は当日の朝まではっきりした方針を示しませんでした。
東京では、各私鉄は新宿、渋谷、池袋といったJRのターミナル駅に乗客を運び込む形で走っています。
このため「私鉄だけ動いてJRがストップ」すると、ターミナル駅にどんどん人が蓄積され、大混乱に陥ります。
また、今回は成田空港の飛行機も止まらなかったため、「次々と到着する飛行機から降りた人が、成田空港から外に移動できず大パニック」になりました。
同様に、飛行機は動いているのに空港まで(JRが止まっているため)辿り着けない人も続出します。
これらの人は、飛行機も止まっていれば家から動かない人達です。
なのに「飛行機が動く」から、「JRが動かなくてもなんとかして空港に行かねば!」と考えさせてしまいました。
今回の大混乱からの学びのひとつ。それは、
「JRが計画運休を決めたら、私鉄も飛行機も新幹線もそれに応じた対応を取る」というルールを(各交通機関各社で話し合って)決めることです。
簡単にいえば、
山手線が動いてないのに、西武や京王や小田急や東急や京急を動かすなよ!
ってことであり、
成田エクスプレスが動いてないのに、飛行機を発着させるなよ!
ってことです。
小田急がとまってるのに京王が動く、みたいなこともやめましょう。ひとつでも動かすと、いつもは他線に乗っている乗客が殺到してしまいます。
みんな一斉に止まって「今日はお休み」みたいにしたほうがいいのです。
2.運休見通しのほか、正常化見通しも併せて発表する
今回の大混乱のふたつめの要因は、「朝 8時まで全面運休」という発表を、「8時からは平常運転」と理解した人が多かったことです。
んが、
通常であれば、始発の朝 6時前から 8時までの 2時間超の間に乗っている乗客が「全員」、8時に駅にきたら、乗り切れるはずがありません。
今後は、「何時まで運休か」と、「運休中にたまった乗客をすべてさばけるのは何時頃になるか」というふたつの予想を発表すべきでしょう。
今回であれば、「朝8時までは運休」+「正常化は正午過ぎの見通し」と発表していれば、お昼まで自宅待機する人がたくさんいた(そう指示する会社もたくさんあった)んじゃないかと思います。
3.「何時まで運休」と「何時から運行」の時刻を分ける
今回、朝の 8時から動くはずだった山手線は、10時過ぎまで動きませんでした。
台風の進行が予想以上にゆっくりで、JRは朝ぎりぎりまで線路の状況が確認できなかったようです。
そして被害が確認できた時には(あまりに被害が大きく)、8時からの運行は不可能でした。
あたりまえですが、台風なんて自然災害なんだから、コースもスピードも予測どおりとはいきません。
なのでお勧めは、「何時までは動かさない」という発表と、「何時から動かすか」という発表を分けることです。
たとえば今回なら、
前日夜に「明日の朝 8時までは全面運休」+「何時から運行できるかは、明日の朝 8時の段階で発表する」とアナウンスしておけばよかったのです。
そうすれば、乗客はみんな「8時まで」は家で待機して、発表を待つはずです。
この方式なら今回のJRも朝 8時の段階で「被害が予想以上だと判明したので、山手線の運行開始は 10時半から。正常化は午後 3時から」と発表できたはず。
多くの会社だって、そう聞けば在宅勤務の指示が出せたんじゃないかと思います。
4.大規模商業施設も計画閉館する
関西では交通機関が計画運休を決めた時、デパートや大規模商業施設も前日に閉館を決めたことがありました。
東京もこれに倣うべきです。
条例でもつくって、一定面積以上の大規模商業施設は、「JRが計画運休を発表したら、営業を停止すること」と決めてしまえばいい。
東京では、デパートや商業施設内の飲食店や雑貨店、アパレル店などで働いている人もたくさんいます。
彼らの多くも今回は「私鉄が動いているなら出勤できる」と、大混雑の駅に突入していったはず。
でもね。
台風明けで大混乱の日に、デパートが通常どおり開ける必要なんてあります?
商業施設の中の洋服屋とか雑貨屋とか、開いてる必要ある???
こういった大規模施設が閉まるだけで、多数の従業員が無茶な出勤を免れられるんです。
商業施設に入っている飲食店は、商業施設がオープンしているのに、勝手に自分達だけ閉店することはできません。(=テナント契約に反してしまうはず)
だから、ビルそのものが「閉める」と決める必要があるんです。
条例を作れと上に書きましたが、三菱地所と三井物産と森ビル & 全国百貨店協会あたりが話合ってルールを決めたら、他の商業施設も右に倣えする可能性が高いんです。
「我が社こそ業界のリーダーだ!」
と思うなら、こういう大事なところでこそリーダーシップを発揮してほしいものです。
5.宅配便、ゴミの収集、郵便、新聞配達も止める
ヤマトや日通、郵便局は台風直撃日は配達しないという約款に変えるべきだし、新聞も配達員の命を守るため、配達を注視すべき。これらは JRがとまった時点で事前決定できるはず。
ゴミの収集も(ゴミを道路沿いに出しておくこと自体が危ないので)停止すべき。
ゴミが飛んで電線にひっかかって停電とか、余計なリスクを増やすべきではありません。
6.リクナビは罪滅ぼしに台風対応による企業検索を可能にする
「御社が内定を出した学生さん、今だにまだ他社のサイトを何度も見ていますよ!」と大企業に(有料で!)チクリ、大恥をかいたリクナビにとって、起死回生の名誉回復策があります。
それは、台風時の企業の対応をデータ化し、学生さんが下記のような検索をできるようにすることです。
<直近の台風によるJRの計画運休時の対応>
□ 前日から在宅勤務を指示
□ 当日朝になって在宅勤務を指示
□ 有給休暇を取れと指示
□ なんの指示もなし
こういう項目ができるだけで(超人手不足の)企業の多くが「計画運休時の通勤に関する全社方針」を整備するはず。
そしてリクナビも「企業に学生の情報を売り飛ばすひでえ会社」ではなく、学生のために存在している会社だと思ってもらえるかもしれません。
★★★
以上、「計画運休」にたいする私の提案は下記の5つです。
1.すべての交通機関が足並みを揃える
2.運休見通しのほか、正常化見通しも併せて発表する
3.「何時まで運休」と「何時から運行」の時刻を分ける
4.大規模商業施設も計画閉館する
5.宅配便、ゴミの収集、郵便、新聞配達も止める
6.リクナビは罪滅ぼしに、台風対応による企業検索を可能にする
日本の公共交通機関の「社会のインフラとして、何があってもできる限り止めずに運行する」という意識や根性はほんとにすばらしいです。
でもね。
その意識のために大混乱が起こると、犠牲になるのは弱者です。
足の悪い高齢者や、妊娠しているワーキングマザー通勤客が大混雑の駅に突入するのは危険すぎるし、
なにより交通機関が混乱すると、「本当に必要な人」が動けなくなります。
台風直後は、電力やガス会社の人、医療機関や介護施設の人、台風対応に当たる役所の人、など、
すぐにでも動かなくてはならない人が、駅で何時間も待たされたり入場制限を受けることなく、スムーズに通勤できたり、優先的にタクシーを使えるよう、
それ以外の人は「すべてが正常化するまで、できるかぎり動かさない=自宅待機させる」べきでしょう。
各社が知恵を絞るべきは「そのために、自分の会社は何をすればいいだろう?」と考えることなのです。
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