ここのところ、大企業の中高年リストラが相次いでて、ネットでもリアルでも話題になってます。
朝日新聞も退職金 6000万円で 45才以上の大量リストラを発表してましたが、存在自体が危ぶまれてる新聞社はともかく、
朝日新聞、45歳以上の大量リストラを発表、退職金は上限6000万円https://t.co/Vk3t2Ickan https://t.co/Vk3t2Ickan
— Share News Japan (@sharenewsjapan1) December 4, 2019
最近あいついでリストラを発表しているのは、必ずしも業績が低迷している企業ではありません。日経の記事によると、
19年1~11月に希望や早期退職を実施し、募集や応募の人数を公開したのは、上場企業(子会社含む)36社で計1万1351人だった。(中略)
さらに20年以降も、味の素(100人程度)やファミリーマート(800人程度)など既に7社が計1500人の希望・早期退職を実施する方針だ。
そのうち多くの足元の業績は堅調で、好業績なうちに人員構成を適正化する動きが目立ちそうだ。
ということで、好業績の超一流企業までリストラを始めています。
理由はいろいろあって、
- 年功序列賃金のため、もっとも生産性と賃金の乖離が大きいのが 50代
- 今、バブル期に大量採用した世代が、その 50代に差し掛かってる
- 政府は定年を 70才まで引き上げようとしており、このままだとあと 20年も彼らを雇い続ける必要がある
- 60才で再雇用し、その後はガクッと給与を落とす雇用形式に、裁判所が NG判決を出し始めており、この手が使えなくなるかもしれない
- 若くて優秀な人は高い給与を払わないと採用できず、ぜんぶ外資やベンチャーにとられてしまう。年功序列給与だと彼らを雇えない
- 他の有名企業もリストラを始めたから、我が社もリストラするなら今でしょ!といった横並び主義、
などが考えられるのですが、
今回はもうひとつ、根本的な理由があることを見逃してはなりません。
というのも、
上記はどれも「日本独特な理由」に見えますが、実は昨今のリストラの背景には、世界共通かつもっと構造的な「仕事の変化」があるからです。
★★★
実際、ここんとこリストラを加速させてるのは日本企業だけでなく、海外の大手企業も同じ。
ただ、彼らは日本企業と違ってしょっちゅうリストラをやってるので「またか」って感じであまり目立たないだけ。
で、その「世界共通の構造的な仕事の変化」とはなにかというと・・・下図をご覧ください。
太古の昔からざっくり見ると、仕事ってのはこういうふうに変わってきたんです。
そして仕事の変化が起こるたび「世の中から求められる人の資質やスキル」も大きく変わってきました。
たとえば最初の変化である、「狩猟」から「農耕」への移行について考えてみましょう。
もともと人類は「身の回りにあるものを採取する」というのが、食べていくための仕事でした。
海や川のそばなら魚を捕り、森に住んでるなら果物や木の実を集める。動物がいる環境なら捕獲して食べてたわけです。
ある日、そんな時代に大きなイノベーションが起こります。
それが農耕。
「周りにあるものを採取して食べる」から「食べるために、時間をかけて植物(食物)を育てる」というのは、ものすごく大きな変化です。
そしてそれに伴い、「求められる人材像」も大きく変化しました。
狩猟に求められる能力とは、
・勇気があり、怖い物しらず
・俊敏で腕力も強い
とかです。
でも、農耕にはそんなもの不要。
代わりに「長時間の地道な作業に耐えられる」資質のほうが大事になる。あとは植物の様子をしっかり把握するための「細かい観察能力」とかね。
だから狩猟から農耕へと「働き方」が変わったときには、「怖い物知らずで俊敏で腕力自慢」な人が没落し、「長時間の力仕事に耐えられる」人が台頭したはず。
てか、もしその時代に会社組織が存在していれば、「腕力自慢」の人が大量解雇の憂き目に遭ってたはずなんです。
★★★
農耕の時代は長く続きましたが、あるとき産業革命が起こり、「工場で働く」ほうが、農業をやってるより遙かに稼げるようになりました。
それに伴い多くの人が農村から都市に移り住むという、職業人口の大移動が起こった。
この時にも「求められる資質やスキル」が大きく変わりました。
狩猟時代や農耕時代の仕事は「見よう見まねで覚えるもの」だったけど、工場では「指示書やマニュアルに沿って仕事をする」世界になるので、「字が読めること」が大事になります。
だから産業革命と共に、世界中の国が基礎教育に力をいれ始めた。
季候など自然条件に伴う食物の変化を「経験値」として理解していればよかった農耕時代と異なり、ノウハウを文字にして伝えられない人は、時代について行けなくなったわけです。
このときも「農業時代に最適化してた人」の多くが、稼げる仕事に就けず、社会の進化から振り落とされていきました。
★★★
そしてその後、ホワイトカラーと呼ばれる事務書類仕事のほうが、ブルーカラーと呼ばれた工場勤務より稼げるようになると、世界中がこぞってオフィス時代に移行します。
こうなるともはや識字率だけでなく、営業力(コミュ力)や分析力も大事になってくる。なので、教育もベーシックなものだけでなく、高校や大学など高等教育が必要とされ始めます。
そして、「高卒で工場で働く」より、「お金をかけ、しかも追加で 4年間の時間をかけてでも勉強を続けたほうが労働人材として価値が高くなる!」と気づいた人が時代の波に乗った。
なんだけど、
今やそのホワイトカラー業務自体をコンピューターが行えるようになってきました。
ITやAIの進化で、機械ができる範囲がものすごいスピードで拡張。
どんどんオフィス仕事を浸食してきて、既に「もはや銀行とか要らんよね?」みたいになってきてます。
なのに今でも「大学ぐらいいかないと就職できない」とか「とりあえず大学さえ卒業すれば」と、オフィス時代の常識を信じてる人がまだ数多い。
ひとつ前の時代の常識で生きるのがどれくらい危険かは、これまでの変化で何が起こったかを振り返ればよくわかるはずなのに。
しかもこの変化は日本だけで起こっているのではなく、世界で同時に起こってる。
ビールメーカーが「日本は人口が減って市場が縮小する。困った!」と思うなら、人口が増えてる海外市場を目指せばいい。
でもオフィスワークは違います。
日本だけでなく世界中で要らなくなりつつある。
だからどこの国でも、「ホワイトカラー時代に求められていた能力」が高い人が没落し始めてる。
それが、今リストラされ始めてる人だってことだし、
借金までして大学に行っても、ぜんぜん報われなくなってるのも、それが理由なんです。
★★★
日本はたまたま「年功序列」で「終身雇用」だから 45才以上がリストラ対象として選ばれてるけど、
企業の本音としては「たとえ給料が安くても、たとえ年齢が若くても、ホワイトカラー時代に求められるスキルしか持ってない人」を雇い続ける必要はない、と思ってんじゃないでしょうか。
つまり今、理解しておくべきは、相次ぐ一流企業でのリストラは決して「終身雇用の崩壊、年功序列賃金の終焉」といった日本固有の理由だけでなく、
「もはやオフィスワーカーとか要りません」という世界全体での働き方の変化がその背景にあるってことなんです。
そしてそれは狩猟時代から農耕時代への移行とか、
産業革命とか(=農耕時代から工場時代への移行)
ブルーカラーワークから、ホワイトカラーワークへの移行に匹敵するくらい大きな変化なんです。
そう考えると、日本企業のリストラなんてまだ本番にさえ入ってない(これからもっとエグイことになる)はずで、
それを理解せず、未だにひたすら「ホワイトカラー時代に求められる人」になるために大枚叩いて資格を取ろうとしたり、自分の子供を「お勉強のできる、いい学校に入れる子」に育てようと四苦八苦するのは、ほんとーに時代遅れ。
てかこんな時代に 35年ローンとかよく組むよね。
で、次の時代はどうなるのかということで、とりあえず私は「思考時代」と名付けてます。
会社や上司から「言われたこと=指示されたコトを(できるだけ正確に、かつ素早く)やる」時代から、
「なにをやるべきか」=「何をやれば価値があるのか?」「市場は何を求めているのか?」自体を自分で考える必要のある時代へ、という意味で。
思考時代に備えるためには、さらなる高等教育(博士号レベル)も必要なんだけど、
ご存じの通り、日本での「博士」は、ものすごく残念な職業になってしまっており、世界中で(先進国はもとより中国や韓国でさえ)博士号取得者が増えてるのに、日本ではどんどん減ってるという状態・・・
それと、博士(てか研究者)というのは「狭い分野をとことん深く掘る」職業なので、あたしみたいに飽きっぽく、「狭く深く」より「広く浅く」が向いてる人には選べない。
じゃ、そういう人はどうすればいいか?
この問いへの私の答えは、「まずはマーケット感覚を鍛えるべし」
なぜなら次の時代に生きていけるのは、
・研究レベルの探究心を注ぎ込める専門性(博士号が最低限)を持てる人か、
・時代の波を見極めて、新しい価値を人に先駆けて認知していける人
のどっちかだと思ってるから。
というわけで、狭い分野の深掘りが(自分には)向いてないと思う方は、ぜひ下記の本でも読んでみてください。
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大事なのは「いま起こりつつある変化」のマグニチュード(大きさ・規模)とそのインパクトを読み間違えないこと。
あと 10年もたてばはっきりしてくる(=誰にでもわかるようになってくる)と思うけど、いま起こりつつある変化は、多くの人が想像してるより遙かに大きな変化だと思います。